営業人のためのSFA活用術vol.2

顧客マスタについて考える その1

SFAを有効活用するにあたって、永遠の課題となるのがシステム上における顧客の基本情報を意味する顧客マスタの運用方法だと考えております。私自身、長年SFAの導入支援をしておりますが、どの会社にも当てはまる最適な顧客マスタの運用方法が未だに見つかっておりません。

それくらい顧客マスタの運用方法というのは、毎回新たな問題を生み出す厄介なテーマであると同時に、各社の営業管理に関する様々な示唆を与えてくれる興味深いテーマでもあります。既にSFAを利用されている方の中でそう感じられる方は多いのではないのでしょうか?そこで、今後数回に渡って顧客マスタの運用方法についてお伝えをしていきたいと思います。

今回のテーマは“顧客マスタの定義”について

今回のテーマは、どんな顧客情報を顧客マスタとして管理するか?という“顧客マスタの定義”についてです。そもそも、顧客マスタとして扱う情報は、組織によって異なります。よって、同じ会社内でも各部署、各担当者でその設定対象と範囲が異なることも多々あります。それにもかかわらずSFA導入のお打ち合わせの場では、その違いをしっかり意識せずに、なんとなく全員が同じ認識のもとに議論が進んでいきます。

しかしながら、いざ実データを使って試験運用を始めてみると、各々の認識の違いが顕在化し、導入スケジュールが遅れたり、または、当初の導入目的を果たすことを諦めてしまったりといったことがよく見受けられます。導入スケジュールが遅れてしまうのはまだ良いのですが、当初の導入目的を見失い、ただ情報を入力するためだけの箱を導入するだけで終わってしまうことは、非常に残念だと感じてしまいます。

顧客マスタについて深く検討することで、案件管理や商談報告書の管理の設計が非常に楽になる!

もしあなたがSFAの導入を検討している際、あなたの会社のSFA導入を担当するコンサルタントがどんな前提も無しに「一括取り込み機能があるので今お客様が使っている顧客マスタのexcelがありましたら簡単に顧客マスタを作ることができます」といったことをおっしゃる方でしたら、残念ながらそのコンサルタントの方の能力はあまり高いとは言えないでしょう。それはお客様のためにその情報をどう価値のあるものにして扱うか?ということを自身の経験を基に共に考えていくことがコンサルタントの役割であるにもかかわらず、SFAという箱を準備する事が自分の役割と思っている可能性が高いからです。
少なくとも私は、まずは、この“顧客マスタの定義”についてしっかり共通認識を持ってもらった上で後続の検討を進めています。それぐらい重要なものだと考えているからです。逆にいえば、SFA導入準備の初期段階でこの定義を共通化できていれば、案件管理や商談報告書の設計などその後の導入プロセスがより深く有意義なものになります。

顧客の定義が顧客マスタを定義する第一歩となる

“顧客マスタの定義”を考える上で最も重要なのは、そもそも自社にとっての顧客とは何か?という“顧客の定義”にほかなりません。顧客の定義を考える上では様々な観点があるのですが、今回はその一つの観点をご紹介したいと思います。それは「自社と顧客との関係性」です。
営業組織に属する方々は、下記の内容を全て網羅した上でただひとくくりに一言「顧客」もしくは「お客さん」と表現します。
 ・取引中の会社
 ・提案中の会社
 ・過去取引があった会社
 ・過去提案したことがある会社
 ・とりあえず、名刺交換したことがある会社
 ・未接触の会社
 ・販売ターゲット対象有無
ただ、これらは自社との関係性の深さが全く異なっています。

 もしかしたら人によっては販売ターゲット対象外の会社でも顧客を紹介してくれるかもしれないということで、顧客とみなすかもしれません。またカスタマーサービスなどを担当されている方は、取引中の会社のみを顧客として扱いますし、R&Dを担当されている方は、まだ見ぬ集合体を顧客として扱うことがあります。上述のように個人ごとに顧客と捉える範囲が異なります。

SFA導入はスモールスタートが鉄則。だから、顧客マスタで管理する対象も絞ってスタートすることがお勧め

顧客と定める対象範囲が絞りこめていなければ、いくら苦労してSFAを導入し、たくさんの顧客データを集めた所でデータのゴミと化すのが必然となります。そのためにもSFA導入の際には、前述した「自社と顧客の関係性」においてどの状態に該当する会社をSFA上の顧客マスタで扱うのか?という点を明示することをお勧めします。

SFA運用が定着化し、全てのデータをSFA上で扱うようになると、結果的に前述した会社全てが顧客マスタ上の管理対象となり、それをプルダウン項目等で分類して管理することになることが多いです。だからといって、最初から全ての顧客を管理対象にするのはお勧めできません。なぜならば、SFAはスモールスタートで始める事が成功への唯一の方法であると言われており、導入検討時にSFAで実現したいことと、実際にシステム上で実行することとを整理しなければならず、私もそう信じております。
例えば、初期段階においては取引中の顧客=既存顧客との取引のみを管理すると決定した場合には、既存顧客のリストを用意する必要があると判断出来ます。方針さえ決まれば方法論はすぐに決められます。取引中の顧客情報であれば販売管理システムから基本情報を一括導入するなど、方法論は誰にでも簡単に考えることができます。先程例に挙げた「一括取り込み機能があるので顧客マスタはすぐに作ることができます」といった機能面については、全ての方針が決まった上で考えれば良いことであり、最も大切なことはSFA導入を通じて、どのような営業管理を実現したいのかを明確にすることです。その中で顧客を定義し、その定義に基づいた顧客マスタを定義することが非常に重要かつ難しい課題となります。

この顧客との関係性を定義しただけでは、まだ顧客マスタを完全に定義したわけではないのですが、まず初めに考える事として重要なことだと思います。SFAを検討している方はもちろん、SFAを現在ご利用されている方も改めて、自社の顧客マスタについて再考されてはいかがでしょうか?


伊東 大輔 プロフィール

TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント

大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。

その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。

トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。


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