営業人のためのSFA活用術vol.3

顧客マスタについて考える その2

SFAを有効活用するにあたって、永遠の課題となるのがシステム上における顧客の基本情報を意味する顧客マスタの運用方法だと考えております。私自身、長年SFAの導入支援をしておりますが、どの会社にも当てはまる最適な顧客マスタの運用方法が未だに見つかっておりません。それくらい顧客マスタの運用方法というのは、毎回新たな問題を生み出す厄介なテーマであると同時に、各社の営業管理に関する様々な示唆を与えてくれる興味深いテーマでもあります。既にSFAを利用されている方の中でそう感じられる方は多いのではないのでしょうか?
前回は顧客マスタについて考える際の、自社と顧客との関係性の定義についてお伝えしましたが、今回は営業活動の進展を左右するもうひとつの重要なテーマについて解説いたします。

今回のテーマは“顧客の粒度”の定義

今回のテーマは「管理する顧客の“粒度”」についてです。顧客の粒度の定義とは、一顧客を会社単位とするのか?事業所単位とするのか?部門単位とするのかを決めることを指します。
この定義は、自社の営業組織が販売している商材の利用範囲や、提案対象(部門、役職など)に関して問いを立て、それに答えていくことで導き出すことができます。例えば、マナー研修や新人研修などの商材でしたら提案対象はほぼ間違いなく顧客の人事部という回答になると思います。そして人事部は基本的に各社に1つとなるため、研修を商材としている会社の顧客粒度は会社単位となります。同じように空調やネットワーク保守に関しては、顧客の各事業所で決裁されることが多いので顧客粒度は事業所単位となります。また、計測器のような商材の場合は顧客の研究開発部、学校の研究室といった単位で購買活動がされるため、粒度は部門単位になります。

筆者が「SFAを導入される際には顧客の粒度を定義しましょう」とお伝えしても簡単にイメージできないと思われますので、実際、前述したように説明することで多くの方に顧客の粒度を定義することの必要性をご理解いただいております。

顧客の粒度を定義すると決裁者が見えてくる!

顧客の粒度を定義することの効用は、SFA上でデータを取り扱いやすくなること以外にもあります。それは、営業組織内で各営業担当者が顧客側のキーマンや決裁者をこれまで以上に意識するようになることです。
営業組織の現場で頻発する問題として次のようなことが挙げられます。

営業担当者からの商談報告の情報を客観的に見ると、あくまで営業担当者と顧客側の担当者同士で盛り上がっているだけの内容にも関わらず、営業担当者が「お客さんが〇〇を必須要件と言っているので次回の面談までにその要件を満たすデモ(サンプル)を提出したい」と一方的なお客様至上主義を盾に技術者を無理やり説得してデモ(サンプル)準備を要請。技術者が工数をかけてデモ(サンプル)を作成して、商談でプレゼンしたものの、顧客側のキーマンや決裁者からは「この提案は良いと思うけど、マスト要件というよりはあったらいい程度だね」といったコメントしか返ってこず、結局は案件が進捗しないまま骨折り損のくたびれもうけになってしまった。

このような問題を今後起こさないようにするためにも、顧客の粒度を意識することは極めて肝要です。上記の件を例に取ると、もし営業担当者が、自社が扱う顧客の粒度を意識できていたとしたら、やり取りしている顧客側の担当者から聞いた要件が、その担当者(顧客の粒度=個人単位と定義)の要件なのか、意思決定に参画する部門の要件(顧客の粒度=部門と定義)なのか、会社の要件(顧客の粒度=会社単位と定義)なのかを掘り下げて考えられたはずです。また、仮に営業担当者が上記と同様の営業の進め方をしたとしても、上司や技術者が営業担当者から得られた情報に対して、どの粒度での要件かという質問をすることで、案件の進捗に必要な今後のアクションを検討するより深い議論が生まれるようになります。

一方で、例え顧客マスタにて管理する顧客の粒度を部門単位とすることが自社の顧客マスタの理想であったとしても、実際に日々の運用で部門単位を顧客マスタとしてデータ管理・維持することはほぼ不可能だと言えます。なぜなら、顧客の粒度を会社単位としたとしても顧客マスタを管理・維持することが難しい中で、非常に高い頻度で部門名や体制が変わる部門の情報を、外部の人間が適宜把握し、管理・維持することは事実上不可能だからです。
SFAはあくまでも小さく始めて少しずつ社員とともに成長させていくことが成功の秘訣なので、最初から不可能に近いことを現場の方々に要求してしまうと失敗の可能性を自ら高めてしまいます。
そのため、SFAを導入する際は、営業組織全体で顧客の定義を明確化し、共通認識を持った上で、顧客マスタにて管理する顧客の粒度を会社単位もしくは事業所単位とするのがよいでしょう。

 以上本コラムではこれまで2回にわたり定義に関するお話をさせていただきましたが、次回以降はより具体的な管理のテクニックに関してもどんどんご紹介させていたければと思います。


伊東 大輔 プロフィール

TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント

大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。

その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。

トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。


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