Vol.6 顧客マスタ(業種・業界・業態)について考える

今回は、多くの会社様にて管理されている、顧客マスタ内における業種・業界・業態データの管理方法についてお伝えします。
あなたは業種・業界・業態の定義を正確に言えますか?
おそらくこの問いに対して、多くの方がGoogleにて3つの言葉の定義を検索された思われます。この3つの言葉は、ビジネスの世界では多く使用する機会がありますが、実態は多くのビジネスパーソンが、それぞれを曖昧な定義のまま使用しています。特に、「業種」「業界」などは「業種・業界」で一つの言葉なのではないかと思うぐらい曖昧に使っている印象をうけます。
何度も記載いたしますが、SFAを運用する上では、「定義が曖昧⇒入力が適当になる⇒使えないゴミデータが生まれる」というSFA導入の失敗法則を意識しないと、必ず活用できません。このことから、自社の顧客マスタ内で業種・業界・業態の管理をすると決められたら、定義をした上で運用することが必要になります。
現実は定義を明確にしても?情報は正しくすることは不可能に近い
例えば、業種を管理する際に、多くの会社様がなるべく正しいデータで管理したいということで総務省が公表している日本標準産業分類などを利用します。具体的には下記となります。
(1)農業、林業
(2)漁業
(3)鉱業、採石業、砂利採取業
(4)建設業
(5)製造業
(6)電気・ガス・熱供給・水道業
(7)情報通信業
(8)運輸業、郵便業
(9)卸売業、小売業
(10)金融業、保険業
(11)不動産業、物品賃貸業
(12)学術研究、専門・技術サービス業
(13)宿泊業、飲食サービス業
(14)生活関連サービス業、娯楽業
(15)教育、学習支援業
(16)医療、福祉
(17)複合サービス事業
(18)サービス業(他に分類されないもの)
(19)公務(他に分類されるものを除く)
(20)分類不能の産業
こちらを利用することで定義自体は明確になりますが、実務においては、次に挙げるような問題が発生します。
- 複数の業種を持つ会社
それでは、無印商品で有名な株式会社良品計画はどの業種になるでしょうか?真っ先に思い当たるのが店舗ですので、対応する業種は“ (9)卸売業、小売業”となるでしょう。しかし、最近はレストランやホテルも経営しておりますので、“ (13)宿泊業、飲食サービス業”も該当します。さらに住宅事業もやっておりますので、“(4)建設業”でもあります。つまり、会社は必ずしも一つの業種(もちろん業界、業態も)の事業をしているわけではないのです。多くの会社様では、何に使うかはどうであれ「業種別売上・受注件数」を出すことを想定し、業界を単一選択肢に定義しますが、現実の世界では、複数の業種に所属する会社は多く存在します。当然システムには複数選択肢に変える事は現在では難しくないため、システム上は実態と合わせる事はできます。しかしながら上述の「業種別売上・受注件数」を集計したいのであれば、一般的なツールの集計機能使用した場合、同一レコード内に選択している全ての業種に計上されてしまうため、多重計算されてしまうことを鑑みて、業種を単一選択肢とするか複数選択肢とするかを判断する必要があります。
- 入力者によってばらつきが生じる
またさらに問題となるのが、残念ながら名刺などには、自社がどの業種であるかということを書いているわけではないので、仮に定義を明確にしても、入力者側の判断で、振り分けがかわってしまいます。株式会社良品計画の例であれば、“(9)卸売業、小売業”として設定するのと、“ (17)複合サービス事業”と設定するのでは、先ほどの「業種別売上・受注件数」の結果が変わってしまいます。入力者によってバラツキが生じる運用方法にしてしまったことで、営業管理者は、間違った情報を元に施策を検討してしまうかもしれません。
やはり、目的を明確にすることこそが成功の秘訣
筆者の経験上、営業活動における業種・業界・業態データの用途は、集計をすること自体は先述のようにあまり有効ではなく、優先的に提案する営業先リストを作ることに絞った方が良いと考えております。
具体的には、
- 自社の製品・サービスが最も売れている業種を知る
- 自社の顧客マスタ(見込み客)で上位の業種をリストアップしアポを取る
- 商談時には、○○業種の事例を持って提案に臨む
ことのみに使うことです。
つまり、上述のように明確にといっても、この3項目に限っては客観性・厳密性をあまり意識せず、上記①~③の活動で自社の製品が売れそうな見込み客をあぶりだすことを目的に、社内で納得感の行く定義をして検討頂ければと思います。また、今回の3項目は上述のように入力間違えや漏れが起こりやすい項目のためリストアップをするたびに毎回見込み客リストを見直すことをお勧めいたします。
伊東 大輔 プロフィール
TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント
大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。
その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。
トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。

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