Vol.9 SFA導入失敗あるある②-その2

今回はSFA導入失敗あるあるの中で、「作業効率化を目的にしてしまうパターン」の続きとなります。前回は、作業効率化の追求が、結果に繋がりやすい商材(営業スタイル)について記載させていただきました。今回は本題であります、SFA導入で作業効率化を目指しても効果が得られなかったパターンの原因を考察していきたいと思います。
まずは、単純な問いから
前提:あなたは工場向けに販売する1件あたり数百万円のセミオーダー型設備を販売している営業担当です。
問い1:見積に30分かかっていたのが5分になる事と、5回商談して受注していたのが4回で済むようになる事どちらが効率的になったと言えるでしょうか?
問い2:月に1度の経費精算が60分かかっていたのが5分になる事と、案件の受注確率が5件のうち1件だったのが、4件のうち1件に確率が高くなる事とどちらが効率的になったと言えるでしょうか?
そもそも効率化とは…
上記のように冷静に考えれば、2問とも前者と答える人はいない(少ない?)と思います。
しかし現実は、「効率化」と一言で片づけてしまうと、どうしても人間は、入力の簡略化、自動化などという”作業の手間を省く”という発想になってしまいがちになります。そして、前回記載した提案時の謳い文句である
SFAを導入すれば、より多くの営業活動に費やせます。
という言葉と相まって、作業の効率化⇒SFAの成功要因は「便利さ」という考えになってしまい、「便利さ」の追求のために時間と労力をかけてしまいます。
決してそれは間違いではないですし、便利に越したことはないです。しかし、SFAが便利になっただけでは、受注が増えるわけではありません。便利さは、あくまで受注増させるための一つの要素であり、「便利さの向上」が受注増に寄与する割合は、「売るものによって違う」と認識いただければと思います。
一段階抽象的に考えると受注増はただ単に「作業効率化」をすれば実現できるのではなく、
① 案件を増やす
② 案件の受注までの期間を圧縮する
③ 案件の受注確率を上げる
のいずれかを増やすことであり、この①~③その要素の一部として、「作業効率化」があると考えていただければと思います。そう考えると、前述のコモディティ商材を扱う営業には、
・受注までの期間が短い → ②をあまり考えなくていい
・受注要因もシンプル(価格と対応のスピード)
という特性があるため、
◇顧客接点を増やして「①案件を増やす」、
◇対応スピードを上げて「③案件の受注確率を上げる」
ことが重要になるため、
「受注増」≒「作業効率化」
という方程式が成立し、成功につながりやすいと考えられます。こういった営業組織がSFA導入で起こり得る失敗要因として、有名なソフトということだけで採用をすることが挙げられます。有名なソフトということで、自社の業務にフィットするかどうかを充分に検討しなかったために導入後も自社の業務とフィットせずに「作業効率化」を実現できず、SFA導入が失敗に終わる可能性があります。
ルートセールス型ではない営業とは?
オーダーメードないしはセミオーダーなど、商材自体が複雑で比較的単価の高い商材を扱っている営業がそれにあたります。このような商材は
・受注までの期間が長い
・受注要因が複雑
・購買プロセスが複雑(売り手×買い手、直接的×間接的に購買にかかわる人が多い)
特性があります。このような営業スタイルを、SFAの世界では”案件型営業”といいます。
この”案件型営業”の場合、作業を効率化しただけでは、営業が目指すべき「受注増」を実現できないため、導入をしても思った効果が得られなかったという事象が発生してしまいます。
まとめ
SFAの世界においては大きく、案件型とルートセールス型があり、ルートセールス型は作業効率化の実現が成功要因になるが、案件型は決してそうはなりません。そして、多くの案件型営業をやられている会社様が「作業効率化の実現」を目的としてSFA導入をしたがために期待した効果を得られてないことが頻発する原因を記載させていただきました。
今回のテーマは失敗あるあるなので、ここで終わらせていただき、
案件型営業の成功要因に関しては、別の機会で記載させていただければと思います。
伊東 大輔 プロフィール
TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント
大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。
その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。
トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。

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