Vol.6 【ブームから5年】台湾インフルエンサーマーケティングの今

こんにちは、applemint 代表の佐藤です。
台湾でデジタルマーケティングの会社の代表を務めています。
台湾ではインフルエンサーを使ったプロモーションが全盛期だったのが2016-2017年ぐらいで、それからすでに4-5年経ちました。今インフルエンサーマーケティングはどうなっているのでしょうか?
結論を先にお話すると、インフルエンサーの効果は日増しに悪くなっています。
しかし多くの企業は未だにインフルエンサーを起用してあの手この手で売上を上げようとしています。
中には売り上げの大半をインフルエンサーのプロモーションに依存してしまっている広告主もいます。
このブログでは2021年現在台湾におけるインフルエンサーマーケティングについて色々お話をし、台湾のインフルエンサーマーケティングの未来や今後の対策についてお話をしたいと思います。
2021年台湾インフルエンサーの価格
まずは台湾のインフルエンサーの価格についてお話をします。2〜3年前の話になりますが、以前自社のブログで台湾のインフルエンサーの費用が大変高騰しています!という記事をアップしました。2021年はどうなったのでしょうか?
結論を言うと現在のインフルエンサーの費用は2年前とあまり変わっていません。以下、最近筆者がコンタクトを取ったフォロワー50万人以上のインフルエンサーの価格を特別にお見せします!(NTD:台湾ドル)
【インフルエンサーA氏:フォロワー55万人】
投稿1回:10万NTD(≒40万円)
ライブ配信:15万NTD(≒60万円)
素材2次利用:1ヶ月10NTD(≒40万円)
【インフルエンサーB氏:フォロワー62万人】
60秒動画投稿1回:15万NTD(≒60万円)
【インフルエンサーC氏:60万人】
動画投稿1回:12万NTD(≒48万円)
素材2次利用 (LPなど):5万NTD(≒20万円)
ご覧のように、台湾ではフォロワーが50万人以上いるようなインフルエンサーは1回投稿するのに最低でも10万NTD(≒40万円)はします 。
この費用に更に広告代理店の手数料が追加されます。また、インフルエンサーは通常毎日 SNS に何かしらの投稿をするので、投稿した文や素材を2次利用しないと投稿文がすぐに他の投稿で埋もれます。
そのため2次利用のオプションをつける広告主が多く、2次利用や手数料も入れるとフォロワーが50万人以上のインフルエンサーにプロモーションをお願いすると、15-20万NTD (60万-80万円) が必要という事です。
もちろん、1-2万NTD(4-8万円)のマイクロインフルエンサーにお願いするという手もあるでしょう。しかし筆者が知る限りフォロワー数が数千人や数万人程度のマイクロインフルエンサーのプロモーションは、最近の台湾ではほとんどうまくいっていません。
ちなみに上記インフルエンサーは弊社が実際に試してみて比較的に宣伝効果があったインフルエンサーです。偶然かはわかりませんが、全員フォロワーが50万人を超えていました。
最近注目されているインフルエンサー
台湾で宣伝効果があるインフルエンサーを挙げたら、なぜか全員共通してフォロワーが50万人ぐらいいて、費用は全部込みで15-20万NTDぐらいするというお話をしました。そんな中、フォロワー数50万人以下で尚且つ費用が10万元以下で効果がある人が出てきました。
誰だかわかりますか?
弁護士や医師です。有名な弁護士や医師でフォロワーは10-20万人ほどで、費用は8-10万NTDほどのケースが多いです。そもそも弁護士や医師は本業で安定した収入があるので、宣伝費を高くする必要はありません。
確かに弁護士や医師がおすすめすると信頼が出来ますよね。
ただしそのうち弁護士や医師が宣伝をすることが常態化し、台湾の消費者がその宣伝に慣れてしまい、いずれ効果を失うでしょう。
現に2021年8月現在、医師や弁護士、会計士、有名シェフによるイメージモデル化が既に大変多いです。
ちなみに2021年8月に超有名な美人医師インフルエンサー(厳密には博士課程を修了した女性)が、不倫か何かで話題になりました。不倫したかどうかはどうでもいいですが、弁護士や医師も有名になると大変ですね。 (この美人医師はFacebook のフォロワーが80万人いてびっくりしました!😮)
インフルエンサーPRは一番の遠回りでは?
最後に筆者の台湾におけるインフルエンサーマーケティングに対する意見をお話ししてこのブログを締めたいと思います。
台湾でインフルエンサーを起用して一気に認知度を上げるやり方は一見近道に見えますが、筆者は一番の遠回りだと考えています。なぜならインフルエンサーを通して得た認知度はすぐに消えるからです。
恐らくこちらの文章をご覧の方の多くは何かしらの SNSをしていると思いますが、昨日の友人のSNS投稿を思い出せる人はいますか?あまりいませんよね?
インフルエンサーの投稿は一瞬しか頭に残らないので、インフルエンサーのPR効果は一時的に表示された時に衝動買いしたくなる人に限定されます。これを避けるために多くの企業はインフルエンサーの投稿を2次利用して、何回も広告として露出させますが、結局衝動買いする人を増やすだけで、筆者はインフルエンサーの投稿がファン獲得に影響しているとはあまり思っていません。
また、インフルエンサーの投稿を続けると、インフルエンサーが投稿した瞬間は売れるかもしれませんが、投稿をしないと売上が下がり、結果的にインフルエンサーに依存します。
なのでインフルエンサーの投稿は本来ほどほどにするべきだと思っていて、継続的に何回もするべきではないというのが筆者の意見です。(筆者はインフルエンサーの起用に対して全否定しているのではなく、あくまで CV数をインフルエンサーに依存するような起用の仕方に否定的なだけです。)
では何をすればいいのでしょうか?筆者はコンテンツの制作がいいと思っています。ここでいうコンテンツとはブログコンテンツや、動画コンテンツや音声コンテンツです。
残念ながらコンテンツを制作してもコンバージョンへの直接的な影響を測りづらいため、ダイレクトなレスポンスを重視する通販会社やB to Cの会社はコンテンツ制作に消極的です。そのため筆者が知る限り台湾に進出してコンテンツ制作に力を入れている通販企業はほぼいません。
でも、改めて考えてみてください。例えば人々がアンドロイドの携帯よりiPhone を買う理由ってなんでしょうか?Apple のエコシステムが素晴らしいからでしょうか?それとも何となくかっこいいからでしょうか? 多くの人はなんとなく買っているのではないでしょうか?
機能が均一化する時代では、人々は機能より「イメージ」や「人」が理由で商品を買うケースが増えています。「イメージがかっこいいから買う」、「あそこの社長が好きだから買う」、「あのスタッフが好きだから買う」というケースです。機能は買う理由の一つにすぎません。実際、iPhone よりハイスペックで安い携帯は存在します。
コンテンツを制作する事で商品やサービスを売っている人の顔や考えが透明化し、それに共感する人がファンや顧客となります。
applemint は2017年から 4年間ずっと自分達の考えや有益なコンテンツをブログや動画で発信し続け、今では「佐藤さんの考えに共感してお問い合わせをしました。」「佐藤さんの挑戦に惹かれて応募しました」という声を頂くまでになりました。Youtube の登録者数も1年で気づいたら4600人になりました。また、毎週2000-3000字書いてきたブログ数は250を超えました。
2021年現在、コンテンツを持つ会社やクリエイターはどんどん存在感が増す一方で短期的な売上を優先しインフルエンサーの多用や広告費だけを使ってきた会社はジリ貧になっています。これから台湾に進出する予定の会社は本気でコンテンツの制作をお勧めします。コンテンツ制作は時間と労力がかかる割に即効性はなく、皆すぐに諦めます。しかしこれは逆を返せば、大変なので皆やらないという事を指します。結果、コンテンツを作った会社はコンテンツがボディブローのように徐々に効いてきます。
以上台湾から台湾のインフルエンサーマーケティングについてでした。
佐藤峻 プロフィール
国際基督教大学教養学部教育学科卒。
國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。
新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)
その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。
外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。
手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。

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