Vol.13 案件種類の整備から始まる営業組織づくりその3

前回に引き続きSFA活動事例「案件種類の整備から始まる営業組織づくり」を記載させていただきます。前回は、新規案件開拓が最重要課題である一方、「そうは言ってもリソース的にこれ以上新規案件対応できない」という課題を先に解決することを優先させ内部プロセスの整備をすることで新規案件開拓に向けた土台作りについて記載させていただきました。
Contents
測定可能な目標がなければ、策が立てられない
ここで一般的な話になりますが目標というのは、目標の定義の明確化と、その達成の定義が明確になって初めて具体的な策(戦術)を検討することができます。今回の事例であれば、「新規案件開拓」という目標に対し、案件種類を整備することで目標の定義は明確化しました。しかしながら、例えば、前年20%増の粗利○○万円、積み上げで月間生産量○○トンなど、どこまでいけば達成なのかが決められていませんでした。目標値が決まってはじめて、次の一手を打つことができるのです。
どの案件種類で新規を獲得するか?
本事例では具体的な目標値に関しては、伏せさせていただきますが、その目標値と時期(その時は既に会計年度の6か月が過ぎている)を意識しながら次に行ったのは、「どの案件種類を攻めることで目標を達成しやすいか?」という議論を続けました。
◆未取引顧客
接触すること、そして関係づくりをするという二つの壁を乗り越える必要があり、長期的な取り込みが必要である。
◆既存顧客-新製品
目標と照らし合わせて、取引量を平均10%増やせれば、目標を達成できそう。
◆既存顧客-増産、アップセル
顧客の製品がヒットする、販路拡大など自社でコントロールできる案件ではない
ということで、「既存顧客-新製品」を獲得することで達成を目指す意思決定をいたしました。補足として、未取引顧客に関しては長期的に必ず必要となってくるので、これはこれでWEBマーケティングに挑戦することになりましたが、本テーマはSFAですので割愛させていただきます。
どうやって、「既存顧客-新製品」案件を作るか?
この段階になってくると、どんどん具体的になってくるので営業メンバーの方も積極的に意見を出してくれるようになります。次に行ったのが現在動いている「既存顧客-新製品」は何をきっかけに発生したのか「案件きっかけ」を整理しました。そして明らかになったのは営業部長や、一部のベテラン営業パーソンを除くほとんど全て営業メンバーは、顧客からの依頼による案件でした。つまり営業部長は、経験を元に売れ筋や横展開できそうな製品を意識し、興味を持ってくれそうな顧客に定期的に紹介をするという活動をしていたのですが、他のメンバーはあくまでも顧客から「○○を作りたいのだけど・・・」という連絡を待っている受け身の活動のみをしていたのです。この事実が明確になったことで、組織的に、流行そうなの商品、実績のある製品をまずはリストアップし、紹介するための資料または試作品準備のためのフローを整備し、受身一辺倒から提案型の営業の第一歩を踏み出すことになりました。
しかし残念ながら、「SFAのおかげで新規案件開拓を見事にできる営業組織になりました」というハッピーエンドにはなりませんでした。というのは、前述のように既に半年過ぎている状況の中で、新たな体制づくりをしながら新規案件を獲得することは時間的に間に合わなかったからです。ただし、組織として次にやるべきことが明確になったことで、仕事に対する取り込み方がガラッと変わったとのことです。
まとめ
3回にわたり案件種類の整備から始まる営業組織づくりですが、いかがでしたしょうか?この事例のポイントは、過去の記事も含め一貫して記載させていただいているように、複数人で営業管理をするためには、「定義を明確化」「状況の見える化」が不可欠であり、それが出来て始めて関係者全員が「事実を元にした議論」ができるようになり、次々と課題解決(当然外すこともあります)に挑戦する風土が出来るのです。
そしてSFAは所詮「状況の見える化」をするための道具にすぎないということです。あくまでも、人や組織を中心に考えることが重要だと考えております。今後の記事では、この会社の最新状況や、別の事例も機会を見てご紹介させていただければと思います。
伊東 大輔 プロフィール
TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント
大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。
その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。
トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。

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