営業人.com代表の安藤雅旺が2021年12月7日に 逆境を乗り越えるシゴト哲学『論語営業のすすめ』 を生産性出版から上梓いたしました。

レビュー 窪田恭史氏 (ナカノ株式会社 副社長)

一気に読み終えた。『論語』や『孫子』などの古典を現代ビジネスの観点から解釈、解説した本は数多くあるが、ともすると断片的になりがちな印象を持っていた。しかし、本書は筆者の価値観と経験に基づき、営業に対する考え方から実践、そして同じ価値観を共有する他の経営者の事例へと、「論語営業」という一つの体系の中に、主として『論語』と『伝習録』からの言葉を織り込んでいる。それが、すらすらと読み通すことのできた要因かもしれない。『伝習録』は、「知行合一」、「事上磨錬」など、孔孟をはじめとする「聖人」の教えを自分で咀嚼し、実践することを説いた書であるから、『論語』を実践的に解釈する上で必然的に伴うものであったろう。

 論語営業の基本は「お役立ち」であると言い、他者との相互作用を通じて、学び内省することで自分を成長させ、自他の幸福に貢献する。これは非常に共感できる部分であった。このスパイラルによって、自分の世界までもが広がっていく。「列伝」として設けられた他の経営者の事例集は、まさに著者が「論語営業」を実践し続けてきた精華なのだろうと思う。また、欄外にイラストで登場するネコや達磨が、様々な役立つツールや推薦図書などを紹介しており、本書自体が「お役立ち」の書として構成されているのも興味深い。

 営業とは人間の相互作用そのものであるから、古典が読み手によってさまざまな解釈を許容するように、本書は営業職に携わっていない人にも役立つはずである。その意味では、本書は営業という仕事を通じた筆者による『論語』と言えるかもしれない。

 私の部屋は本だらけで足の踏み場もないほどだが、その中でも繰り返し読む本はそう多くない。しかし、本書は何度も、実践し戻ってきたい思いに駆られる。それは本書を読んで得心するところが多かったばかりでなく、励まされるような感覚を得られたからである。内省するに、励まされた箇所が今の自分の弱い部分なのであろう。