Vol.14 信頼できる情報の3要素

前回までは3回にわたって、事例紹介をしました。今回は、少し大きな枠組みで“信頼できる情報の3要素”をテーマに解説します。
SFAの役割
私は、SFAとは営業活動またはマーケティング活動における次の一手を考えるための羅針盤だと考えています。ただ、羅針盤自体は現代では使われておらず、なかなかイメージ出来ない可能性がありますので、自動車に搭載されているダッシュボードをイメージしていただけたらと思います。自動車のダッシュボードには、地図(カーナビ)、速度、ガソリン残量、室内温度、時計などが表示されており、運転手が目的地にたどり着くまでの必要な判断情報を提供してくれます。これと同様の考えでSFAは、営業の組織レベル、個人レベルで目標を達成するために必要な判断材料を提供することが役割であると考えております。
情報は人が収集しなければならない
ダッシュボードには、ダッシュボードを利用する人が目的を果たすための最低限必要な精度の情報を提供することが必要不可欠となります。自動車であれば、上述の速度情報や位置情報などはセンサーが自動で計測して情報を収集してくれます。そして情報の精度に関しても予めメーカーが目的を果たすために必要最低限の精度のセンサーを搭載してくれています。例えば、GPSには誤差数センチ単位から100メートル単位と様々な精度の物が存在しますが、通常運転に必要最低限の精度のGPSを搭載されています。
一方、SFAの場合、ダッシュボードとして役割を果たすためには、人が情報を収集し、記録しなければならないという問題があり、これがSFAの運用を難しくさせている最大の要因になります。
信頼できる情報の3要素
情報が信頼できなければ、情報を収集したところで意味の無いものになってしまいます。意味が無いだけならまだしも、SFAは上述のように経営判断に使うことを目的としているため、信頼できない情報を元に意思決定をしてしまった場合に大きな問題を起こす可能性があります。
そこで今回は”信頼できる情報”の条件についてご紹介し、次回以降にそれらを担保するための運用ポイントを随時情報提供できればと思います。
鮮度
情報に鮮度という表現は耳なじみが無いかもしれませんが、一言で言えば、「ちゃんと更新されているか?」ということです、ある案件が既に失注になっているのに、SFA上は進捗が”見積提出”のままでは鮮度が保てているとは言えません。
精度
案件情報の正確性のことを指します。具体的には、受注確度などの定量化が極めて難しい情報や、顧客の予算や競合の状況など、顧客から直接聞けない、聞いても曖昧な可能性がある情報の扱い方が該当します。この要素は自動車の例でいうセンサーの精度とは実感、意味合いが異なることをご注意ください。
粒度
管理する対象の粗さです。情報定義と言ってもよいかもしれません。そもそも何をもって案件とするのか、選択項目における選択肢をどうするのかといったものです。
以上の3要素が一定以上、保障されてはじめて、経営判断につながります。実は、この要素において私など外部コンサルタントが直接的に貢献できるのは「粒度」を決める際のご支援ぐらいで、それ以外の「鮮度」「精度」に関しての担保は、実際の利用者がやらなければならないというのが現実となります。ただし、「鮮度」に関しては、それを担保するための事例などがありますので、次回以降にご紹介できればと思います。また「精度」に関しては、これは営業人の質の話になりますので、ぜひ、同サイトの「営業力強化につながるパーソナルスキル」などをご参考いただければと思います。
伊東 大輔 プロフィール
TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント
大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。
その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。
トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。

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