Vol.8 台湾でよく見る広告から見える大手企業の戦略

DX 営業人のためのデジタルマーケティング活用術Vol.8
Vol.8 台湾でよく見る広告から見える大手企業の戦略
こんにちは、applemint 代表の佐藤です。
台湾でデジタルマーケティングの会社の代表を務めています。
今回は最近 (2022年1月末現在) 台湾でよく見る広告についてご報告をしようと思います。台湾に限らず日本でも中国でも、多くの広告主は「コンバージョン」を重視します。
デジタル広告ではコンバージョンの定義は通常「ラストクリック」と言って、ユーザーが最後に訪れた媒体にコンバージョンがカウントされます。
バス広告を見たあるユーザーが、その後 Google で検索をして何かを購入したら、Google にコンバージョンがカウントされ、バス広告には何もカウントされません。この結果を見て、多くの広告主はGoogle 広告に予算を割く意思決定をすることになるわけですが、最近台湾で広告をしている大手企業は、そういった広告をしていません。彼らは効果測定がしにくいオフラインの広告にも多額の予算を費やしています。
今回は台湾で最近よく見る大手企業の会社の広告から彼らの広告戦略について話をしていきたいと思います。
Disney+ がついに台湾に上陸
Disney+ が2021年11月に台湾についにやってきました。アメリカや日本でのローンチから既に1-2年経過してからの台湾上陸です。私が Disney + の台湾上陸を知ったのは、Youtube広告です。最近台湾ではDisney+ の Youtube 広告が大変多く見られます。
恐らくローンチのタイミングで相当な広告費を使っていると想像できます。驚くのは、Disney+ がデジタル広告だけでなく、地下鉄や街頭の広告、トラックの広告までしていることです。

当然 Google 広告もしていて、「Disney+」と検索をすると彼らの広告が出ます。そうすると当たり前ですが、Google 広告の CV が一番多くカウントされ、コンバージョンを可視化できない路面広告や地下鉄広告は CV がカウントされないでしょう。
では、Disney+ は効果を測定できないオフラインの広告を止めるかと言えば、どうやらそうではなく、少なくとも11月のローンチから12月末ぐらいまで集中的にオフラインもオンラインも両方の広告をしていました。
Netflix の広告
最近は Netflix の広告も台湾でよく見られます。大変興味深いのは、Netflix の広告はデジタル広告も多いのですが、それ以上にタクシー広告や地下鉄広告、路面の広告が多いことです。以下は私が先日撮ったNetflix のタクシー広告です。

現在台湾で話題のスナックのママさんを題材にしたNetflixのドラマを宣伝するタクシー広告で、タクシーの車体の上の部分はそのドラマで登場するスナックの看板というこだわり具合です。
残念ながらこういった広告は QRコードでもない限り広告の効果測定はできません。
ではNetflix はどのように広告の効果を測っているのでしょうか。それは筆者にはわかりませんが、ただ一つ言えることは、Netflix も Disney+ も効果測定はできないけれども、デジタル以外の場所で広告を出して台湾の消費者と接触しているということです。
One Boy の広告
台湾では One Boy というアパレルブランドが今急速に勢いをつけています。防寒用のジャケットが売りのブランドで、バイクを乗る人をターゲットにしていると言われています(台北では冬にバイクに乗ると、湿度が高いため風が冷たく、気温よりも体感温度が低く感じられるため)。
このブランドは何がすごいかというと、超有名な芸能人を短期間で4-5人同時にイメージモデルとして起用して広告をしている点です。
以前違うブログで台湾のインフルエンサーは割高ということを話題にしましたが、One Boy はそんなことはお構いなしと言わんばかりに、一人当たり1ヶ月に100万円を超えるような芸能人のイメージモデルを同時に複数使っています。
オンラインの広告はもちろん、One Boy は地下鉄や路面にも広告を出しています。
コンバージョンはユーザーが最後に訪れた媒体でしかない
今回 Netflix や Disney+、One Boy といった広告主が広告の効果測定が難しい地下鉄やオフラインで積極的に広告をしているのを見て、改めて日系の会社は広告のやり方を再考する必要があると、筆者は考えています。
Netflix や Disney+ は世界でも一流の人材が集まる会社で、その会社の人たちがオフラインで広告をしているのだからきっと意味があると考えるのが正しいです。
コンバージョンとは通常使用者が何かゴールを達成する直前に訪れた媒体からしか記録されません。サッカーでいうと最後にゴールをした人です。サッカーではゴールをする人が FW に多いように、デジタル広告にもコンバージョンをしやすい媒体が存在します。だからと言って、そこにばかりお金をかけるのはサッカーでいうとFWにばかりお金をかけてDFにはお金をかけないようなものです。
面白いのは、サッカーの世界では得点が多いチームよりも失点が少ないチームの方が、成績が上位の場合が多いことです。
これを読んでいらっしゃるみなさんの会社にとっての DF の広告は何でしょうか?
広告の効果が測定できる今だからこそ、広告の効果が測定しにくい DF タイプの広告を考え直す必要があるのではないでしょうか?
佐藤峻 プロフィール
国際基督教大学教養学部教育学科卒。
國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。
新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)
その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。
外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。
手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。
