Vol.13 出荷後の返品や単価変更を販売管理システムにどのように反映するか。

このコラムでは、”DX 営業人のための販売管理システムとの付き合い方”と題して、どうすれば販売管理システムの導入・運用が上手くいくのか、或いは、どの様なときに失敗しやすいかについて、システム提供側である筆者の実体験も交えてお伝えしています。
第13回である今回は、出荷後の返品や単価変更等の例外的な業務に、販売管理システムでどのように対応するかについて、考えてみたいと思います。
はじめにご注意頂きたい点ですが、皆さんのお住まいの国や、所属する会社によって、売上計上基準や、返品に関わる制度も異なるかと思います。
以下の内容は主に筆者が在住している中国での例を念頭においておりますので、日本においてもこの対応が望ましいかは、ご自身でよくご確認をお願いいたします。
(特に今回は、返品や単価変更等、一つ間違えると不正につながりかねない内容ですので、注記させて頂きました)
さて、出荷後の返品、単価変更が発生した場合、販売管理システムにその取引を記録する際、大きく下記の二つの方法があると考えます。
一、赤伝票、黒伝票で処理をする。
二、特定条件下において、元伝票を直接修正する。
それぞれについて解説します。
一、赤伝票、黒伝票で処理をする。
基本的にはこちらが「正しい」方法です。こちらを基本と考えて頂き、その上で、業務効率との兼ね合いで、後述の「二、特定条件下において、元伝票を直接修正する。」で処理をご検討ください。
赤伝票というのはマイナスの伝票と捉えていただければ良いと思います。黒伝票は通常のプラスの伝票ですね。赤伝、黒伝とも呼ばれます。
例えば、100個の製品を出荷後、80個の返品が発生した場合、
黒伝票 100個 出荷
赤伝票 -80個 出荷
の様にマイナスの数字で伝票を作ります。
こうする事で、明確に返品が発生したことが分かりますし、在庫にも返品分が戻入されます。
出荷後の単価変更、例えば100円が80円に変更になった場合、
黒伝票 単価100元で出荷
赤伝票 単価100元で全数をマイナス出荷
黒伝票 単価80元で改めて出荷
この様な処理になります。こちらもわかりやすいですね。
二、特定条件下において、元伝票を直接修正する。
ここでいう特定条件下、というのは、例えば「売上集計が月末一括であり、社内規定において月中の伝票修正が許可されている」です。
販売管理システムの構成や財務ルール等、様々な兼ね合いがありますが、仮に月中の伝票修正が認められている場合、返品の場合は、元々の出荷伝票の出荷数量をゼロにすれば、在庫や受注残の、整合性が確保できますし、単価変更の場合は元々の出荷伝票の単価を変更するだけです。
こちらの方法の方が業務効率は高いですが、履歴の可視性は落ちますし、適切な権限者が処理をしているか、修正のログが残るか、等、留意する点も多くあります。
今回、大きく二つの方式をご紹介致しましたが、皆様の会社のルールに基づき、適切な処理をぜひご検討ください。
松村 稔 プロフィール
上海レンユアー総経理
2003年から上海で日系企業向けに業務システムの構築サービスを提供。 属人化を排除しつつ、お客様独自の強みを強化する業務システム構築を得意とする。 大規模な工場系基幹システムから、クラウドを活用した商社向けの販売管理システムまで、幅広い経験を活かして、多数の大手企業のシステム導入に参画。

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