Vol.16 マスタ品質維持は、マスタ管理責任者が必要不可欠

前回は、“信頼できる情報の3要素”というタイトルで、SFAを経営判断のためのダッシュボードとするめに必要な品質の構成要素を「鮮度」「精度」「粒度」に分解してそれぞれの概要をご紹介しました。今回はマスタデータに関する「精度」「鮮度」に関するテーマを記載させていただきます。

ダッシュボードとは、自動車などの「計器盤」を意味する英単語。ITの分野では、複数の情報源からデータを集め、概要をまとめて一覧表示する機能や画面、ソフトウェアなどを指すことが多い。

マスタデータにあってマスタデータにあらず

サブタイトルを見て「何のことだろう?」と思われるかもしれませんが、私がSFA運用支援をしている中で、ほとんどのお客様が「会社データはマスタ化されている」とおっしゃられるのですが、多くの場合、実際のデータを見せていただくと

  • 重複
  • 欠落(管理したい項目が未入力)
  • 間違い

が散見されます。そのため、そのデータを使って例えば地域を”神奈川”に絞った上位顧客20社を出した場合でも、東京の会社があったり、地域情報が未入力のため出てこない会社があったりします。本来SFAにおいてのマスタデータの最重要役割は、営業活動の次の一手を考える際の分析に使われるべきですが、大抵は、案件や商談報告を入力する際の社名入力簡素化のためだけに使われているのが現実です。簡素化だけに使うなら、最近では過去の案件から1,2文字入れて候補を出す(インクリメントサーチと言います)などが難しくなく実装できるので、それを使った方がよっぽど効率的になります。

第一歩はマスタ管理者をアサインすること

当然、マスタデータを100%精度も鮮度も保つことは出来ないのですが、上述のように営業活動のための次の一手を考えるためには、少しでもデータ信頼性を上げる努力をする必要があります。データ信頼性を上げることは短期的には無駄に思えますが、長期的には、他社への差別化につながります。特に製品・サービスで差別化が出来ないような場合は、なおさら重要になってくると考えられます。つまり営業の仕組みそのものが他社への差別化になるためです。

そのための第一歩は、とにかく細かいこと(HOW)は脇に置いて、マスタ管理者をアサインすることです。つまり、マスタデータ品質維持を一つの仕事として考えることです。
最近では、インサイドセールスという表現で、内勤営業組織を作る企業が増えてきておりますが、まさにその部隊などが適しているかもしれません。ただし、一点注意しなければならないのは、マスタ管理者を営業アシスタントにお願いすることはお勧めしません。

なぜならば、営業の全体像、方向性などを把握されてない方が管理者をやっても、マスタデータを営業戦略資産として育てることが出来ないためです。あくまでもマスタ管理者は営業ないしはマーケティング視点で考えられる方が責任者となり、実際の作業については、その責任者のアシスタントが行うという役割分担が望ましいです。

ではどのようにマスタを管理するのか?

前述では、方法は置いておいてまずはアサインするということを記載させていただきました。というのは、方法論に関しては、売っている製品・サービス、規模、リテラシー、既存システムなど組織の状況によってケースバイケースであることから、具体的な方法論をお伝えすることが難しいためです。この方法論に関しては、機会を見てご紹介できればと思います。

後は何よりも実データを使って、先ほどの地域別社名リストなど、いくつかそのデータを使った分析シミュレーションをやってみて、マスタデータの”ぐちゃぐちゃ度合い”を実感してみてください。結果をみれば必然的に現状を元に次に改善すべきことが見えてくると思います。そして、失敗を繰り返しながら改善することが最終的に一番の近道だと考えております。


伊東 大輔 プロフィール

TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント

大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。

その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。

トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。


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