DX 営業人のためのデジタルマーケティング活用術Vol.10

Vol.10 海外現地法人がローカライズを検討する前に必要なこと

こんにちは applemint 代表の佐藤です。
今回は、日系企業の海外進出先で成功するために必要な要素の1つとしてローカライズが挙げられるが、ローカライズの進め方を誤ると企業アイデンティティを失うリスクがあるというお話をしたいと思います。

先日某台湾進出日系企業の代表者(以下A氏)とお話しました。その会社では品質を大事にされていて、A氏は台湾でのマーケティングでは日本の高品質を訴求したいと主張する一方で、ローカルスタッフからは価格が高すぎて台湾人には売れないと反対されているそうです。

そこで、今回はローカライズに対する筆者の考えをお伝えします。

日本人不懂台灣人 (日本人は台湾人を理解しない)

筆者は2022年で台湾在住8年目を迎えました。中国語もできるので、台湾人とも中国語で意思疎通をとっています。筆者が最初に台湾に来たのは今から12年前の2010年で、その当時は中国語が全くできませんでした。筆者はワーキングホリデーで台湾の農場を転々とし、日本語や英語ができない人に囲まれ、必死で中国語を独学で勉強した結果、中国語ができるようになりました。(その当時の中国語の学習方法をYoutubeで公開したところ、2022年3月現在までにすでに15万回視聴されています。)その後、筆者は台湾の大学院を修了して一度日本へ戻りますが、再度台湾へ渡り、台湾の現地企業へ就職しました。他の日本人と違って中国語が出来た筆者はすぐに台湾人のグループに溶け込みました。

そこでよく聞いていたのは、「日本人不懂台灣人(日本人は台湾人を理解しない)」「日本人不了解台灣文化(日本人は台湾文化を理解しない)」といった言葉です。

その後筆者は、台湾で起業し台湾進出日系企業の代表者とよく会うようになり、今度は日本人から「台湾人はうちの会社を理解しない」という言葉を聞くようになりました。
お互い同じ不満を抱えている訳です。一体何をどうすればいいのでしょうか?

日系企業側の責任:コミュニケーション不足

「台湾人はうちの会社を理解しない」と嘆く日本人の代表者の多くは中国語を話せません。筆者は日系企業に勤める台湾人スタッフは会社を理解していないのではなく、会社を理解しようとしていないのではないかと思います。なぜなら日本人が台湾人に歩み寄ろうとしていないからです。

筆者の大学の先輩で ソニーをどん底からV字回復させた元 CEO の平井一夫氏は著書『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』では、平井氏どのように ソニー を回復させたかが書かれています。

みなさんは平井氏がどんなマジックを使ったかをご存知ですか?平井氏がやったことは簡単です。まず平井氏は会社の色んな人と1on1ミーティングをして、とにかく会社で働く人達の声を聞くことから始めました。
その後事業の方針を打ち出し、集中と選択を行い、辞めてもらう人や辞める事業を決めていきました。

この時、会社を辞めてもらう人には平井氏が自ら話しました。こういう時、多くの社長は嫌われたり不満を言われたりすることを恐れ、部門の責任者にリストラを告げるように指示しそうですが、平井氏は自ら話に行きました。平井氏曰く、みんながしたくない仕事をするのがリーダーだそうです。

では、日本から台湾に進出した日系企業の代表者はきちんと社員と面談をしたでのしょうか?筆者の推測ですが、ほとんどしていないと考えられます。筆者が台湾で見てきた日系企業の代表者の大半は、中国語はおろか英語すらろくに話せいない人が多く、言語が壁となり社員とのコミュニケーションに億劫になっている人がほとんどです。

これは改善の必要があるでしょう。

台湾の事を意外に理解していない台湾人

失礼を承知で話すと、台湾人は自分達の国の事を理解していないことがあります。筆者はマーケターという職業柄、台湾人を理解するために、台湾の様々なデータを調べます。
例えば台湾の肥満率及び糖尿病患者数の比率はとても高いのですが、それを理解している人は意外に多くいません。筆者は台湾政府の歳入及び歳出の内訳も理解していますし、政府の統計データから台湾人消費者の可処分所得の使い道もそれなりに理解しています。

こういった台湾人の数字から台湾人の消費パターンや心理が見えてきます。また、色んな業種の人と直接話すと更に台湾人を理解できます。

自分達が台湾人で、台湾に住んでいるからといって、台湾の事を一番理解しているかというとそういう訳ではありません。休日や仕事後に会う友達がいつも同じような人では、台湾を多面的に理解することは難しいでしょう。

でもこれはある意味仕方がないことです。自分の国のことや、良さ・悪さは外に出ないとわからないと言います。

サッカー元日本代表で、イタリアで活躍した中田英寿氏はヨーロッパ在住時に日本の良さに気づき、海外の友人に日本について聞かれる度に日本の事を全然理解していない自分に気づき、引退後は日本の伝統工芸や日本酒を世界に広める活動を行っています。

日本人の代表者が歩み寄っていないのは確かに問題ではあるものの、台湾人も自国の事をもっと理解する努力が必要だと思います。筆者は外国人の様々な日本に対する疑問に答えるため、日本人でありながら日本についてかなり勉強をしてきました。それは筆者が人生の半分以上を海外で過ごしているためです。

企業のアイデンティティを伝える社内ブランディングが重要

ここまで書けばもう大体答えが見えたのではないでしょうか。ローカライズを考える前に必要なこととして、日本人と台湾人の双方のコミュニケーションだと筆者は考えます。まずはコミュニケーションの溝を埋めてからローカライズを含めた戦略の話をするべきです。

次にローカライズについてですが、企業のアイデンティティを失うローカライズは不要と筆者は考えます。売上のためになんでもローカライズをしていたらその企業が台湾にいる意味はありません。

apple が台湾人の平均所得がアメリカ人より低いからといって、台湾人向けに廉価版を出すことはありません。なぜならそれは apple の企業のアイデンティティに反するためです。
逆に、どんな国に行ってもその国に合わせるようなアイデンティティをもつ企業は積極的に現地の価格や現地の人が求める品質に合わせて良いでしょう。

このように、ローカライズをはじめとした海外進出先における戦略などの話をする前に、まずは双方歩み寄る努力が必要です。


佐藤峻 プロフィール

国際基督教大学教養学部教育学科卒。

國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。


新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)

その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。

外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。

手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。


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