DX 営業人のためのSFA活用術vol.17

SFAと他システム連携の勘所

今回は、比較的規模の大きい組織でのSFA導入において話題になるシステム連携における勘所について解説します。SFAは、様々な社内システムや、クラウドサービスとの連携が想定されますが、今回は、最も実績が多い販売管理システムとの会社マスタデータ連携に絞ります。

管理目的が違うことによるデータ特性差異を明確にする

SFAと販売管理システムとのマスタデータの連携は、概ね会社データと製品データの二つに絞られます。ただし、それぞれのシステムの目的の違いから、「会社」や「製品」と言葉が一緒でも、データ特性には大きな違いがあります。多くの会社はシステム連携すれば、”SFAで会社や製品のデータを登録する必要がなくなるので、作業効率向上が実現できる”と考え、この特性を意識せずに実装をしますが、大抵が失敗に終わります。失敗とは、システム連携プログラムが”ゴミデータ製造機”になってしまうことを意味します。

販売管理システムの目的は、受発注・入出庫業務を管理することに対して、SFAの目的は戦略的な営業活動を支援することであり、2つのシステムの間の目的の違いから、会社データであれば、下記表のような特性の違いがあります。

これらの特性差異を意識した上で、連携仕様と運用ルールを設計していない会社があまりにも多いため、不要データ・重複データが販売管理システムからSFAへどんどん追加され、それらが放置されたままになり、ゴミデータが貯まるという結果になってしまうのです。

表:販売管理システムとSFAのデータ特性の違い

特性販売管理システムSFA
マスタの種類同一企業の情報も、取引の状況によって販売先・仕入先・納品先など別々の情報として管理されている場合が多い(販売先マスタ、仕入先マスタなど)。同一企業が、販売先でも仕入先でもある場合があるため、同じ会社マスタとして管理することが一般的である。
登録のタイミング取引が発生する時に初めてデータが登録される。取引有無に関わらず接触した時に登録される。
管理項目口座情報や送付先住所など、受発注に関わる各種業務に必要な項目のみが管理されている。柔軟に項目追加などができない場合が多い。地域や業界などの情報だけでなく、顧客の強みやグループ会社をまとめるタグ情報など、俯瞰して情報を見るために必要な項目が管理されている。状況に応じて柔軟に項目を追加・変更が可能であることが必要。
個人情報販売時連絡担当者という扱いで、あくまでも会社データの中の1項目として管理される。人脈情報という表現などで、会社データに紐づけて複数の人の情報を管理する。

勘所① 連携対象データ範囲を絞る

特性の違いを明確にした後、システム連携を実現するうえで検討が必要な勘所の一つ目は、連携対象データ範囲を絞ることです。具体的には

・販売先のみを対象とする

・初回移行時は直近○か月間取引した販売先のみとし、以降は差分更新とする

・予め重複データを削除または無効にしておく

・営業管理に使わない項目は連携しない

などです。ほとんどの場合、システム導入担当者は単純にデータを全部移行すれば良いと考えるため、先程挙げた勘所について話をすると、敬遠する人が非常に多いです。実際はそれほど時間がかからない作業であるにも関わらず、連携元システム内の既存データに対する調査や整備などの作業に対してモチベーションが上がらないというのがその理由だと想定されます。

著者が支援した某商社のSFA導入案件にて、販売管理システムから仕入先マスタデータを連携する際に、データ範囲の絞込みの必要性についてどうしても納得できないシステム導入担当者がいました。筆者が何度も説得を試みたのですが、考えを変えてもらえなかったため、手戻り覚悟で一度、仕入先マスタをSFAに連携しました。初回連携時は3,000レコードを移行しました。そしてSFA運用開始をするために、全営業パーソンに手持ち案件を全て登録してもらったのですが、仕入先を選ぶ際に、重複データが多く、どれを選んでいいかわからないというクレームが複数ありました。その時は、営業責任者の指示のもと、営業パーソンに我慢してもらい、なんとか全案件を登録してもらいました。しかし、営業責任者からは、新規案件が出る度にほとんどゴミデータである3000レコードの中から選ばないといけないという状況ではこのシステムは使えないと判断され、運用開始は延期となりました。ちなみに後日データを整備したら、実際に使用されている仕入先は50社にも満たなかったです。

本事例で学べることは、連携するデータ範囲について適切に検討をしないと、SFA運用に大きな影響を与えてしまうということです。実際使用する営業パーソンの立場を考えれば、システム連携検討時点でデータの絞込みをすることは必要不可欠な作業でした。しかし、システム導入担当者は、自分の作業負荷を理由に連携データ範囲を絞り込まないと意思決定したために、結果的には、連携プログラムの追加改修費と時間の損失を生んでしまいました。

勘所② 未取引から取引になる時の運用ルール作り

SFAで未取引として登録された会社データがずっと残ったまま、販売管理システムから同一会社のデータが新規登録として連携され、それが放置されて重複データだらけになってしまっているという現象があります。これはデータ連携開始時に、会社データが未取引から取引に状態が変わる際のSFA上の運用について工夫が必要です。例えば次のようなルールを決めることでデータの重複を防ぐことができます。

・会社マスタに販売管理システム上で一意となる会社コードが入力されていない会社の案件は進捗を受注にできない

・マスタデータ管理者が、販売管理システムから新規登録されたマスタデータを定期的に確認する(週単位でも新規の取引先登録は数件のはずです) 今回は、会社マスタを例に二つの勘所を解説しました。それぞれのシステムのデータ特性の違いを把握し、仕様と運用をしっかり決めることが出来れば、システム連携は、営業パーソンの作業効率向上の実現だけでなく、営業組織全体でデータを軸とした意識決定の実現にもつながるので、是非、本記事をご参考いただき、ご検討いただければと思います。


伊東 大輔 プロフィール

TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント

大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。

その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。

トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。


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