DX 営業人のためのデジタルマーケティング活用術Vol.11

Vol.11 海外に進出する企業は誰のどんな問題を解決しようとしているのか?

こんにちは、台湾でウェブマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤です。

今回は、日本市場に進出した台湾企業が、”誰”の”どんな”問題を解決したいかが明確ではないため、苦戦しているというお話をしたいと思います。

今後海外に進出する予定の日系企業や、現在海外で苦戦している日系企業の参考になるのではないかと思っています。

結論から言うと、定量的調査 (データを基にした調査) と定性的調査 (インタビューなどの調査) の2つを行うことをお勧めしたいということです。まずはこの記事を書くことになった背景から少しお話をします。

最近筆者の周りでは日本に進出したい、或いは進出したけどうまくいっていないという台湾企業の話をよく聞きます。彼らの話をよく聞くと、「日本人と日本市場は独特」、「日本市場は本当に難しい」、「日本でどうしたらいいかわからない」という声が聞かれます。

筆者は日本で起業したことがないため。彼らにアドバイスをしても少し納得感に欠けるかもしれません。しかし筆者には日本にオフィスを構える顧客が複数あり、もし今この瞬間に日本で起業をしても、すぐに売上が立ちます。そのため彼らよりは幾分日本進出がうまくいくと思います。

ただ、今回の記事で筆者がしたいのは自慢話ではなく、筆者がなぜ日本で売上が立つと考えたのかという理由の説明です。その理由は「具体的なターゲティング」と「対話」だと考えております。

そして先程例に挙げた台湾の企業は、具体的なターゲティングができていないが故に「対話」ができず、日本でうまくいってないと思います。これは台湾に進出してうまくいっていない日系企業にも同じことが言えると思っています。ではなぜ具体的なターゲティングができないのでしょうか。

その理由は冒頭でもお話ししたように定量的調査と定性的調査の2つが欠けているからだと考えております。どちらか一方だけではダメなのです。

あなたは海外のどんな問題を解決しようとしていますか?

例えば日本から台湾に進出して失敗している企業の多くは、「あなたは誰のどんな具体的な問題を解決しようとしていますか?」という質問に答えられません。B to Bの企業であれば、1社でも具体的な名前が出ればよく、B to C の企業であれば1人でも具体的な消費者の名前とその人がどんな人でどんな問題を抱えているかを描写できればいいと思っています。

例えば筆者なら上記の質問に対して、「弊社は台湾にある日系企業A社のデジタルマーケティングを支援しています。A社の総経理B氏の悩みは、当時台湾で信頼できる広告代理店がいないことでした。信頼できない理由は、台湾にある日系広告代理店が透明性や品質を欠いていたからです。そこで弊社は透明性と日本レベルの品質を持って顧客にアプローチし、顧客獲得に成功しました」といったように、具体的にどんな顧客がどんな問題を抱えていて、それに対して弊社が何をしたのかを言えます。

「1社だけ具体的に言えても大した売上にはならない」と思うかもしれませんが、千里の道も一歩からです。逆に言えば 1社或いは1人も具体的にターゲットを描写できない企業が、10社あるいは10人といった複数のターゲットの問題を解決することは難しいと筆者は考えています。

実際、以前弊社が日本進出のお手伝いをした台湾の企業は、具体的に日本のどの企業のどんな問題点を解決したいかが明確ではありませんでした。弊社が彼らにターゲットを聞いても、返ってきた答えは「教育関係者」、「B to B」、といったとても曖昧な回答でした。

「教育関係者」と言っても学校の先生なのか、ベネッセのような出版社なのか、学習塾なのか分からなければ訴求が曖昧になります。弊社は教育関係者に接触して市場開拓の糸口をつかむ努力をしましたが、結果的にあまり効果はありませんでした。

ちなみにターゲティングする際のコツは、自分に対して“問題を抱えている顧客に対して自分達が手伝う必要性及び強みが活かせるか”という問いを立てることです。例えば弊社は台湾にいる日系企業や、台湾にいて日本に進出したいと考えている台湾企業をターゲティングしています。

その理由は彼らの悩みに対して弊社の”日本人/日系企業”としての強みが活かせるからです。結果的に、弊社はこのターゲティングを適切にしたため、今も生き残っていると思います。

では弊社はどのようにターゲットを決めたか?弊社は「対話」を通じてターゲット像を明確にし、解決策を創出しました。デジタル広告やデータといった定量的調査だけでターゲットを明確にするのは不十分だと筆者は考えます。

現場に答えはある

「対話」とは要するに、自分がターゲットと思う人と直接お話をするという事です。この対話を無視して、勝手に存在しないターゲットの悩みを想像する台湾企業や日系企業が後を絶ちません。

ここで対話の重要性について筆者の母が住む岩手県盛岡市を例に少しお話をさせてください。筆者の母が住む岩手県盛岡市は現在人口がどんどん減っていて、高齢化が進んでいます。高齢者の方はデジタルに関することは全くと言っていいほどできません。

ある時筆者は母から、母の友人の眼科医の方が出席する会議のポスターのデザインを手伝って欲しいと言われました。参考までに前年のデザインを見ると、それはひどいものでした。

不安になった筆者は次にその母の友人の眼科のウェブサイトを見ました。そのウェブサイトは10年程更新されていないようでした。

では、ここで皆さんに質問です。弊社ではウェブサイト制作をすることが可能ですが、筆者はこの時母の友人にウェブサイトのリプレイスをお勧めするべきでしょうか?多くの方は「Yes」と答えるでしょう。

しかし筆者の答えは「状況次第」です。なぜなら筆者は母の友人がきれいなウェブサイトを必要としていないことを知っているからです。また、 Google my business も必要ありません。盛岡市のような高齢化が進んだ都市では、そもそも高齢者の方は綺麗なウェブサイトや Google のレビューを基に眼科を選びません。

また、この眼科はご近所の既存顧客だけで十分商売が成り立ちますし、母の友人はそもそもこれ以上お客さんを増やしたくないとさえ思っています。筆者がこのことを理解しているのは、筆者がコロナ前に何度も盛岡に足を運んでいて高齢化する盛岡市の実態を知っていることと、この眼科のお医者さんと実際にお話をしたことがあるからです。

日本では東京や都会に住む人が過疎化する地方の問題を表面的に捉え、地方の古臭いウェブサイトを見れば綺麗なウェブサイトを提案し、デジタルが進んでいなければ DX を提案する事態が起きています。しかし地方の現場に行くと、そもそもデジタルを必要と思っていない人が実に多いことに気づきます。

台湾から日本に進出する企業、そして日本から台湾に進出する企業も同じようなことをしていると筆者は考えていて、要するに自分達の思い込みで、相手は〇〇が必要と決めつけ、宣伝活動をしているということです。筆者はこれが起きる理由は対話不足からだと考えております。

データでは見えない企業や人の悩み、目的の明確化

日本の田舎ではデジタル化が進んでいないことは事実です。東京でも多くの日系企業の間でデジタル化が進んでいないことも事実です。しかしこれらの事実を表面的に捉え、「デジタルが必要」と捉えるのは少し浅いと思っています。

盛岡市の眼科の事例だと、多くの人は古臭いウェブサイトを見て、それが悪いと決めつけウェブサイトのリプレイスを提案しようとします。ではその目的は何か?恐らく「集客」です。しかしこの眼科では集客は必要ありません。

筆者が母の友人の眼科の方と話をした結果、必要なのは人手だとわかりました。母の友人は人材不足と後継者問題を抱えています。従って筆者がもしウェブサイトの提案をするのであれば、人手不足解消につながるウェブサイトを提案します。

同じウェブサイトの提案なのに、コミュニケーションを「集客」から「人手解消」と変えるだけで効果が全然違います。筆者がこの提案に行き着いたのはデータでは見えない、対話という定性的な調査からです。

もしもこれをご覧の方でどこかの国に進出したものの苦戦をしている、或いは今後台湾や他の国に進出しようと考えている方は、まずはターゲットと決めた人と対話をしてみてはいかがでしょうか?多分答えが見えてきます。対話した結果、「ちょっと違う」と思えば、ターゲットを変えればいいと思います。

以前筆者が主催した規格外の野菜販売のビジネスも、当初はレストランをターゲットにしようと考えていましたが、レストランのオーナーに実際にインタビューをした所、「仕入れコストが下がるよりも味が変わることが嫌だから規格外野菜の購入は難しい」と言われました。

そこで規格外の野菜のターゲットは味よりも価格を重視する一般消費者に変更しました。

答えは現場やターゲットと対話をすることで見えてきます。筆者は今後タイに進出しようが、アメリカに進出しようが、同じことをすると思います。

佐藤峻 プロフィール

国際基督教大学教養学部教育学科卒。

國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。


新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)

その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。

外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。

手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。


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