Vol.13 その後の台湾インフルエンサーマーケ…2022年インフルエンサーマーケ最前線①

こんにちは!台湾でデジタルマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤です!
今回は2022年8月現在、台湾のインフルエンサーマーケティングがどうなっているか?という事についてお話をしたいと思います。
結論から言うと、台湾では一部を除いて、インフルエンサーやユーチューバーに何万円も払って、その費用を回収するような時代はとっくに終わっています。要するにインフルエンサーの投稿や動画に 100万円払っても、100万円の売上は期待できませんよ、という事です。
別に台湾でインフルエンサーを手配する業者や、会社さんを非難するつもりはなく、台湾のインフルエンサー起用が割に合わなくなったのは、台湾のネット上の PR に対する規制が緩かったためと考え僕は思っています。
ただこんな事を言っても、これをご覧の読者の大半は何が何やらという感じだと思いますので、このブログでは2022年8月現在の台湾インフルエンサー事情についての現状や僕の見解を述べたいと思います。
本テーマは少し長くなりますので、2回にわたって記載させていただきます。
インフルエンサーユーチューバーの現状:費用
まずは台湾のインフルエンサーやユーチューバーの費用からお伝えします。インフルエンサーの費用はコロナ前とほとんど変わっていません。2016年から2019年ぐらいにかけて一時期インフルエンサーのバブルが起こりましたが、その後落ち着いてます。
しかしながら円安という事もあり、円換算するととても高く感じます。一例をご紹介します。例えば applemint では最近50万円でインフルエンサーを起用したいという日系企業の方がいました。50万円を2022年8月現在のレートで台湾ドルに換算すると、大体10万台湾ドルです。
10万台湾ドルで起用できるインフルエンサーは FB及びIG のフォロワー数が大体10-15万人程度の方です。ケースバイケースですが、台湾のインフルエンサーの費用は1フォロー1台湾ドルぐらいに覚えておくといいです。
残念ながら、10万台湾ドル(約45-50万円)を毎度払える会社はいません。そこで近年は KOC (Kye Opinion Consumer) という、フォロワーが3-5万人のインフルエンサーが増えています。ただ正直な話、彼らを複数人使用した所で効果は限定的なのが現状です。
次の章でお話しします。
インフルエンサーユーチューバーの現状:効果
冒頭でもお伝えしたように、インフルエンサーの投稿から一発で何万円も売上を回収するのは、現在はほぼ不可能だと思います。
一般に Facebook のニュースフィードに投稿が反映されるのは、フォロワーの10%ほどと言われています。要するに、1万人のフォロワーがいる人が、投稿をしても大体1,000人ぐらいにしかその投稿は見られないという事です。
投稿に対するクリック率は 3-5%ほどで、1万人のフォロワーがいる人でさえ、投稿をしても30-50人しか投稿をクリックしない計算になります。これが10万人だと、300-500人が投稿をクリックし、そのうち購入に至るのは2%ほどなので、購入者は 6-10人とかです。
従って、1回の投稿から数万円の売上を回収するのは難しいという事です。
最近では投稿をしてもあまり効果はないので、投稿を以後広告素材のような形で使うために、applemint ではユーチューブ動画の作成を依頼しています。しかしながら、YouTube の動画制作となると50万円じゃ収まらないケースがほとんどです。
そんなインフルエンサーもブームだった2015-2017年ぐらいはものすごく効果のいい施策だったのです。それがここ数年で急激に悪化しました。
投稿をしてもニュースフィードに中々反映されない、Facebook のアルゴリズムも一部原因ではありますが、それよりも、台湾の緩い法整備が最大の要因だと僕は考えています。
台湾の緩い規制が招いた消費者のリテラシーアップ
日本では、インフルエンサーが金銭を受け取って、商品をPRする場合、必ず PR である事を伝える必要があります。そうしないと企業はステマと認知され炎上しますし、下手すれば法の観点からもアウトです。
その結果、日本のインフルエンサーやユーチューバーの PR 動画は、PR動画であっても視聴者が楽しめる工夫がかなりされています。なぜなら、消費者の多くは通常『PR動画』という表示を見た瞬間コンテンツを見たくなくなるためです。
以下の、江頭2:50のPR動画は焼肉屋さんとのタイアップ動画で、PR動画であるにも関わらず、コンテンツが面白いので再生回数は2022年8月21日時点で、200万回を超えてます。
それに対して、台湾では PR 動画に対して、『PR動画』と表示する義務はありません。その結果、多くの企業は 『PR動画』と表示しません。なぜなら企業側も消費者は『PR動画』を見たくない事を知っているからです。
そうすると、企業がPRをお願いしたインフルエンサーの動画は、大体2パターンに分けられます。
- 『PR動画』の表示なしでゴリゴリに商品を宣伝する動画
- PR と悟られないため、ストーリーを入れるがしれっと PR をする動画
インフルエンサーが商品を PR していた初期は、商品をゴリゴリ宣伝しても消費者は PR と気づかず、商品が売れまくりました。しかし、その後消費者のリテラシーが上がり、今では 『PR動画』の表示がなくても、商品の宣伝が入ると、消費者は PR 動画をPRと認識出来る様になりました。
その結果、広告効果が悪化します。そうすると、広告主は「ゴリゴリ宣伝してはいけないのではないか?」と考え始め、#2 のストーリーがあるしれっとPR動画が流行ります。
残念ながら台湾のしれっと PR 動画はコンテンツとして面白くないケースが大半で、その理由は2つあると僕は考えています。
- 広告主が動画を企画する
- インフルエンサーのマネージメント会社にいい動画を企画出来るディレクターがいない or リソースがない
広告主は動画を作るプロではありません。しかし、広告主はお金を出しているので、インフルエンサー側は広告主の要求に逆らえないケースがほとんどです。
広告主は、お金を出しているからには商品を宣伝したいので、結局コンテンツの質より、宣伝ができたか否かが優先されます。
また、インフルエンサーを管理する会社さんも、カジサックや江頭2:50のように優れたPR動画を作れるディレクターが一人一人ついている訳ではありません。
通常一人のマネージャーが複数のインフルエンサーを担当しますし、広告予算が少ない広告主の動画は、リソースの問題からディレクターではなくマネージャーが企画する場合もあります。
話をまとめると、台湾では PR 動画は日本のように「ステマ」と認識されず、結果的に PR 動画とそうでない動画の境界線が曖昧になりました。
その結果、消費者の PR 動画を見分けるリテラシーが上がり、つまらない PR っぽい動画はすぐに見抜かれ、効果がなくなったと考えています。
その他に、インフルエンサーが目の前のお金欲しさに、PR動画を連発してしまったのも、結果的に消費者のリテラシーを上げる要因になったと思います。
以上が台湾インフルエンサーの現状の前半となります。次回は冒頭の結論に述べたインフルエンサーを使っても収益は増やせなくなってきている現状について解説させていただきます。
佐藤峻 プロフィール
国際基督教大学教養学部教育学科卒。
國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。
新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)
その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。
外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。
手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。

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