Vol.15 SEO がうまくいっていても、結果につながらない企業の事例

こんにちは。台湾でデジタルマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤です。

今回は、SEO がある程度うまくいっていても、ユーザーの心を動かすコンテンツを作成できないと結果につながらないということについて解説します。 

SEO とは、「Search Engine Optimization」の略で、検索エンジン最適化という意味です。具体的には、主にブログコンテンツを作成し、狙ったキーワードが検索された際に自社のウェブサイトを上位表示させる施策のことを指します。 

ブログコンテンツを作成する以外に、ウェブサイトをモバイルに最適化したり、ローディング速度を早めたりする内部最適化ということもありますが、一番効果的なのはブログコンテンツの執筆です。

ブログコンテンツはコンテンツの一種で、コンテンツにはその他に動画や写真があります。

コンテンツマーケティング(以下コンテンツマーケと表記)とは、コンテンツを作成し、それを販売や見込み客獲得に活かす手法のことを指します。 そのため、コンテンツマーケと SEO の関係性を表すと以下の図のようになります。

SEO 施策を1-2年程度行うことで、ある程度の流入増加は見込めます。しかし、SEOだけで見込み客獲得の数を増加させることは難しいです。自然検索からウェブサイト に流入したユーザーは、そのウェブサイトのデザインだけでなく、掲載されているコンテンツも見ます。 

そして人々が心を動かされるのはデザインではなくコンテンツです。 今回は事例を交えて、SEO 対策をいくらしても、戦略的にコンテンツを充実させないと見込み客を獲得できないことについて解説します。

自然検索で流入したユーザーが購入するか否かは別問題

SEO にはパターンがあり、どんなブログコンテンツを書けば上位にランクされるかは大体決まっています。 

もちろん、そのパターンに沿ってブログを書けば自動的に自社サイトが上位にランクされるほど SEO は単純なものではありませんが、まずはそういうパターンがあることをご理解ください。

仮にここではみなさんがパターンを理解して、ブログコンテンツを執筆した後に無事自社サイトが上位に表示されたとします。

これはデジタル広告に例えると、広告が出稿され、露出されたことになります。広告が露出し、実際にクリックされたとしても流入したユーザーが問合せに至るかどうかは別問題です。 

SEO をする時は、どんなキーワードでユーザーを流入させて、流入したユーザーに対して ウェブサイトでどんなコミュニケーションをすれば問合せにつながるのかを考えることが重要です。 このコミュニケーションの企画を自社内だけで行うと失敗することが多いです。 理由は第三者の視点から考えられていないためです。事例をご紹介します。

一方通行なコミュニケーション

企業がターゲットへのコミュニケーションの企画を自分達だけで行うと失敗すること多い理由は、第三者の視点に立てないからです。 筆者が某台湾企業と仕事をした時の事例をご紹介します。

その企業は、日本進出のために SEO 対策をしたいと考え 、弊社へ問合せをしました。 SEO 対策の目的は「問合せの獲得」でした。

つまり、Google の検索結果から流入したユーザーを問合せにつなげたいということです。 そこで弊社はまず、どんなキーワードを狙えば問合せにつながるか考えました。

これがコミュニケーションの企画の第一歩です。これを間違えると全て台無しになります。
例えば魚屋が SEO 対策をして、「和牛」というキーワードからユーザーがHPに流入してもお魚の販売につながらないのと同じことです。

では、ある家電メーカーが、「トースター 安い」というキーワードを狙うとどうでしょうか。 一見何の問題も無さそうですが、仮にこの家電メーカーのトースターが高価格帯の場合、果たして「トースター 安い」というキーワードからユーザーが流入して購入に至るでしょうか?この場合、検索したユーザーのニーズと提供する製品との間にギャップがあるので購入に繋がらないと考える方が自然です。

こうして事例を挙げるとわかりやすいのですが、実に多くの企業がこういうことをしてしまいます。 

大事なことは、第三者の視点に立って、その企業の強みは何かを定義することです。

従ってコンテンツマーケや SEO をする時は、自分達はどういう商品やサービスを提供していて、何が強みなのか改めて理解する必要があります。 

自社の強みは何かという問いを企業に投げると、「弊社の商品は ISO 〇〇に認証されていて、〇〇認証も取得!高性能〇〇付き!Made in Japan である」といった回答が多いです。  しかし、 ISOに対して無関心なユーザーに、「弊社はISO〇〇を取得しています!」と言っても意味はありません。

ターゲットユーザーの立場に立てる企業は少ない

少し脱線しましたが、実例に戻ります。前述した台湾企業は SEO を弊社に依頼した際、自社のサービスに関連したキーワードを狙うことに執着しました。理由は目的が問合せだったからです。 

しかしその結果、流入数は増えたものの、目的である問合せが増えませんでした。筆者はこの原因が3つあると考えています。

  1. キーワードの選択肢がずれている。
  2. ウェブサイト上のコミュニケーションが間違っている。
  3. コンテンツのバリエーションが無く、魅力がない。

まずは1.についです。高級家電メーカーが、「トースター 安い」というキーワードを狙っても販売につながらないと考えるのと同じです。狙うキーワードを間違えればいくら流入数が増えても目的を達成できません。

残念ながら多くの企業は自社の製品やサービスと関連しているという理由だけでキーワードを決めてしまい、結果的に効果のないキーワードばかりになってしまうことが多いです。

次に2.についてです。ウェブサイトに流入しても、流入してきたユーザーに対するコミュニケーションを間違えると、問い合わせにはつながりません。例えば、SEO で流入したユーザーが企業に誠実さを求めていたのに、ウェブサイトがポップなデザインだとユーザーのニーズとサイトの印象にズレが起こります。デザインとコンテンツの両面で、ターゲットユーザーとのコミュニケーションを考える必要があります。

最後に3.についてです。ユーザーの多くはウェブサイトに書いてあるその企業の強み(サービス)や、理念、ミッションだけでなく、更に魅力的なコンテンツを求めています。

ではどうすれば企業イメージや思いが伝わるようにすればよいのでしょうか。ポイントとなるのはコンテンツの質です。ユーザーは、興味のあるコンテンツに惹かれます。興味のあるコンテンツとは、事例紹介など様々挙げられます。それらをブログコンテンツとして戦略的に充実させていく必要があります。しかし、SEO を意識したコンテンツだけではコンテンツの幅が狭まり、検索で上位に表示されても一部の人にしか響かない内容になることが非常に多いです。 これが SEO がうまくいっても結果につながらない企業です。前述した台湾企業が陥った罠です。

コンテンツとはブランディングである

自社の強みを理解せずに、ただ商品やサービスに関連したキーワードばかりを狙う SEO は、目的を達成できないことが往々にして起こります。 

その理由は狙うキーワードが間違っていることと、自社ウェブサイト内のコンテンツが流入したユーザーの心を動かしていないからです。 

まず自社の強みを理解し、その強みを軸にして、自分達が発信して意義のあるコンテンツを作る必要があります。 つまり SEO をする際は、SEO という狭義で物事を捉えるのではなく、コンテンツを通したブランディングまで意識する必要があります。 

SEO にしろコンテンツにしろ、最終的な目的は売上に繋げることです。ブランディングまで意識しないと SEO で流入数を稼いでも、目的は達成できないという事態が起きます。  今回ご紹介した事例が皆様の参考になると幸いです。

今回ご紹介した事例が皆様の参考になると幸いです。


佐藤峻 プロフィール

国際基督教大学教養学部教育学科卒。

國立政治大學國際經營管理英語修士(ビジネススクール)修了。


新卒後メーカー勤務を経て、外資系広告代理店WPP マーケティングコミュニケーションズ合同会社入社(現Wunderman Thompson Japan)

その後、台湾の日系広告代理店を経て、2017年にデジタルマーケティングの会社 applemintを台湾で起業。

外部からの出資0、人脈なし、営業経験なしから現在までに40社以上の台湾プロモーションを担当。

手がけた業種はBtoC、DtoC、BtoB、アパレル、コスメ、ホテル、ジュエリー、機械メーカーと多岐にわたる。


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