Vol.20 販売管理システム上のトレーサビリティの扱い

このコラムでは、”営業人のための販売管理システムとの付き合い方”と題して、どうすれば販売管理システムの導入・運用が上手くいくのか、或いは、どの様なときに失敗しやすいかについて、システム提供側である筆者の実体験も交えてお伝えしています。第20回である今回は、販売管理システムにおけるトレーサビリティについて考えてみたいと思います。
「トレーサビリティ」というと、「製品がいつ・どこで・だれによって作られたのか。といった情報を追跡可能な状態にしておくこと」というのが一つの定義になるかと思います。
一見営業サイドからは、関係ないようにも思えますが、営業は製品・サービスを売って終わりではなく、その後も長いお付き合いで、お客様との良い関係を築いていく必要があります。
したがって、営業サイドから見た場合「どの製品が、いつ、どのお客様に販売されたのか」を、販売管理システムで正確に把握しておくことが、トレーサビリティにおける大事な要素の一つになります。
自社が取り扱っている製品の種類、用途により、販売管理システムでどこまでトレーサビリティを確保するかは、異なりますので、その指針を考えるポイントをいくつかあげます。
1)製品一つ一つにロット番号(シリアル番号)を振ってトレーサビリティを確保する必要があるか。
こちらについては、主に品質面でお客様から要求があることが多いかと思います。
製品個別ロット番号レベルでのトレーサビリティを求められているにも関わらず、販売管理システムにその入力枠がない場合、別途エクセル等で自作することになります。
手間もかかりますし、いざというときのトレースに時間がかかってしまいますので、販売管理システム構築時に明確にしておくと良いと考えます。
2)お客様から問い合わせがあった時に、生産までさかのぼれるか。
例えば、お客様から「製品ロット xxxxxx で不具合が発生した」という問い合わせがあった場合、どの様に生産までさかのぼってトレースするかのストーリーを予め定めておく必要があります。
これは必ずしも全自動でなくてもよいと思いますが、途中でトレースの道が途切れてしまうことは必ず避けましょう。
このストーリーの確立には営業部門だけではなく、製造部門・品質管理部門も関係してきますので、入念なコミュニケーションが大切です。
3)トレーサビリティを確保するための工数
トレーサビリティを確保するためには、製品の出口である出荷場(出荷倉庫)にある程度の作業負荷がかかってきます。
必ずしも営業と同部門ではないため、あまり大きな無理を押し付けて、作業負荷が過大にならないように、バーコードによる製品ロット番号の読込等も検討することで、営業・倉庫双方の負荷を最小限に抑えられると、よりスムーズな運用が実現できます。
トレーサビリティは品質面だけではなく、お客様との関係構築上も重要な要素だと考えます。多部門にわたる難しい調整ではありますが、やりがいのある取り組みだと思います。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
松村 稔 プロフィール
上海レンユアー総経理
2003年から上海で日系企業向けに業務システムの構築サービスを提供。 属人化を排除しつつ、お客様独自の強みを強化する業務システム構築を得意とする。 大規模な工場系基幹システムから、クラウドを活用した商社向けの販売管理システムまで、幅広い経験を活かして、多数の大手企業のシステム導入に参画。

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