Vol.23 SFAを取り巻くIT用語独自解説③-1 ERP連携

システム導入の支援をしていると、時折、お客様の担当者や責任者がITに対して過度な期待を持っており、実際に導入段階や運用段階になると、当初の期待と現実とのギャップを認識し、落胆してしまうことが起こります。
このようなことが起こる原因の一つとして、ITに関する用語がニュースや広告などに出てくる頻度が非常に多いため、その技術や手法に関する良い面だけを見て知識を十分持っているつもりになっていることが挙げられます。
「知識を持っているつもり」となってしまう原因として、各種メディアでの伝え方があるのではと考えています。メディアで伝える情報は、視聴者や読者に興味を持ってもらうこと、そして情報提供者であるスポンサーを満足させることが必要であるため、“成功物語”や“明るい未来”のような良い面のみを訴求し、成功の前提条件やそこに至るまでの過程などが省略されてしまうので、断片的になってしまいます。この一方的かつ断片的な情報がありふれている状況だと、どうしてもITに対して「知識を持っているつもり」になってしまうリスクがあります。

ERP連携

今回はSFAを取り巻くIT用語解説の3回目として、ある程度の規模の会社にてよく要件として挙げられる”ERP連携”について取り上げたいと思います。
“ERP”自体の説明は情報が多くあるので本コラムでは割愛し、今回は「SFAとデータ連携したい」という状況における”ERP連携”について解説します。

SFAとの”ERP連携”に出てくる”ERP”は販売管理システムと同義と考えても差し支えない

上述のように、「SFAとデータ連携したい」という要件が出る場合、経験上大きく下記の4つに集約されます。
・受注情報をERPに自動転記したい
・SFAで出荷状況、入金状況を把握したい
・SFAで在庫情報を把握したい
・ERPにある会社や製品などのマスタ情報を使いたい
つまり、表現上はERPなのですが、SFAという言葉が出てくる議論の場でのERPは、販売管理システム(受発注・在庫管理システム)と同じと考えても差し支えないと考えられます。

ポイントはERPのデータ粒度・範囲を理解し、連携対象を検討すること

「SFAとデータ連携したい」という要件は、一般的に人を介さずに自動化することを目的としています。しかし、ERPとSFAにおけるデータの粒度・範囲の差を理解しないまま連携を行うと、期待した効果が得られない可能性があります。

ERPは概念的には企業におけるあらゆるデータの一元管理を目的としていますが、実際には財務処理に必要なデータのみを扱っている場合が多いため、SFAで管理しているデータとは粒度や範囲が異なることがあります。そのため、単純に項目レベルでデータを連携しても、SFAからするとごみデータ(使えないデータ)が増えてしまい、SFA自体が使い物にならなくなる恐れがあります。


具体的な検討ポイントに関しては、次回のコラムで解説します。


伊東 大輔 プロフィール

TRANSAGENTパートナー SFAコンサルタント

大学卒業後大手SFAメーカーのSE、導入コンサルタントとして従事し、200社以上のSFA導入支援コンサルティングに携わる。

その後日本国内シェアNo.1のグループウェアメーカーの中国現地法人にてSE統括兼マーケティング総監として、導入コンサルティング及び販促企画や営業組織づくりに注力し、中国進出日系ITメーカーとしては異例の導入企業1,000社突破達成に貢献した実績を持つ。

トランスエージェントに参画後はB to BマーケティングにおけるWebマーケティング(デジタルマーケティング)施策と営業行動との連動における諸問題に着目し、顧客企業に対して、その可視化と分析が実現できるSFA活用支援を行っている。


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