プロフェッショナルに聞くvol.3

営業の未来~これからの営業のあり方を考える~

株式会社リワイヤード 代表取締役
仙石 太郎 氏

営業をめぐる変化について

最近は営業パーソンが商取引の現場に介在するシーンが少なくなっています。インターネット利用が進み、買い手が商品検討に必要な情報を自由に得られるようになったこと、電子商取引やデジタル購買などの処理や決済が、人を介さずに済むようになったこと、顧客の嗜好や購買行動が分析によって予測できるようになったことなどが理由として挙げられます。B2Bでは企業の購買革新部門が購買・調達に関する支配権を持ち、営業スキルを発揮できる領域が狭められているのです。

営業スタイルの変化

買い手と売り手の間の情報の非対称性が失われつつある現在、ソリューション営業にも本質的な変化が求められています。これまでは供給サイド側である営業パーソンが知識を多く持っていることで、顧客課題の解決に貢献できました。お客様もまた、課題はよくわかっているのだけど自分では解決できない、どういう組み合わせがよいのか知識がないという状態であり、助けを望んでいました。お客様の課題解決にフィットするものを取り揃え、足りないものがあれば他から持ってくる、仕入れや組み合わせによって顧客に最適解を提供する、これをソリューション営業といったわけです。しかし現在ではどういうものを買えば問題解決できるのか、あらゆる情報がネット上には溢れているので、買い手と売り手の間の情報格差がなくなってきています。お客様の問題解決をするためのソリューションの組み合わせなどは、ネットを調べればわかるようになっている。そのため『ソリューション営業は死んだ』と言われているわけです。

求められるインサイト営業力

そこで出てきたのがインサイト営業です。情報優位性をもつ顧客に対して仮説をぶつける。顕在化されたニーズだけなく、相手にとって本質的に必要なものはこれですねという指摘をしたりする、未来を見据えた時に、今はこれをやったほうがよいですよとお客様にアドバイスができるなど、お客様が認識している顕在課題ではなくお客様が意識していない課題に気づかせることができる。こうしたお客様の状況を洞察する力が必要になってきます。「お客様に共感する」「お客様に役立ちたいという想いを持つ」「お客様が解けないものを洞察する」「物事の本質を見抜く」こうした力を発揮するのがインサイト営業になります。そうした意味では、営業にコンサルタントとしての力が必要になってきたと言えます。売り手と買い手の間に情報格差がなくなり買い手優位になった今、そこを突破するためのインサイト営業力が求められているのです。

今後の営業の役割について

昨今営業を支援する技術は大きく進化しています。①市場や顧客を分析するツール②マーケティングを代行するMAツール③オンライン営業のためのコミュニケーションツール④外勤営業をサポートするSFAツール⑤お客様の困りごとを解決するためのカスタマーサポ―トツール⑥契約やオーダーを電子化するツールなどがあります。こうしたテクノロジーを味方につける必要があります。また営業が細分化されるほど、ビジネス機会が増大してくるので人間がやらなければならない領域が増えてきます。逆にいえば、付加価値の高い部分に営業が専念する環境が整ったともいえます。
営業とは「決まったもの」を「決まった量」だけ売る役割と考えるのは工業化社会のなごりです。これからは「ビジネスをプロデュースする」、「あらたな価値を提案し、周りを活用しながら実現していく」、そうしたビジネスプロデューサー:事業の創造者としての役割が求められると思います。仮説を立てる力がないと今後は生産性があがらない時代です。「つくったものを売る人」という発想をやめることが重要です。
今後売り子としてのセールスに向かうのか、インサイト営業としての力を磨きコンサルタントに近づくのかでその人の未来が大きく変わってくると考えます。後者になることができれば未来は明るいと思います。
現在の多くの企業が抱える課題として、売る力がないというよりは、そもそも新しい需要がつくれていないという点が挙げられます。営業努力が弱いのではなく企業としての付加価値が低下しているのです。これまで提供してきた製品やサービスが他のものにとって代わられ、事業の衰退を招いた事例を思い浮かべてみてください。スマホの画面を眺めるとすぐに50くらいは見つかるのではないでしょうか?
これからの時代、フロントを担う営業はセンサー機能として大いに期待されます。フロントから問題提起をして社内を動かすことが重要です。作る人、売る人という役割分担の発想自体から抜け出すことが大切です。目的に向かって各職種が一体化する。営業はビジネスプロデュースをする、起業家の役割を担う。市場やお客様のありのままを見る力、課題を知覚する力、問いを立てて、コンセプトを考え、総合的な価値提供にかかわる意識を持つ。今後はそうした役割を担っていくことが求められているのです。それらを実現できれば営業の未来が拓けると思います。


仙石太郎 氏 プロフィール

株式会社リワイヤード 代表取締役
一般社団法人知識創造プリンシプルコンソーシアム 共同代表
一般社団法人フューチャー・センター・アライアンス・ジャパン  理事
大塚食品(株)社外監査役

1988年  大学を卒業後、富士ゼロックスにてエリア営業、新規顧客開拓営業、システム営業を担当
1996年  人材開発部へ異動し、ソリューション営業モデルの開発と展開、選抜型のリーダーシップ研修の企画と運営、顧客価値創造型マーケティングの開発と展開に従事
2000年  知識経営コンサルティングを行うKDIの立ち上げに参画し、主として自動車、電機、機械、化学、商社、流通などの大手企業の戦略部⾨、事業管理部⾨、R&D部⾨、マーケティング部⾨、顧客サービス部⾨を対象に、品質経営、ナレッジマネジメント、組織変革、働きかた改革、知的生産性向上、業務改革、オフィス改革、新規事業開発、イノベーション力強化、ビジネスモデル改革などの各種コンサルティングを提供
2016年〜2019年 価値創造コンサルティング部長
2019年  富士ゼロックスを退職し、知識経営、およびイノベーションの実践支援を生業とする株式会社リワイヤードを設立

著書

『企業変革を牽引する新世代リーダー、ダイナモ人を呼び起こせ』日経BP社(2021 年)
仙石太郎・荻原直紀・向江美緒・田中順子・紺野登 共著

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