Vol.70 孫子で読む交渉学② 窪田恭史
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交渉とは、ズルいものでも怖いものでもありません。限られた資源を奪い合うのではなく、むしろ大きく育てていく創造的なスキルです。自分と交渉相手、社会とをつなぎゆたかにする、これからの時代の交渉学を知ってみませんか。この番組では、対談形式で身近な事例から交渉の真の価値を皆さまにお伝えしていきます。
孫子で読む交渉学② 窪田恭史
今回も日本交渉協会常務理事、ナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史氏をお呼びして、「孫子で読む交渉学」をテーマにお話いただきました。
◎窪田恭史氏のご経歴
日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事
ナカノ株式会社 代表取締役
日本古着リサイクル輸出組合 理事長
表情分析、FACS認定コーダー
日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター
早稲田大学政治経済学部卒
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)におけるコンサルティングおよび研修講師業務を経て、衣類のリサイクルを90年手がけるナカノ株式会社に入社。2024年より代表取締役社長に就任。
2012年、交渉アナリスト1級取得。
日本交渉協会燮会幹事として、交渉理論研究を担当。
「交渉分析」という理論分野を日本に紹介し、交渉アナリスト・ニュースレターにて連載中。
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【TODAY’S TOPICS】
◎孫子の兵法「作戦篇」
・「拙速」の原則
戦争は国家の存亡に関わり、コストが莫大であるため、早期の決着が重要。
例:湾岸戦争(短期間で決着) vs. ベトナム戦争(長引いて大きなコストが発生)
※強者ほど多数の資源を動かすため、長引けば負担が増大する。
・「敵に勝ちて強を益す」の原則
戦争中、敵の資源や技術、兵力を取り込むことで自軍を強化する。
例:モンゴル軍が技術や兵器を吸収。
◎2つの原則と交渉との関連性
・拙速(早期決着)との関連性
メリット:自分の意図が漏れる前に有利な条件で合意でき、無駄な駆け引きを避けられる。
デメリット:双方の本当のニーズを掘り下げる時間が足りず、結果的に質の低い合意に陥る恐れがある。
※信頼構築に要する時間や合意バイアスにも注意が必要。
・「敵に勝ちて強を益す」との関連性
常に統合型交渉の可能性を探ることで、お互いにとって有益な結果をもたらす。
※「交渉の7要素」が統合型交渉に向けてのチェックリストとなる。
◎怒りの感情と交渉
・「敵を殺すは怒りなり」
交渉者が怒りを表に出すと、有利な条件を引き出す場合がある
しかし、怒りは長期的にはマイナス要素(人間関係の悪化など)の方が大きい
→怒りを感じる原因(例:縄張り侵害や自由の制限)を客観的に理解することで、冷静な交渉が可能になる
お聞きいただきありがとうございました。
交渉学についてより詳しい内容をお知りになりたい方は、
「交渉アナリスト」のサイトをご覧ください。
◎伝える人:安藤雅旺(あんどうまさあき)・株式会社トランスエージェント代表取締役。NPO法人日本交渉協会代表理事。「仁の循環・合一の実現」を理念に、交渉力協働力向上支援事業、BtoB営業マーケティング支援事業などを展開している。
著書:『心理戦に負けない極意(共著)』PHP出版・『中国に入っては中国式交渉術に従え!(共著)』日刊工業新聞社・『交渉学ノススメ(監修)』生産性出版・『論語営業のすすめ』生産性出版
◎聞く人:星野良太・人まず株式会社代表。コピーライター・講師。声の対談メディアWorkTeller主催。
著書:「コロナ時代に、オンラインでコーチングをはじめてみた。」
【運営】
日本交渉学協会/高い交渉力を持ち社会に貢献できる人物を「交渉アナリスト」資格として認定する活動や、交渉力向上に役立つ情報発信、企業や大学、行政機関での交渉力普及のための研修コンテンツの提供などを実施。
【関連資格】
交渉アナリスト/MBAレベルの交渉学の知識と交渉技術を兼ね備えた、交渉の実践者を認定する資格。