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営業のあり方 BEING

仕事の捉え方を見直そう~論語営業のすすめ①

営業人.com代表 安藤 雅旺

仕事の捉え方を見直そう~論語営業のすすめ①

 おもしろきこともなき世をおもしろく すみなしものは心なりけり

 この句は幕末の志士高杉晋作が上の句を詠み、下の句を幕末の女流歌人野村望東尼が付け加えた歌と言われていますが、営業の在り方を考える上でこの句は非常に参考になります。読者の皆様の中には、営業ってストレスが多い、楽しい部分などあるのだろうか? 相手に断られるばかりで苦痛だ、他人に頭を下げるのは抵抗がある、商品・サービスに自信が持てない、数字に日々追われていったい何の意味があるのだろうか? など様々な疑問や課題を抱えていらっしゃる方も多いと思います。もしくは、営業をもっと好きになりたい、得意になりたいがどうすればよいか知りたいという前向きな期待を込めて読んでくださっているかもしれません。
 それらの問いの答えを導く鍵は冒頭の句にあります。現在携わっている営業という仕事を面白くするのもつまらない仕事にするのも自分の捉え方次第ということです。どんなに偉く立派な先生に営業の価値について美辞麗句を並び立てご講義いただいても、受講者本人がそれを価値と捉えずゴミ箱に捨ててしまえばそれまでです。つまり営業という仕事を「自分にとってなくてはならない価値がある非常に尊い仕事」にすることもできますし、同時に「取るに足らぬ仕事で何の意味もないつまらないもの、単に生活の糧を得るためにやむを得ずする仕事」にしてしまうこともできるのです。この判断は自分自身で自由に決められます。すべては自分が決めること、誰のせいでもなく、押し付けられることもなく自己の意志において選択することなのです。
 重要なことは現時点であなたが営業を好きか嫌いか、前向きか後ろ向きかは別にして、この先も営業という仕事に携わるのであれば、営業活動にやりがいを見出し、自分の人生にとって大きな意味を持たせ、誇りを持てる仕事にするきっかけにしていただくことです。営業という仕事について一緒に考え、自分の今後にプラスになる機会にしていただきたいと思います。

 私はこれまで30年に渡ってBtoBの営業を行って来ました。今も日々七転八起の営業に従事しています。長く営業をしてきた中で自信があることは、常に自身が大切にしたい価値観を軸にして、困難な状況に置かれてもぶれないようにしてきたこと、営業の目的を単に売上向上のみに置くのではなく、社会や顧客にとっての意味、自身にとっての意味は何かという点をしっかり考えて大切にしてきたこと、そして営業を通して未熟である自分自身の人間性を日々高めることを仕事の目的に掲げることで日々の失敗を自身の糧と捉え、自分に対する失望を希望に変え、仕事に対する悲観を楽観に変える思考の癖をつけてきたことです。
 私は組織開発、人材育成の業界で長年仕事をしていますが、社会人になって最初にお世話になった会社で飛び込み営業からスタートし、すべて顧客は新規開拓で「ゼロから自分の数字を立てる」という方針で鍛えられました。そのおかげで、29歳で独立した後も、すべて顧客はゼロから開拓するものという当たり前の前提に対して、戸惑うことなく邁進することができました。独立時は看板がなく全く信用がありません。そのため激しい逆風が吹き荒れ、常に断りの嵐に見舞われます。そんな中でも心が折れることなく立ち向かってこられたのは、常に「自身の大切にしたい価値観」を軸にして、困難な状況に置かれてもぶれないようにする、営業の目的を単に売上向上のみにおくのではなく「社会や顧客にとっての意味、自身にとっての意味」は何かという点を考え大切にしてきたこと、そして営業を通して「未熟である自分の人間性を日々高めること」を仕事の目的に掲げてきたことが、大きいと感じています。そしてそこに大いに役立ったのが『論語』です。論語の精神は営業に求められる精神と共通する部分がたくさんあります。今後この点を中心に説明していきます。

営業人.com読者の皆様が営業という仕事の本質を改めて考え、今後の仕事でより自分らしさを発揮し、営業活動を充実したものにしていってくだされば幸いです。


安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 代表理事


二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)
株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。
2001年株式会社トランスエージェントを設立。
2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。
「仁の循環・合一の実現」を理念に、マネジメント・イノベーション支援事業、
交渉力・協働力向上支援事業、BtoB営業・マーケティング支援事業を展開している。


主な論文・著書
「中国進出日系企業の産業財市場における顧客インターフェイスの研究」
Strategy for Managing Customer Interface taken by Japanese B to B Marketers in China
~Effective Business Activities in Developing Customer-Supplier Relationship in China~
(立教大学大学院MBAプログラム2011年度優秀論文賞受賞)


『心理戦に負けない極意(共著)』(PHP研究所 2009)
『中国に入っては中国式交渉術に従え!(共著)』(日刊工業新聞社 2013)
『交渉学ノススメ(監修)』(生産性出版 2017)
『論語営業のすすめ』 (生産性出版 2021)
『论语和营业人』 (今日出版 2025)


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