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孔子と論語について~論語営業のすすめ⑪

営業人.com代表 安藤 雅旺

孔子と論語について~論語営業のすすめ⑪

孔子は2500年前の思想家です。(紀元前551年~紀元前479年)中国の魯国(現在の中国山東省)で生まれ、儒教の礎を築きました。50歳を過ぎて魯の国の定公に認められ司冠(司法長官)となり、政治家として活躍します。その後、理想の政治を求めて弟子と共に諸国を遊歴します。途中何度も窮地に陥りますが、災厄を乗り越え、理想の実現に向けて奮闘します。そして長い遊説の旅を終えて、最後は魯の国に戻り弟子の教育、君子の養成に力を注いで74歳で亡くなります。孔子の死後その教えを受け継ぎ、400年近くかけて弟子達が編纂したのが『論語』になります。

それでは孔子とはどんな人だったのでしょうか。『論語』の中には孔子の人物像に関して触れられています。3名の弟子の言葉はこうです。

子貢   「温良恭倹譲」(学而第一)
  おだやかで、すなおで、うやうやしくて、つつましくて、へりくだりであられる。
  (『論語』金谷治訳注 岩波文庫)

曽子   「夫子の道は忠恕のみ」(里仁第四)
  先生の道は忠恕のまごころだけです。
  ※忠恕 忠は内なるまごころにそむかぬこと、恕はまごころによる他人への思いやり
  (『論語』金谷治訳注 岩波文庫)

顔淵   「これを仰げばいよいよ高く、これを鑽ればいよいよ堅し。これを瞻るに前に在れば忽焉として後に在り。夫子、循循然として善く人を誘う。我れを博むるに文を以てし、我を約するに礼を以てす」(子罕第九)
  仰げば仰ぐほどいよいよ高く、きりこめばきりこむほどいよいよ堅い。前方に認められたかと思うと、ふいにまたうしろにある。うちの先生は、順序良くたくみに人を導びかれ、書物でわたくしを広め、礼でわたしをひきしめてくださる。
  (『論語』金谷治訳注 岩波文庫)

孔子本人の言葉としては
  「憤りを発して食を忘れ、楽しみて以て憂いを忘れ、老いの将に至らんとするのを知らざるのみと。」(述而第七)
  [学問に]発憤しては食事を忘れ、[道を]楽しんでは心配事を忘れ、やがては老いがやってくることにも気づかずにいるというように。
(『論語』金谷治訳注 岩波文庫)

これらを見ると偉大な教育者であるとともに非常に謙虚で自然体で身近な存在に孔子を感じるのではないでしょうか。封建社会の道徳としての儒教の祖としての堅いイメージは後世の人々が意図的につくりあげたものであり等身大の孔子は極めて親しみやすい人であったと私は考えます。

孔子は自分のめざすべき姿について弟子の子路に問われ、こう述べています。
  老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、小者はこれを懐けん。(公治長第五)
  老人には安心されるように、友だちには信ぜられるように、若者にはしたわれるようになることだ。
  (『論語』金谷治訳注 岩波文庫)

孔子の人柄がうかがえる章句です。地に足がついた身近な存在である聖賢孔子をリアルに感じられるくだりです。孔子と論語については下村湖人の名著『論語物語』の序文が非常にわかりやすく説明していますので最後に紹介いたします。

  論語』は「天の書」であるとともに「地の書」である。孔子は一生こつこつと地上を歩きながら、天の言葉を語るようになった人である。天の言葉は語ったが、彼には神秘もなければ、奇蹟もなかった。いわば、地の声をもって天の言葉を語った人なのである。
(『論語物語』下村湖人 講談社)


安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 代表理事


二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)
株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。
2001年株式会社トランスエージェントを設立。
2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。
「仁の循環・合一の実現」を理念に、マネジメント・イノベーション支援事業、
交渉力・協働力向上支援事業、BtoB営業・マーケティング支援事業を展開している。


主な論文・著書
「中国進出日系企業の産業財市場における顧客インターフェイスの研究」
Strategy for Managing Customer Interface taken by Japanese B to B Marketers in China
~Effective Business Activities in Developing Customer-Supplier Relationship in China~
(立教大学大学院MBAプログラム2011年度優秀論文賞受賞)


『心理戦に負けない極意(共著)』(PHP研究所 2009)
『中国に入っては中国式交渉術に従え!(共著)』(日刊工業新聞社 2013)
『交渉学ノススメ(監修)』(生産性出版 2017)
『論語営業のすすめ』 (生産性出版 2021)
『论语和营业人』 (今日出版 2025)


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