プロフェッショナルに聞くVol.9
プロフェッショナルに聞くvol.9
トランスエージェント 伊東大輔
Q.SFAを導入する企業が増えている一方で、うまく活用できていない状況が往々にして起こっているとよく耳にします。このような利用者が陥っている現象はどのようなことが挙げられますか。
私は顧客マスタ上に「同じ法人が重複登録されている」という現象が、日常茶飯事のように起こっているのではないかと考えています。
このような現象に遭遇した場合、ただどちらかを削除するだけなら良いのですが、法人の情報が過去の案件や接触履歴などに紐づいていると、それも含めて付け替えが必要となるので、その作業をする方にとって非常にストレスとなります。
利用者の立場からすると、法人名の重複を0にすることが理想ではあります。しかしながら、私は法人の重複登録を0にすることが非常に難しいと考えています。
Q.法人の重複登録を0にすることは難しいとのことですが、その理由について教えてください。
人がデータを入力するからには必ずミスが発生するからです。
もちろん理論上は、国税庁法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)より公開された法人番号を一意の識別値として扱い、運用の中で工夫ができたり、RPAなどで大部分を自動化ができたりもします。しかし、重複登録が0になることはないでしょう。
Q.どのような状況であれば、重複登録の0を実現できると考えますか。
もし、将来的に「紙での名刺が廃止され、全て何かしらの電子化した手段で名刺交換をする」という状況になったら、重複登録0を実現できるかもしれません。しかしながら、昨今では、オンライン面談などが増え電子名刺交換が盛んになってきたとはいえ、現時点ではそのような状況にはなっておりません。
一方で、このような話をすると手段が目的化してしまいます。あくまでもSFAは、データを綺麗に管理することが目的ではなく、データを活用して顧客開拓・深耕開拓活動に役立てることが目的であるという視点に立ち、法人の重複登録防止に関してもある程度割り切って、運用しながら最適解を見つけていくことが肝要です。
Q.重複登録0は難しいとの見解ですが、システムを使って法人登録する際に、できるだけ重複登録を回避する方法があれば教えてください。
まず、法人名とは別に法人種類を管理することです。法人名と一緒に法人種類を入力させる(例:「〇〇株式会社」と法人種類まで入力させることを指す)ことが重複データを生み出す大きな原因の一つです。そのため、法人名の入力欄には法人種類を記入させず、法人種類の入力は別の選択肢を設けて行いましょう。Wikipediaにて調べると、日本には法人の種類が非常に多いことがわかります。
Q.法人名とは別に法人種類を管理する方法で登録する際に、気を付けるべき点などを教えてください。
顧客開拓につなげるという目的を忘れず、ある程度割り切ることが重要なので、Wikipediaに掲載された全ての選択肢を用意する必要は無く、自社のターゲットがどこなのかということを意識しながら選択肢を設定するのが良いでしょう。
例としては、株式会社、合同会社、有限会社、独立行政法人、特定非営利活動法人、一般社団法人、社会福祉法人、信用金庫、商工会、その他
このようなものが上げられるでしょう
もし、病院などの医療業界をターゲットにしている場合は、医療法人を選択肢に加え、それ以外は“その他”として扱うと良いでしょう。この場合の選択肢内における「その他」は、自社のターゲット外と言った意味合いで扱うことで、より顧客開拓につなげるという目的を意識した顧客マスタ管理につながるでしょう。また法人種類の選択肢は、多くても10個くらいにすることが望ましいです。また日本では“〇〇株式会社”も、“株式会社□□”も存在するように、法人種類の位置が会社によって違います。そこで、法人種類の位置が前か後かの選択肢を用意しても良いかもしれません。
Q.その他、重複を生まないためにどのような仕組みを取り入れるべきか教えてください。
次に重複を生みやすいのは、全角半角文字や前後空白です。前後空白は、ウェブサイトなどから法人名をコピー・ペーストした際によく発生します。そのため、ここを機械的に変換する仕組みを入れることで重複防止につながります。
Q.SFAの運用にあたって、最も重要なことは何だと考えますか。
SFAを使用する目的を忘れず、利用者の負担をかけずに重複原因を防ぐ方法を運用しながら見つけていくことです。
最初から完璧を求めるのではなく、運用しながら最適解を探すことが肝要です。一方で、重複を防止する処理を組み込めないSFAに関しては、個人的にはあまりお勧めしません。そのような仕組みのSFAは、法人名の件に限らず柔軟性に欠けるため、運用をするにつれ課題が明確になればなるほど、「やりたいこと」と「システムで出来ること」のギャップが起きてしまい、結局、営業人ないしは営業組織を強くすることにつながらないからです。