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DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の戦略的産業財マーケティング

アジア太平洋マーケティング研究所 笠原英一 教授

Q.笠原先生は従来より、コンサルティング業務を B2B市場中心に展開されていると伺っています。

はい、特に B2B 限定というわけではないのですが。産業財市場の研究をしている関係で、B2B のお客様との接点が少なくありません。結果として B2B 企業の皆様よりご相談や引き合いが多くなり、結果として、お仕事の割合も多くなるということでしょうか。

Q.マーケティングに関して新しい著書をまた出版されました。どのようなところが特徴でしょうか。

『戦略的産業財マーケティング』という本ですが、 B2B の領域で戦略的にアプローチするための大事な考え方及び具体的なアプローチを記載させていただきました。

いくつかお話ししますと、B2B 市場における最近の傾向として、顧客から営業に求められる内容が大きく変わっているということが挙げられます。
前から言われていたことですが、よりコンサルティング営業や価値共創営業が求められるようにな っています。B2B 市場の最先端で何がおきているかを押さえたうえで、その動きに主体的に対応していくために必要な視点や考え方を体系化して整理しているところがポイントです。

Q.最近の傾向というのはどのようなものなのでしょうか。

まず、AI、IOT、ビッグデータ、ロボティックス、 VR、SML などのテクノロジーで事業のプロセスを大きく変えることが可能になっていることです。それと合わせてデータが収益源になっていること、次に、革新的な市場で、かつ戦略的に重要なテーマに関しては、顧客は営業担当に、販売担当ではなく、問題解決パートナーとして期待するようになっていることなどが顕著です。デジタルに関して言うと大きく5つの領域が変化していくと思われます。

Q.5 つの領域とは?

顧客、競合、データ、研究開発、そして顧客価値です。顧客がデジタルチャネルと直結する。競合は、プラ ットフォームを活用して異分野からも参入する、データが資産になる。

研究開発は、デジタル技術を活用して MVP で短期に安価で行え る。Minimum Viable Prototypes のことですが、生存に必要不可欠な要素を盛り込んだプロトタイプという意味です。
顧客価値に関しては、製品ではなく、顧客の業務全体を丸ごとソリューションとして提供する。このような5つの領域がデジタル化と絡んで大きく変化しています。

Q.たしかにそうですね。例えばデータに関して、もう少し詳しく教えてください。

データにはいろいろなものがあります。質的データ、量的データ、量的データについてもビッグデータ、スモールデータ、こうしたデータを分析して、顧客のインサイトを洞察したり、意思決定プロセスを把握したり、その前段の情報処理を明確することができます。データを市場で売買できるのです。

Q.データは、売上予測に使えますよね。

それだけではありません。商品開発にも使えます。サービス業としても展開が可能になります。例えばロールスロイスの航空機向けエンジン事業は、エンジンという製品を販売するだけではなくて、現在飛行している航空機のエンジンによって気流、気圧等いろいろなデータが入手できます。

それを基にもっとも快適で安全で省エネが見込まれる飛行ルートの提言を、エアバスという OEM ではなく、ブリティッシュエアというエアライン産業に販売できます。顧客市場も提供する製品も従来のものとは異なっています。

大げさに言うと事業領域を変えることになります。

Q.それは提供する製品も市場も変わっていく可能性があるわけですね。

その通りです。われわれのパートナーでサンフランシスコ出身のコンサルタントは、B2B の製品でクラウドにつながっていないものは製品ではないと言い切っています。AI につながらないビジネスは、ドメインから切り離せくらいの考え方も必要かと思います。

Q.NTT さんに対してどういう印象をお持ちですか。

社会インフラを担う企業としてとても信頼できる企業だと思います。欲を言えば、もっとどん欲でもよいかと。

Q.どういうことですか。

海外でお仕事していますと、パフォーマンスに対するコミットメント感が部門のトップはとても強いですね。トリプル 10%(営業利益率、資本利益率、売上高年率成長率)を達成することを常に意識しています。
実際この3つは最低ラインなんです。日本の企業は収益性が悪すぎます。規模は大きいにもかかわらず利益がついてきていない。

Q.それは大変ですよね。

確かに、収益性を含めて3つの 10%を達成することは簡単ではありません。特に売り上げ成長は。でも、現状に甘んじることなく、環境変化をしっかり押さえて、選択と集中、競争優位、ユニークな顧客価値を常に意識して、実践していくことによって不可能なことではなくなると思います。

本プログラムでは、そういう目的を達成するために必要不可欠なアプローチをご共有します。

本日はどうもありがとうございました。


笠原英一 教授 プロフィール トランスエージェントパートナー

アジア太平洋マーケティング研究所(APRIM)所長、博士(Ph.D. in International Studies)、MIM (Master of International Management)、早稲田大学大学院後期博士課程国際関係学専攻(国際経 営研究)修了
Thunderbird School of Global Management(米 国)修 了、Wharton School(CPD)修 了、芝浦工業大学大学院客員研究員、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授
専門は、産業財マーケティング、経営戦略、消費者行動論、マーケティング・マネジメント、マー ケティング・リサーチ、国際マーケティング、ベンチャー・マネジメントなど。

著書・論文としては、『強い会社が実行している経営戦略の教科書』2013 KADOKAWA、『ベンチャー企業の財務戦略と IR活動の効果」(日本ベンチャー学会編)2000 年、「中小企業の持続的成長と技術開発戦略(研究術計画学会)、『ベンチャー創造のダイナミクス』共著 2000 年(13 年度中小企業奨励本賞受賞)文眞堂、『成功した企業家が毎日考えていること』ペンシルバニア大学ウォートン・スクール教授著〈訳〉笠原英一 2004 年、中経出版、『強い会社が実行している経営戦略の教科書』2014 年中経出版、『現代マーケティングの革新と課題』共著、2005 年東海大学出版会、「産業財マーケティング・マネジメント理論編」「産業財マーケティング・マネジメントケース編」(白桃書房 Hutt&Speh 著、笠原英一解説・翻訳 2011 年、「中国・台湾の新興国企業との競争時代における日本の製造業のあり方に関して-あらたな競争戦略の枠組みを求めて-」、立教 DBA ジャーナル、第一巻 19-26、「持続可能性の実現に向けたマーケティングの役割と今後の方向性~メンタル・モデルの根源としての主観的幸福感(emotional well-being)の視点から~」、立教 DBA ジ ャーナル第三巻 27-41 他。

株式会社富士総合研究所(現みずほ総合研究所)マーケティング戦略笠原クラスターにてコンサルティングを実施。その後、デル株式会社中小企業優秀賞審査委員長、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授を歴任。現在、研究・教育活動と並行して、一部上場企業をはじめ国内外のベンチャー、成長中堅企業のクライアントに対して、研究開発、事業開発からマーケティング、販売、財務(IPO、M&A)、企業コミュニケーション(CI、IR)、エグゼクティブ・トレーニング等に関する機能横断的な問題解決支援を行なうコンサルティングを推進中。


著書・翻訳

      経営戦略        産業財マーケティング       DX          マネジメント

本誌掲載の写真 ・ 記事 ・ 図版を無断で転写 ・ 複写することを禁じます。

DX経営戦略・BtoBマーケティング関連
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