営業人.com代表 安藤 雅旺

営業は素晴らしい仕事である

私が考える5つの「営業の魅力」

これまで30年近く私は営業畑をずっと歩んできました。こうして私が営業の仕事を続けてこられたのは、「営業は素晴らしい仕事である」と心の底から実感しているからです。

営業という仕事につらさを感じていらっしゃる方には、意外な言葉かもしれません。ただ、私がこれから述べる「営業の魅力」を読んでいただければ、納得していただけるのではないでしょうか。

私が感じる「営業の魅力」とは、次の5つです。

それぞれについて、より詳しく見ていくことにしましょう。

①実力で勝負ができる

営業の仕事は実力主義です。肩書も昨年の成績も関係ありません。「今」が勝負です。20年目のベテランも手を抜けば、1年目の新人に抜かされてしまうこともあります。

しかし、これは裏を返せば、いつだってやり直しがきく世界ともいえます。1年1年が勝負なのですから、昨年が不調でも努力すれば今年は復活することができる可能性があるのです。

その時々でどれだけ自分が努力したかが、直接、結果となって現れるのが営業の仕事です。その意味で、とても気持ちのよい仕事だといえます。また、実力さえつけられれば、ベテラン・若手に関係なく評価されることも、営業の魅力ではないでしょうか。

②世界を外へ外へと拡げていける

営業の仕事は、つねに相手がいます。お客様とセットです。そのため、オフィスの中にこもっていては仕事になりません。外に出て、たくさんの人々と接していくことが必要です。

これは非常にすばらしい経験になります。なぜなら、自分以外のさまざまな価値観に触れることができるからです。そして、それぞれのお客様のお役に立つためにはどのようなサービスを提供していけばよいのかを考える中で、自分も変化・成長していくことができます。

内へ内へとこもってしまうと、閉塞感が増すばかりです。現状打破がますます難しくなっていきます。一方、営業という仕事は、必然的に外へと出ていくことができます。そこから、自分自身の可能性を拡げる第一歩を踏み出すことができるのです。

③衆知を結集して非凡な事を成し遂げられる

営業では、プロジェクトやチームで動くことがたびたびあります。そこでは、個人では到底達成できないような、規模の大きな仕事に携わることができます。そして、たとえ自分自身は凡人であっても、「非凡なこと」を成し遂げられるチャンスがあります。

チームで動く営業の場合には、そうした面白さがあります。

④人から多くを学べる

先述の通り、営業はお客様と常にセットです。自分ひとりでは成り立ちません。

そのため、常に出会いがあります。新規開拓がメインの営業であれば、それこそ、毎日毎日、「生まれてはじめて会う人」が登場することになるでしょう。

人との出会いは、人生の財産です。なぜなら、その人たちから多くのことを学ぶことができるからです。さらに、その人たちを介して、新しい出会いもあるかもしれません。

営業という仕事は、そうした出会いの宝庫です。

仕事を通じて、自分自身の人間の幅を拡げていくことができ、人脈という財産も増やしていくことができる。そんなところにも、私は営業という仕事に強い魅力を感じます。

⑤可能性をつなぎ新たな価値創造の機会を生み出すことができる

営業の仕事は、お客様に商品やサービスをご提供することです。そして、それらの商品やサービスは、それぞれのお客様にとって利益になる形でお届けできなければ意味がありません。お客様のお役に立つことこそが、営業の仕事の根幹なのです。

そして、こうした商品やサービスは、お客様の中に新しい変化を起こすだけの力を持っています。お客様が、その営業担当者に出会わなければ起こらなかった変化を起こし得るのです。

言ってみれば、営業の仕事とは、価値創造のコーディネートです。お客様とさまざまな新しい可能性をつなげる役割を担っているのです。

「お役立ちの心」こそが、営業の本質である

私がこうした「営業の魅力」に最初に気がついたのは、社会人になって2年目のときです。

私は、大学卒業後、人材開発・研修プログラムを販売する経営コンサルタント会社に入社しました。そこが、私の営業人生のスタートです。

入社早々の研修期間に命じられたのは、企業診断・企業研修の営業です。3、4人でグループを組み、営業を行います。メンバー全員の業績の総和がグループの目標に達すれば、正式な配属先が決まることになっていました。

私が担当したのは東京の有楽町地区でした。たくさんのビルが立ち並ぶこのオフィス街を、それこそ飛び込みで1日100件まわる勢いで営業をしました。とにかく数をこなし、そこで数字を上げていくというアプローチです。

たくさんの会社がひしめく東京という立地もあって、私のこの数を稼ぐアプローチは大成功し、見事トップの成績で研修を終了することができました。

その後、私は晴れて正式に名古屋営業所に配属されました。入社して6ヶ月目のことです。ところが、ここで私は大きくつまずいてしまいます。

配属された名古屋は、東京と大きく状況が異なっていました。企業の本社数が少なく、スタッフ数にしても東京よりはるかに小規模で東京にいたときのように1日に100件まわろうとしても、そもそもそれだけの会社数がないのです。「数をひたすらこなす」という、私のこれまでのアプローチは、名古屋ではまったく通用しませんでした。

その結果、名古屋に移ってからの私は、ほとんど契約をとることができず、成績は下降線をたどる一方でした。研修はトップの成績で終了したにもかかわらず、入社1年目の成績はビリから2番目と惨憺たるものでした。

「名古屋にいるかぎり成績を上げることは無理だ……」

1年目が終わる頃、私は腐りかけていました。

しかし、そんな私を粘り強くサポートしてくれた人がいました。当時の私の上司です。

私が名古屋に移って以来、さまざまな面で指導をしてくださいました。とりわけ私が数字が出せなくなってから、何度もアドバイスしてくださったのが、次の言葉でした。

「人間には『お役立ちの元素』がある。それを意識し、大きくしていき、お客様にぶつければいいのだよ」

つまり、営業をする際には、つねに「お客様のお役に立つ」ということを意識しなさい、と言うのです。

さらに、こんなアドバイスもいただきました。

「お客様を『取引』の相手として見るのではなく、共通の目標に向かって一緒に『取り組む』相手として関係を築いていきなさい」

当時の私の成績は、これ以上は下がることはないというくらいにひどいものでした。そこで、ワラにもすがる思いで、上司のこの言葉を実践してみることにしたのです。

まず行なったのが、自分が販売している商品をどう使っていただければ、お客様のお役に立てるのかを意識することです。

そのためには、それぞれのお客様に対して、念入りなリサーチが必要になりました。「どんな仕事をしているのか」「どんな課題を抱えているのか」等をしっかり把握することに努めるようになりました。

ここから私の営業スタイルは変化します。

ひたすら数をこなすアプローチではなく、出会ったお客様それぞれと深い関係を築くことに主眼を置くようになったのです。面談をさせていただく相手も、担当の方だけでなく、トップの方や各部門の責任者の方、現場の方など、複数の方々にお願いすることが多くなりました。ときには、その会社の営業担当者に1日同行させていただくということもしました。

そうしていると、次第にその会社の「現状」や「ニーズ」が見えてくるようになりました。そこから、既存の商品をそのまま販売するのではなく、「こう活用していただくと効果があるのではないでしょうか」といった提案営業をさせていただく機会も増加し、一社から年間で1000万円以上の注文もいただけるようになりました。

そのあたりから、私の成績も次第に上昇し、最終的に、2年目は同期でトップ、販売基準達成率では全社で5位という成績を上げられるまでになっていきました。

1年目の終わりの腐った私はいなくなりました。営業という仕事を心の底から楽しめるようになったのです。

この経験から学んだことは、「お客様への『お役立ちの心』を持って行動すれば、自然と数字もついてくるのだ」ということです。

それが、私の営業の原点となりました。当時お世話になった上司はその後その会社の社長に就任されました。いまでも心から感謝しています。

当時から27年間、その姿勢からはずれないよう心がけ仕事をしてきたつもりです。そして、そうした営業を続けていく中で、冒頭で挙げた「営業の魅力」に気づいていったのです。


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