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プロフェッショナルに聞く

プロフェッショナルに聞くvol.4 株式会社ジェック CPM経営変革推進専門部長 岡 誠二氏

プロフェッショナルに聞くvol.4

株式会社ジェック CPM経営変革推進専門部長 岡 誠二氏

Q.営業人としてのキャリアについて。

新卒で株式会社ジェックに入社しました。ジェックは教育研修やコンサルティングをおこなっている会社になります。そこで営業28年になります。入社当日から長い低迷期があり、私は売れない「泳魚マン」でした。「泳魚マン」というのは市場をふらふら泳ぎ、さまよい、案件が見つかればすぐにパクッと食らいつく場当たり的で自己本位の営業のことを指します。お客様のことは考えずとにかく売れればよいという発想です。私は長年この発想を完全に捨てさることができず、苦労しました。

しかしようやくここ数年でこの「泳魚マン」から脱却することができ、高業績を上げられるようになりました。数年前に社内でトップセールスとなり、その状態を現在も継続しています。通常年間1億円売り上げればトップセールスといわれる中、年間2億6千万円の売上を達成することができました。また会社の56年の歴史の中で営業のギネスとなる数字も打ち立てることができました。

ただこれは私一人の力ではなく「多くの優れた仲間との協働の結果」であると思い心から感謝しています。

Q.営業人として大変優れた業績を上げ続けていらっしゃるのですが、成功の要因となる考え方や行動習慣などについて教えていただけますか?

常に意識を集中しているのは「お役立ち」です。お客様に喜ばれて必要とされているのか? そこしか考えていないです。あとは自分が大切にしているのは自分の使命、ミッションです。人は必ず「生きたい」「よくなりたい」「幸せになりたい」という3つの気持ちがあります。この部分に真剣に向き合っている人のお役に立ちたい、お手伝いがしたいというのが私の原動力であり使命です。また私のパーソナルコンセプトとして「へその尾になる」というものがあります。へその尾というのは人間にとって非常に重要な部分です。母と子をつなぐ生命の架け橋であり、人間のエネルギーの源でもあります。「自身のエネルギーを人と人をつなぐお役立ちに使いたい」と常に意識しています。

Q.営業人として大切にしている考え方について、岡さんと同じような考え方を持つ方が会社には他にもたくさんいらっしゃると思います。しかし現実は岡さんのように数字が上がる人とそうでない人が存在します。その違いは何だと思いますか?

「どれだけ仕事を楽しめているか」の違いではないでしょうか。私は現在仕事が楽しくて仕方がないという状況です。どれだけ仕事をしていても全く苦になりません。提案書ひとつ作成している時でも、「これでお客様がどう喜んでくださるか」ということを考えるとワクワクします。趣味と同じで楽しくて仕方がないということです。ただそこにたどり着くまでには紆余曲折がありました。先程述べました「泳魚マン」時代はよく仕事をサボっていたこともありました。

Q.岡さんが経験された営業としての長い低迷期について教えてください。

これまでの営業経験の中でさまざまな苦しみに遭遇して低迷しましたが、印象に残っているのは次の3つの苦しみになります。1つ目の苦しみは「極悪スタンスの苦しみ」、2つ目が「問題解決・成果創出の苦しみ」、3つ目が「仕事量5倍克服の苦しみ」です。

1つ目の「極悪スタンスの苦しみ」ですが、私は入社当初は「とにかくどんな世界でもいいからトップになりたい。トップになれるのであれば表の世界でも裏の世界でも構わない。手段など関係ない。とにかく自分がトップになることがすべてだ」と思っていました。その時のベースの考え方は「他人は自分の成長のためのステップ(踏み石)にすぎない」というものでした。このようなスタンスは当然ですがお客様にも社内の人にもすぐに伝わってしまいます。

「岡は口ではいろいろうまいことを言っていても所詮は自分のことしか考えていない奴だ」と見抜かれ皆去っていってしまいます。私は「他人は自身の成長のために利用するのみ」「顧客には売って終わり」いうスタンスを根強く持っていたため全く営業として通用しませんでした。数年そうした成績低迷が続き、ついには「トレーニングセンター」配属となりました。この部署は社内でも問題を抱えている営業がもう一度自分を見つめ直して、再起を目指すことを目的とした「営業再生」の部署でしたが、退職する者も多く存在しました。トレーニングセンターに配属が言い渡された際に私は「もうこれでおわりかな」と正直思いました。最初に大きく自分が追い詰められた瞬間でした。しかし幸いなことにそこで多くの方にサポートやご指導をいただき、苦心の末、営業としての基本スタンスを「極悪スタンス」から「お客様へのお役立ちスタンス」に切り替えることができるようになりました。今でこそこうして口で言うのは簡単ですが、当時はもがき苦しみ、悪戦苦闘の日々でした。

苦しみの末なんとかそれまで自身が長年持ち続けていた基本的な考え方を変革するに至りました。そこで得た考え方は「人のお役に立つことこそが自分の成長につながる」という信念でした。この新たな信念はそれまでの自分を変える大きな力となりました。

2つ目が「問題解決・成果創出の苦しみ」です。お役に立ちたいという気持ちをベースにすることができても、研修という商品をただひたすら単品で売ることを繰り返していれば、価格競争に巻き込まれやがて取引は消滅してしまいます。苦しんだ末、「研修を売るのではなく、問題解決・成果創出を売っているのだ」ということに気がつきこの点に集中することにしました。そこからはお客様の想いの理解や現場の理解に務め、トップの想いと現場のギャップを掴むために現場にヒアリングに行くことをひたすら繰り返しました。現場ヒアリングは当時いっさいお金をいただきませんでした。「社内からは数字も上がらないのに何をやっているんだ」と非難されることもありました。

しかし信念を持って取り組み続けた結果、お客様が抱える真の問題についての理解ができ、経営トップに対しても、トップから見えていない現状をしっかりと踏まえた提案ができるようになりました。このことにより経営トップの相談役になることができ、売上も飛躍的に上がりました。ここではさまざまな経営者の方から学べました。「このお客様のお役に立ちたい」という気持ちが自然と湧き上がるようになり、そのためにも現場実態をしっかり把握しないと本当の意味での問題解決・成果創出につながるお役立ちはできないと思い、ひたすら現場を回り顧客理解に務めました。

3つ目が「仕事量5倍克服の苦しみ」です。先程お伝えした2つの苦しみを克服した段階から今までにない大型のお申し込みや、うれしい悲鳴を上げるほどのお仕事をいただける状態となりました。それまでの年間売上の5倍近い受注をすることでさすがに仕事が回らなくなりました。この時は多くのお客様に託していただいている責任をなんとしても果たさなければならないという意識と5倍の仕事量で流石に倒れそうになりました。売上は上がってもしっかりとお役立ちを果たすことで結果を出していかなければならない、もはや自分一人の営業力ではなんともならないことを痛感しました。それまでも当然社内のメンバーと協力して進めていたのですが、もはや個々の連携では追いつかず、大きなプロジェクトチームをつくり運営する力が求められるようになりました、そこでコンサルタント班、スタッフ班、企画班、システム班という4つの班をつくり、22名が「チーム」として動けるための「お役立ちコンセプト」「行動指針」「コンサルタント憲章」等をつくり体制を構築しました。

毎月会議・勉強会を重ね参加メンバーが一人ひとりプロフェッショナルとして顧客に対応する体制を構築しました。自分ひとりではなにもできないことを痛感し、チーム力で対応する。皆が主体的に動く組織を皆で構築しプロジェクトは成功しました。ここでは皆と一緒に仕事をしている楽しみ、成長していく楽しみを経験させてもらいました。この段階ではもはや一人の営業人ではなく一つの共通目標、お役立ちの理念のもとに集まったメンバーで構成された情報活用型組織のマネージャーの役割に変わっていました。新入がこのプロジェクトを通して成長し成功した姿を見ることに大きな喜びを感じ、組織で仕事をすることの喜びに気がついた瞬間でもありました。

Q.これまで営業という仕事を長く続けてこられたコツは何ですか。

「毎日が楽しい!」ということが大きいですね。今は「営業をしている」という感覚ではありません。売ろうとしていません。お客様のところへ行ってお客様のお困りになっていることについて一緒になって考え、お客様のお役に立つために日々があります。お客様から必要とされ「本当に助かったよ、ありがとう」と言われたときはこの上なく嬉しいものです。営業の醍醐味だと思います。こうしたことを言ってくださったお客様の存在が私を支えてくれました。昔は売ろう売ろうという気持ちが先行し自己中心的になり、仕事も面白くないという日々もありましたが今はお蔭様で毎日が楽しくて仕方がない状況です。

若手の営業のメンバーにもよくアドバイスするのは「売ろう売ろうとするのではなく相手の悩みはなにかということに集中する」ことを伝えています。数字が出ないとあせりますよね。あせればあせるほど無意識でも顔に出るものです。それはお客様に伝わります。自分の数字のことだけを考えてあせって営業に来る人には相談したくないですよね。そうやって悪循環に陥ってしまうようです。だから苦しい時こそ一層お客様の悩みはなにか、お役に立てることはないかという点に意識を集中する必要があると思います。そうすればお客様は必ず口をひらいてくださいます。そこにお役に立てる可能性が見えてきます。とにかく若い人には「お役立ち意識に集中して仕事を楽しんでと伝えています。

Q.トップの数字を維持していらっしゃいますが、今後営業として目指しているのはどんなことですか。

「いつでもお客様から相談の声をかけていただける営業」をこれからも目指しつづけていきたいと思います。さらに今よりも大きな問題解決のお役に立ちたい、たとえばお客様の会社に対するお役立ちからお客様の業界全体のお役立ちに拡げたいなど、お役立ちのレベルを高めスケールを大きくしていきたいと思います。


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