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「華僑の商売理念」が教えてくれる営業マインド

営業人.com代表 安藤 雅旺

「華僑の商売理念」が教えてくれる営業マインド

中国国籍を保持しながら、海外に移住した人々を「華僑」といいます。彼らの中には、異国の地で成功し、莫大な富を築いた人も少なくありません。
華僑の人々の間で昔から言われている「商売理念」があります。これらの理念こそが、彼らに成功をもたらした原動力なのではないかと私は考えています。
具体的には次のような理念です。

(1)白手起家  「ゼロから事を起こす」
(2)四海為家  「世界中が自分の家」
(3)落地生根  「その土地にしっかり根をはる」
(4)入郷随俗  「郷に入れば郷に従え」
(5)衣錦還郷  「故郷に恩を返す」

いかがでしょうか。この理念は、日本の営業人にとっても大いに学ぶべきところがあるのではないでしょうか。
そこで、この理念を営業の仕事にどう応用していくのか、私なりの解釈をご紹介したいと思います。

(1)白手起家  「ゼロから事を起こす」
営業人の多くは会社に所属しています。そのため、起業家のようにゼロから起こすという意識は希薄かもしれません。
しかし、営業の仕事はつねに数字を上げていくことが求められます。お客様に購入していただかなければ結果はゼロ。まったく評価してもらえません。
その意味で、営業の仕事は、たとえ会社に属していても、「個人事業主」のようなものです。どうすれば利益を得られるのかを考え、行動する。営業人にはそうしたスタンスがつねに求められるのです。
それがまさに「白手起家(ゼロから事を起こす)」。この気概をもって仕事を進めていくことが営業人にとっては非常に大事だと私は考えています。

(2)四海為家  「世界中が自分の家」
これは、1つの場所にこだわらず、チャンスがあればどこにでも行くという意味です。そうした「柔軟性」も、営業の仕事においては不可欠です。
商売のネタはどこに落ちているかわかりません。意外な業界に、あなたが売っている商品・サービスへのニーズが眠っているかもしれません。意外な場所に、商品・サービスの改善につながるヒントが隠れているかもしれません。
そうしたものをしっかりとつかんでいくためには、好奇心をもって、いろいろなことに興味をもち、いろいろなことにかかわっていくことが大切だと思います。

(3)落地生根  「その土地にしっかり根をはる」
(2)では、いろいろなことに関心をもつ大切さを述べましたが、それは、広く浅くを勧めているわけではありません。
視野はできるだけ広くもつべきです。それと同時に、自分が扱っている商品・サービスをしっかりと研究し、いまおつきあいのあるお客様の業界については徹底的に掘っていくという姿勢も忘れないことです。
たとえば医療システムを販売しているのだったら、医療の世界の常識についてはしっかりと理解しておく必要があります。そうでなければ、お客様に役立つ情報提供ができません。また、信頼関係もなかなか構築していくことができないでしょう。実際、できる営業人とは、それぞれに得意業界を持っているものです。
ちまたにはたくさんの営業テクニックが存在しています。しかし、営業の仕事も、最後の決め手は、人と人との信頼関係です。それは、テクニックだけではどうにもなりません。「この業界に根をはる」という覚悟を決め、とことんその業界に精通していく。それができてはじめて、テクニックも生きてくるのです。

(4)入郷随俗  「郷に入れば郷に従え」
お客さんと信頼関係を築いていくには、(3)で述べたように、その業界に精通していくことも大切ですが、また、その業界のルールに従うことも非常に重要です。
実際、ルールに従わなければ、その世界で仕事をしていくことができないケースもあります。たとえば、ある国では購買担当者に対して礼物を渡すのが一般的です。これは、その国の商習慣です。日本人の中には、「それはワイロでは?」と抵抗を覚える人もいるかもしれません。しかし、そんなことを言っていたら、その国で仕事をすることなどできないでしょう。まさに「入郷随俗(郷に入れば郷に従え)」。その業界で仕事をしていこうと思ったら、そのルールに従うのが大前提になるのです。そして、ルールに従ったほうが、確実に相手との信頼関係を築きやすくなります。
ルールに従うというのは、いってみればその世界に「適応」していくことです。営業の仕事においては、適応していく力もとても大切です。

(5)衣錦還郷  「故郷に恩を返す」
こうした気持ちをもつ人は、いまの日本では少なくなってしまっているように感じます。どこかみんな会社に対して「お客様気分」です。「してくれて当たり前」とか「こんな安い給料で働いてやっているんだ」と平気で口にする人をよく見かけます。
しかし、これは非常に勘違いした考え方です。あなたに支給されている机や名刺、パソコン、商談用のパンフレットなどを自分でそろえようと思ったらどれくらいのお金がかかると思いますか? それを会社はタダで与えてくれているのです。さらに、売り上げが立てられなくても、一定の給料も支払ってくれます。
これらはすべて、社員に対する会社の「投資」です。「いずれ利益を出してくれるだろう」と見込んでお金を出してくれているのです。だからこそ、会社に対して「利益」という恩返しをしなければいけないし、利益が出たら、応援してくれた上司や同僚に感謝しなければならない。
そうした気持ちをもつことは、自分の周囲にプラスの循環を生むきっかけになります。たとえば、感謝されれば、誰だって気持ちがいいものです。「これからもこの人を応援してあげよう」という気持ちになるものです。その結果、感謝をした人はいまよりもっとたくさんのバックアップを得て、もっともっとよい仕事ができるようになるのです。ネットワークも広がっていきます。
「衣錦還郷」。よい仕事の流れをつくるためにも、こうした発想は非常に重要です。


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