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これからの営業人・営業組織に求められること

依田 真門(まこと) 氏

依田さんのキャリアについて教えてください

大学を卒業後、商社に勤務し営業職としてスタートしました。仕事は海外インフラの開発、産業機械関係プラント輸出、海外プロジェクト担当などで、20年間勤務しました。15年目からの5年間は、アフリカのガーナに責任者として駐在しました。
その後独立して20年程研修講師をしています。特にマネージャー向けや海外赴任者向け、リーダーシップやキャリア開発関係のテーマを多く扱っています。最近は自身のストーリーを語る中で、受講者自ら強みに気づいていただく研修や実践知の伝承に関わる研修などにも力を入れています。

依田さんが担当された商社の営業業務について教えてください

私が日本で営業の仕事をしていたときは、お客様は海外(東南アジア、中国、ヨーロッパ、北米など)の相手でした。いかにして競争力のあるサプライヤーのグループをつくり、ファイナンスをつけて、幅広いステークホルダーを束ねるか。まさにプロデューサー型の営業でした。もっとも重要なことは「核心となる情報」を掴まえて迅速にしくみを構築することです。そこでは信頼関係構築が基本となります。頼ってもらえる関係をいかにつくるか。日本国内でグループを構築し、メーカーさんを本気にさせることが重要となります。「この人に賭けよう」と思ってもらい、しっかりと時間を割いてもらえる関係をつくること。そんなことに注力していました。
一方で海外での営業、アフリカのガーナでの仕事では、現地でおつきあいをするということが基本になります。現地の社長、役所であれば局長クラスの方々などがキーパーソンになります。狭い世界でもあり、顔は限られてきます。自然とつきあいはオフィスだけではなく、さまざまな社交の場でのつきあいとなります。信頼関係を構築するにはお互いに人格をさらけ出しておつきあいをする。日本国内だとどうしても役割的なおつきあいが多いのですが、海外ではこうした人対人の本音のつきあいが重要でした。お互いに一人の人間として信頼関係をもとにした仕事というのは大変やりがいがあったことを覚えています。

現在の日本の営業パーソンに対して持たれている問題意識についてお聞かせください

大きく2つあります。1点目が「顧客との関係性の希薄化」で2点目が「営業の実践知の伝承が殆どなされていないこと」です。

「顧客との関係の希薄化」について

営業のオンライン化が進み、直接顔を合わせることなく殆んどの業務が進められる時代は、どうしても顧客との関係構築が手薄になってきます。ビジネス上の役割として求められる機能的なつきあいを超えた人と人の信頼関係の構築は、そろそろ原点に戻って考え直さなければいけなくなってきていると思います。顧客が最終的にパートナーを選定する決め手として「営業パーソンの存在」が重要だからです。営業パーソンは本当に頼りになるのか、信頼できるのかという点、この人であればしっかりやってくれる、自分の利害だけでなく、顧客のことを親身になって考えて対応してくれると信じて頼ることができる存在かどうかが大きな鍵だと思います。リモート化や効率化は技術の進歩でどんどん進んで環境も変化しますが、本質的なものを忘れてはいけないと思います。

● 頼ってもらえる関係をつくる
顧客の立場から「自分たちの立場に立って考えてくれる」「人間として信頼できる」「人格レベルで信頼できる」といったレベルで捉えられる関係をつくることだと思います。単なる売り手と買い手の関係でなく「人間と人間」、その体温を感じ合える関係になることが大切です。どんな顧客も買い手としてただ買うというところに居るわけでなく、仕事、プライベート、人間関係などでさまざまな課題を抱えながら日々を送っているものです。ある意味皆孤独の中で様々な不安を持ちながら自身の任務をこなしている。こうした点まで意識を向けて包み込んでいくような姿勢が大切です。相手から「この人と仕事をすると前向きになれる、勇気が出る、自信が持てる、本来の自分の力が出せる、安心できる」といった感覚を持ってもらえるような関係の構築が、目指すべき姿であると思います。

● 求められる営業パーソンと顧客との関係について
神話学者のジョーゼフ・キャンベルが唱えた理論にヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)があります。彼は世界中の英雄物語を調査し、そこに共通するパターンがあることを発見しました。共通するパターンとは「ヒーローがさまざまな試練に合い、それらと格闘する中で成長し、困難を乗り越えていく。ヒーローの背後には必ずメンター的存在が居り、メンターはヒーローの背中を押し、自信をつけさせ、ヒーローの成長を下支えする。メンターとの関わりを通じてヒーローは自らの使命に目覚め、自身の力に気づき、偉大な事を成し遂げる」というものです。
私はこのメンターの役割が営業パーソンが目指すべき顧客との関係構築の姿だと考えています。営業がメンターの役を果たすことによって、ヒーローである顧客は本来の力を発揮し、問題解決を行ったり、あたらしい世界を切り拓いていくことが出来る。そんなパートナー的な図式を顧客に期待してもらえる関係づくりが、目指すべき姿です。
そのために必要な営業パーソンのスタンスは以下、 「配慮」「敬意」「責任」の3つです。

配慮 
ヒーローの成長のために何が必要か、目的を達成するためにどのようなサポートを必要としているか、ヒーローが苦しんでいる点はどこか。ヒーローの状況をよく観察し、タイムリーに支援の手を差し出せる心の準備がある。

敬意 
ヒーローならではの力・可能性を信じる。そのことを確信を持って伝えてあげる。相手が本領発揮できるように進んで心の支え役を引き受ける。

責任 
表面的な要求にこたえるだけでなく相手の心の声にこたえる。さまざまなメッセージを相手は出している。しっかりと相手を見て、観察して、心の声を聞き取る姿勢を持つ。そのことにより相手を知り、相手の真の要求・期待にこたえることができるようになる。それを自身の責任と考えること。

人間関係には色々な側面があります。日本国内のビジネスでは役割を超えた関係が容易に成立しにくい面はありますが、そうした枠を打ち破って関係性を深められるかどうかが分かれ目です。相手の可能性を信じ、心から応援していく姿勢が、最後には問われてくるのだと思います。

「営業の実践知の伝承が進んでいないこと」について

私が若かった頃は休憩時や飲み会の場など、先輩の語りを聞く機会はたくさんありました。今は本当にそうした場がなくなりつつあります。そのため先輩やベテランが培ってきた実践知が殆ど若手に伝承されないという「非常にもったいない」現象が起こっています。
私は商社入社後、15年間ずっと本社勤務でした。日々海外にいる駐在員とやりとりしていたのですが、彼らが海外から帰ってくると、打ち合わせの後、必ず飲みに行くわけです。そういう場での彼らの話は、勿論愚痴や自慢話が大部分ではありましたが、そこで様々な体験談や教訓を私は聞くことが出来たのでした。この経験は自分が駐在した時に非常に役立った訳です。本社からの見え方と外からの見え方の違いを事前に学んでおくことができたことは、自分がその後海外駐在し現地と本社の板挟みになって摩擦を解消したり、合意を作っていった際に大いに役立ちました。先人の体験談や教訓が自分自身が実践する際に参照できる知識になっていたのです。自分の中に形成された「知識アーカイブ」の参照によって、問題解決の際に状況は同じでなくても事態の推移を予測しやすくなり、仮説が立てやすくなったのです。技術が進み、見た目の作業は時代と共に変化しますが、この時の私自身の例のように、時代を超えて役立つ知識は大量にあります。というか、多くの事は繰り返されているのです。仕事の場面場面で、人は多くの場合自身の「知識アーカイブ」を検索しながら物事に対処しています。つまり「知識アーカイブ」の質を高め、量を増やすことが、実践的に重要となる訳です。
このことを進める為に先人の培った経験談、教訓などの実践知の共有は非常に重要です。営業現場には豊富な資源、宝がまだたくさん眠っている状況にあるのではないかと、私は思っています。


依田真門(まこと) 氏 プロフィール 

早稲田大学理工学部(学士)
立教大学大学院 異文化コミュニケーション研究科(修士)卒業。 
20年の商社勤務の後独立。製鐵機械、金属加工設備などのプラント輸出に携わり、アジアの国々でライン立ち上げに伴う技術伝承の現場に、若い頃から数多く立ち会う。 出身が技術畑である事や、実践的なコミュニケーションに関心があった事から“伝承”の問題を理論と実践の両面で追及してきた。研修では独自の方法論で受講生の学習と気づきを促す。
現在、株式会社トランスエージェント講師をつとめる。

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中国戦略、中国プラットフォーマー関連
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株式会社トランスエージェント担当 安藤まで

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