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営業力強化 パーソナルスキル

Vol.31 伝える力の基本

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業パーソンを対象としています。時代とともに営業のやり方は変化しますが、営業の本質である「量×質」という成功法則は不変です。ここでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えします。

前回は「コミュニケーションスキルの全体像」についてお伝えしましたが、今回は「伝える力」をテーマにお伝えします。
営業活動では、顧客をはじめとしたステークホルダーに対して「伝えること」が常に発生します。しかし、営業パーソンが「伝えたつもり」になっていても、実際には相手に意図が正確に伝わっていないことが多くあります。本編では、「伝える力の基本」を整理し、営業パーソンがどのように相手に伝わる話し方をすれば良いのかについて考えます。

「伝える力」はJINメソッドの各プロセスに深く関わる
営業活動において「伝える力」は不可欠であり、JINメソッドの各プロセスにも深く関わります。
※JINメソッドの解説については、こちらをご覧ください▼
https://eigyojin.com/2024/08/20/personal-skill-026/

「己を知り相手を知る」 → 己を相手に知ってもらうために伝える
己を相手に知ってもらうためには、まず明確に言語化をして自分の言葉で伝えられるようになることが不可欠です。その対象は、自社の理念や価値観から商品・サービスにまで広がります。単に自社の製品やサービスを正しく理解してもらうだけでなく、それらを通じて、自社や営業パーソン自身に対する顧客からの信頼を得るための第一歩につなげます。

• 巻き込む → 顧客の課題解決支援のシナリオを伝える
巻き込む段階では、顧客があるべき姿を実現するために、自社を特定分野のパートナーとして認め、共通の目標を築くことが重要です。多くのケースでは、ヒアリングや提案を経て、顧客自身も課題の重要性を理解しているものの、「実行には負担が大きい」と感じ、なかなか動き出せないことがあります。そこで営業パーソンは、顧客が主体的に行動できるよう、納得感のあるストーリーを用いて「今動くべき理由」を伝え、背中を押す役割を担う必要があります。

• 動かす → プロジェクトを推進するために伝える
営業パーソンは、社内外の関係者を動かすために、背景を明確に伝えつつ、相手の状況に沿った説明を心掛けることが重要です。例えば、顧客の社内調整で説明を求められる場面では、相手の状況を把握し、必要とする情報を的確に伝えることで、プロジェクトのスムーズな進行をサポートできます。
また、自社の関係者に対しても、プロジェクトの目的や自社の役割を整理し、それぞれの立場に応じた情報共有を行うことが求められます。営業パーソンが「誰に・何を・どのように伝えるか」を意識し、適切なコミュニケーションを取ることで、プロジェクトの推進力を高め、円滑な実行へとつなげることができます。

「伝える力」は単に情報を届けるだけではなく、相手を納得させ、行動を促すスキルです。そのためには、ロゴス(論理)、パトス(感情)、エトス(信頼) の3つの要素が不可欠です。

• ロゴス(Logos)=論理的に伝える
相手に納得感を持ってもらうためには、話の構造を整理し、論理的に伝えることが不可欠です。情報が散乱していたり、順序がバラバラだったりすると、相手は話の要点を掴みづらくなります。そのため、結論→根拠→補足説明の流れを意識して整理し、実際に伝える際もこの順序で話すことが重要です。
特に、先に結論を伝えることで、相手は「何を伝えたいのか」を素早く理解でき、スムーズなコミュニケーションにつながります。 その後に根拠や補足を加えることで納得感が増し、より伝わりやすい説明ができます。

パトス(Pathos)=感情を込めて伝える
どれほど論理的に整理されていても、相手の心に響かなければ、受注の可能性を高めることができません。
熱意や共感を持って伝えることで、印象に残る伝え方ができ、受注に向けた行動を促すことができます。
そのためには、抑揚・声のトーン・ジェスチャーを活用し、言葉だけでは伝わらないニュアンスを補完することが重要です。
例えば、商談の場面では、
「この課題を解決できれば、御社の皆さんはもっと働きやすくなります!」
といったメッセージを、抑揚をつけながら伝えることで、相手にワクワク感を持たせ、行動を後押し できます。

記憶に残るキャッチフレーズの活用
さらに、相手の記憶に残すための手法 として「キャッチフレーズ」を活用するのも有効です。
例えば、
「営業人材の育成を考える際には、まずは弊社にご相談ください。」
と伝えることで、営業研修の検討段階になった際に、自社を想起してもらうことができます。

記憶に残る仕掛けを意図的に作ることで、その後の商談や契約につながる可能性を高めることができます。

エトス(Ethos)=信頼を得る
営業パーソンがどれだけ論理的に話し、感情を込めて伝えても、そもそもその人自身が信頼できなければ、顧客には響きません。 伝え方のスキルを磨くだけでなく、「そもそも何故自分はこの仕事をしているのか?」と自問し、自らの軸を固め、それを行動で示すことが重要です。
信頼は言葉だけで築けない
信頼は、言葉だけでなく、日々の行動の積み重ねによって形成されます。たとえば、「お客様の成功に貢献したい」と語りながらも、自社の利益ばかりを優先する営業パーソンの言葉は軽くなります。逆に、「この人は一貫して顧客の立場で考えてくれる」と思われるような行動が伴ってこそ、本当の信頼が生まれます。
若手営業パーソンのための「軸」の作り方
「信頼を得るには軸が必要」と言われても、「まだ自分の軸がわからない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、最初から明確な軸を持つ必要はありません。実際に筆者自身も若い頃は軸が定まらず、ぶれることが多くありました。
自分の軸は、お客様との関わりや営業経験を通じて少しずつ磨かれていくものです。「顧客の役に立ちたい」「顧客の課題を解決したい」といったシンプルな思いが、その種になります。それを日々の営業活動の中で意識し、「自分はこの仕事を通じて何を実現したいのか?」を考え続けることが、自分の軸を明確にする第一歩です。

「伝える力」は実践する中で初めてその難しさに気づきます。筆者自身の失敗経験から、どのように改善できるかを考えます。

① 相手の立場や関心を考慮していなかった
失敗談
研修企画前の顧客に対して、アイスブレイクの手法をはじめとした研修運営の細かい部分を説明してしまい、商談が進まなかった。今考えると、顧客が知りたかったのは、「この研修がどんな価値を提供するのか?」だった。
改善策:
顧客の立場や状況を把握し、「相手が知りたいことを話す」 ことを意識する。

② 論理的な構成が整理されていなかった
失敗談:
上司同席の商談で自社PRを行った際、会社紹介とサービス紹介に関して説明が行ったり来たりしてしまい、商談後のフィードバックで「何を伝えたいのか分かりづらい」と指摘された。
改善策:
「大項目 → 中項目 → 小項目」の順で話す ことを意識し、話の流れを一貫させる。

③ 相手のコミュニケーションタイプに合わせていなかった
失敗談:
筆者は比較的早口であるため、熟考するタイプの顧客にはペースが合わず、商談のリズムが崩れてしまった。
改善策:
相手の話すスピードや反応を見ながら、話し方のペースを調整する。

「伝える力」は、相手視点に立って、正確・簡潔・情熱的に伝えることが重要です。ロゴス・パトス・エトスのバランスを意識することで、より説得力のある伝え方ができます。今回の内容を参考に、まずは自分の「伝える力」を振り返り、改善につなげてみてください。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入所。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。

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