Vol.74 孫子で読む交渉学③ 窪田恭史


交渉とは、ズルいものでも怖いものでもありません。限られた資源を奪い合うのではなく、むしろ大きく育てていく創造的なスキルです。自分と交渉相手、社会とをつなぎゆたかにする、これからの時代の交渉学を知ってみませんか。この番組では、対談形式で身近な事例から交渉の真の価値を皆さまにお伝えしていきます。
孫子で読む交渉学③ 窪田恭史
今回も日本交渉協会常務理事、ナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史氏をお呼びして、「孫子で読む交渉学」をテーマにお話いただきました。
◎窪田恭史氏のご経歴
日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事
ナカノ株式会社 代表取締役
日本古着リサイクル輸出組合 理事長
表情分析、FACS認定コーダー
日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター
早稲田大学政治経済学部卒
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)におけるコンサルティングおよび研修講師業務を経て、衣類のリサイクルを90年手がけるナカノ株式会社に入社。2024年より代表取締役社長に就任。
2012年、交渉アナリスト1級取得。
日本交渉協会燮会幹事として、交渉理論研究を担当。
「交渉分析」という理論分野を日本に紹介し、交渉アナリスト・ニュースレターにて連載中。
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【TODAY’S TOPICS】
◎ 謀攻篇の概要
・前回の「作戦篇」に引き続き、戦いの基本原則は「戦わずして勝つ」こと
・敵の意図を事前に見抜き、敵が行動を起こす前にそれを抑えてしまうというのが理想
・やむを得ず戦う場合、可能な限り消耗を少なくする
・最も愚策なのは、力任せの城攻め
⇒戦力を損なうことなく戦果をあげるのが謀攻の原則
◎武力で交戦しなければならない場合
・一般的に攻撃側は守備側の3倍の戦力が必要
・10倍の戦力があれば、敵を包囲する
・5倍の戦力があれば、力でねじ伏せる
・2倍程度の戦力の場合、敵を分断しそれぞれを撃破
・互角の戦力の場合、守りを固め計略を用いる
・劣勢の場合、戦力温存し極力交戦を避ける
・勝ち目がない場合は、戦ってはいけない
◎君主が現場に悪影響を及ぼす君主の誤った行動 3つ
・戦場の状況がわからないのに、進軍・退却の命令をすること
・軍内の状況を把握していないにも関わらず、軍政に干渉すること
・現場の軍の任命に干渉すること
◎勝つ軍の5つの条件
・戦うべき時と戦うべきでない時を知っている
・戦力に応じた戦略を考えられる
・上下の意思統一がなされている
・準備万全で敵の不備を突ける
・有能な将帥が存在し、君主が干渉しない
◎交渉との関連性
戦わずして勝つ → 交渉の席につく前に有利な状況をつくる
・シャーリン・バーシェフスキー:交渉戦術は最後の仕上げにすぎない
・ジェームズ・セベニウス「逆方向マッピング」:最終目的から遡り、交渉の順序を設計
戦力差と交渉
・圧倒的な交渉力 → 強制力で相手を動かせる
・対等な交渉 → メディエーション(調停)が有効
・アダム・カヘン:「統合型交渉が必ずしも正解とは限らない」
内部交渉(レベル2交渉)
・交渉者には、所属組織との交渉(内部調整)も必要
・相手の組織内交渉を助けることで、より良い合意に導ける
例:冷戦後のドイツ再統一交渉における、ブッシュ大統領のゴルバチョフの立場を守る配慮
お聞きいただきありがとうございました。
交渉学についてより詳しい内容をお知りになりたい方は、
「交渉アナリスト」のサイトをご覧ください。
◎伝える人:安藤雅旺(あんどうまさあき)・株式会社トランスエージェント代表取締役。NPO法人日本交渉協会代表理事。「仁の循環・合一の実現」を理念に、交渉力協働力向上支援事業、BtoB営業マーケティング支援事業などを展開している。
著書:『心理戦に負けない極意(共著)』PHP出版・『中国に入っては中国式交渉術に従え!(共著)』日刊工業新聞社・『交渉学ノススメ(監修)』生産性出版・『論語営業のすすめ』生産性出版
◎聞く人:星野良太・人まず株式会社代表。コピーライター・講師。声の対談メディアWorkTeller主催。
著書:「コロナ時代に、オンラインでコーチングをはじめてみた。」
【運営】
日本交渉学協会/高い交渉力を持ち社会に貢献できる人物を「交渉アナリスト」資格として認定する活動や、交渉力向上に役立つ情報発信、企業や大学、行政機関での交渉力普及のための研修コンテンツの提供などを実施。
【関連資格】
交渉アナリスト/MBAレベルの交渉学の知識と交渉技術を兼ね備えた、交渉の実践者を認定する資格。