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営業力強化につながるマーケティング思考 ~中国市場から得る実践的なインサイト~

Vol.9 炎上に対応する準備できていますか?

毎年3月15日の「消費者権益日」に、中国では国営放送CCTVが「315晩会」という番組を放送します。徹底した潜入取材で不正を調査し、粗悪品やその企業が実名で暴露される刺激的な内容で、国内屈指の高い視聴率を誇ります。

今年の「315晩会」では、ある企業の冷凍エビが添加剤で重量を水増ししていた事例が取り上げられました。人気ライブコマースチャンネルの「与輝同行」では、自社が販売していた冷凍エビのブランドに対して、消費者からの「この冷凍エビは大丈夫なのか?」という投稿が出始めると、自社販売品の調査結果を待たずに即座に販売を停止しました。さらに購入者に払い戻しと3倍の返金を発表し、支払いも1~3営業日で完了するというスピード対応をしました。

疑惑の段階で販売停止や補償を決断することはリスクを伴うものの、「品質に問題があればどうしよう」と不安に思う消費者心理を早く抑え、信頼低下を最小限に留めようという作戦であったと言えます。事前に補償方針や対応フローを準備していたからこそ、調査を待たず、スピーディーに大胆な一手を打てたのだと考えられます。

こうした動きは、この事例に限りません。
今年315晩会で報道された他の事案に関連する大企業も、自社の領域に関連する報道がされると速やかに公式SNSを通じて、

「当社は適正に運営している」

「万が一不正があれば、10倍の賠償を行う覚悟です」

といった声明を発信しています。

SNSが発達したこの時代、中国では「遅れ=隠蔽」と見なされ、炎上が一気に加速するリスクが高いのです。「良いものを誠実に作っていれば多くを語らずとも分かってくれるはず」という考え方は、まず通用しません。

【この事例を日本でどう活かすか?】

炎上に対する準備はできていますか?

日本のBtoB営業において学ぶべきことは「事前準備」と「対応スピード」の2点です。

事前準備の重要性

消費者が品質に敏感になる315は、中国ビジネスをしている企業にとっては、災害訓練のように「炎上対応シミュレーション」を見直すきっかけとなっています。

想定するべきリスクは、自社の範囲だけにとどまりません。同業他社で品質問題が発生した場合でも、自社にまで疑惑が及ぶことは非常に多いからです。

日本でも、あるサプリメント会社の紅麴が問題になった時、その成分を使っていない他の健康食品会社まで、消費者から様々な問い合わせが増え、売上に影響したことは記憶に新しいところです。

このようなリスクを事前にマーケティング、広報、経営企画などの各部門が共同で話し合い、「どのような条件で、どんなメッセージ(謝罪文や声明文)を出し、必要に応じてどれくらいの費用をかけて対応をするのか?」を事前に想定し、準備しておくことが大事です。

「現状の詳細を把握してから対応策を考えたい」という気持ちはわかりますが、多くの顧客にとって関心があることは、「どのような対応をしてくれるか」であり、詳細な経緯の説明ではないのです。

対応スピードの価値
実際に何かが起きたときは、事前に準備したシナリオのどれに近いかを判断し迅速に行動に移します。たとえば「製品が少しおかしい」と連絡があれば、相手の使い方が悪い可能性も排除できませんが、原因調査中でも素早く代替品を提供できれば、顧客からは商品力に加えてサービス力への評価も高まります。

最後に、自社への問いとして、ぜひ考えてみてください。

「自社には、どのよう炎上リスクがあるのか?」
「どのような対応準備をしておく必要があるのか?」

野村義樹 プロフィール

愛豊通信科技(上海)有限公司 副総経理
中国駐在員に人気のメルマガ「中カツ!通信」の配信者


1978年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。政府奨学金留学生として天津の南開大学に留学。日本帰国後コンサルティング会社に入社。台湾、深センの駐在を経て、カゴメ株式会社に転職し中国での食品事業、EC事業、食堂事業に携わる。その後、現職にてシニア向け事業の立ち上げ後、コールセンター、EC代理運営、BtoB営業支援を日系企業、欧米企業、中国企業向けに提供。

毎週、中国市場を面白く紹介する「中カツ!通信」を3,000名以上の登録者に配信。約20年に渡り中国の発展を見てきた経験と「現場」の情報は、記者やエコノミストも注目している。

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