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営業力強化 パーソナルスキル

Vol.23 セールスエッセンシャル

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業パーソンを対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という成功法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

営業パーソンの仕事は顧客との関係性を共創的な関係性へ深化させていくこと

B to B営業パーソンは、単に製品やサービスを売ることが仕事ではなく、顧客とのインターフェースを司り、関係性を共創関係へ発展させていく役割が求められます。我々はその役割をCIB(Co-creative Interface Builder)と呼んでいます。関係性の質を高め、営業現場を「売り買い」の場から、「価値創造」の場へと変えていくことが期待されます。この役割を全うするためには、様々な行動特性が必要となりますが、それ以前に、性格・品性・人柄の良さは絶対に欠かすことはできません。

営業としての本質「セールスエッセンシャル」

筆者がキャリア初期に何度も読み返して影響を受けた書籍として、「セールスの教科書」(NPO法人セールスコーチング協会/https://sales-career.org/textbook/)があります。この教科書で最初に学ぶのが「セールスエッセンシャル」です。セールスエッセンシャルとは、エッセンシャル=「本質」という意味の通り、営業パーソンがCIBとしての役割を全うするために、備えるべき本質・人間性のことです。同じ組織の中で、同じ商材を同じような営業トークで、同じ時間を使っているのに、人によって業績に差が出てしまうことがあります。このことから、営業の成果は「どのように売るか」だけでなく、「誰が売るか」が大きく影響していると言えます。

セールスエッセンシャルについて考える際に理解しておきたいこととして、顧客は「人」であり、感情があるということです。営業パーソンは、顧客の感情に敏感であることが求められます。顧客がどのような心理状態にあるかを理解し、それに応じた対応をとることが、セールスエッセンシャルの重要な部分です。一旦顧客が営業パーソンに対して嫌悪感を抱いてしまうと、プレゼンテーションの内容に関心が向かなくなってしまいます。どれだけ顧客の役に立つプレゼンテーションだとしても、顧客に嫌悪感を抱かれてしまうとその商談はうまくいかないのです。我々営業パーソンが認識している以上に、顧客は「感情」によって行動をしていると考えた方が良いと思います。

■営業パーソン自身が「セールスエッセンシャル」の状態を知るのは難しい

人材紹介サービス営業1年目のときの筆者の経験を共有します。飛び込み営業をした際に、その会社の営業部長は突然の訪問にも関わらず時間を割いてくれました。偶然営業人材を募集中で、長い期間採用活動をしていたが、採用ができていない状況でした。そのため、求める人材像を紹介会社へ直接伝えてこの状況を打破したいと考えていたようです。タイミングとしてはベストな状況での商談でした。

しかしながら、筆者が自社紹介を終えて最初の質問をしたところ、営業部長が「他の会議があるので」と、、突然会議室から出て行ってしまい、商談はわずか数分で終わってしまいました。後日改めて営業部長へ連絡をしても、「他の会社から紹介を受けたので」と断られ、再度商談機会を得ることはできませんでした。

このケースでは、筆者は自覚が無いのですが、営業部長の気分を害すような行動をなにかしらしていたのだと思います。営業パーソンが相手の気分を害す行動をしていたとしても、顧客からは「あなたの商談での態度から誠実さを感じなかったため、他社に頼むことにしました」とは言ってもらえません。このように、セールスエッセンシャルは非常に重要な要素でありながらも、営業パーソンが自分の状態を知ることは難しいのです。

冷静になって商談での筆者の行動を振り返ると、自分自身は売上が上がっておらず、非常に焦りがあったことに起因して、顧客への関心が著しく薄かったと思います。筆者は営業部長がこれまで他の人材会社とのやりとりでどんな不満があったのかということや、具体的なビジネスの現状や課題について一切質問をしませんでした。とにかく売り上げを上げたい一心で、募集要項のみに集中してヒアリングをしました。その振る舞いに、営業部長は他社と一緒だとがっかりし、気分を害したのかもしれません。本当のことはわかりませんが、自分が無意識にやったことが、相手にとっては許せないことで気分を害してしまうことはあります。しかし、そのような失敗に対しても、顧客は営業パーソンに対してはっきり言ってくれることは少ないですし、無言で去っていくケースがほとんどです。

筆者の体験は、顧客が商談途中で退席するという意思表示をしてくれたので、自分の態度が悪かったのではと振り返り、改善するきっかけにできましたが、よほど意識的に心掛けないと、自分のセールスエッセンシャルのレベルを知ることはできません。また、自分自身を変えようとする気持ちが無いと、セールスエッセンシャルの向上は期待できません。今回のコラムでは、筆者の失敗談を共有しましたが、皆様も一度営業行動を振り返っていただき、セールスエッセンシャル向上のきっかけを作っていただけたらと思います。

次回からは、顧客を惹きつける性格・人柄と顧客に嫌悪感を与える性格・人柄について解説をしていきます。

筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入所。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。

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