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プロフェッショナルに聞くVol.8

プロフェッショナルに聞くvol.8
トランスエージェント 伊東大輔

Q.BtoB営業のSFA活用について、顧客マスタの構築は最も重要であると言われていますが、顧客マスタにおける粒度の定義とは何でしょうか。

顧客の粒度の定義とは、一つの顧客を会社単位、事業所単位、部門単位のうちどれにするのかを決めることを指します。
この定義は、自社の営業組織が販売している商材の利用範囲や、提案対象(部門、役職など)に関して問いを立て、それに答えていくことで導き出すことができます。
例えば、マナー研修や新人研修などの商材でしたら提案対象はほぼ間違いなく顧客の人事部という回答になると思います。そして人事部は基本的に各社に1つとなるため、研修を商材としている会社の顧客粒度は会社単位となります。

Q.顧客の粒度を定義することで、データを取りやすくする以外に、どのようなことが明確になると言えるのでしょうか。

それは、営業組織内で各営業担当者が顧客側の決裁者をこれまで以上に意識するようになることです。営業組織の現場で頻発する問題として次のようなことが挙げられます。
営業担当者からの商談報告を客観的に見ると、営業担当者と顧客担当者が盛り上がっているだけの内容であるにも関わらず、営業担当者は「お客様が〇〇を必須要件と言っているので、次回の面談までにその要件を満たすデモ(サンプル)を提出したい」と、一方的なお客様至上主義を盾にして技術者を無理やり説得し、デモ(サンプル)の準備を要請しました。技術者が工数をかけてデモ(サンプル)を作成し、商談でプレゼンしたものの、顧客側のキーマンや決裁者からは「この提案は良いと思うけど、マスト要件というよりはあったらいい程度だね」といったコメントしか返ってこず、結局、案件が進捗しないまま骨折り損のくたびれもうけになってしまったという例がありました。
このような問題を今後起こさないようにするためにも、顧客の粒度を意識することは極めて肝要であると言えるでしょう。

Q.顧客の粒度を意識することで解決できたことと、今後の改善案を具体的に教えてください。

先ほどの例では、やり取りしている顧客側の担当者から聞いた要件が、その担当者(顧客の粒度=個人単位と定義)の要件なのか、意思決定に参画する部門の要件(顧客の粒度=部門と定義)なのか、会社の要件(顧客の粒度=会社単位と定義)なのかを掘り下げて考えられたはずです。また、仮に営業担当者が上記と同様の営業の進め方をしたとしても、上司や技術者が営業担当者から得られた情報に対して、どの粒度での要件かという質問をすることで、案件の進捗に必要な今後のアクションを検討するより深い議論が生まれるでしょう。

Q.顧客粒度を意識した上での運用で、出現する問題はありますか。

運用上で起こる問題といえば、顧客マスタとしてデータ管理・維持することが非常に困難だということです。
例え顧客マスタにて管理する顧客の粒度を部門単位とすることが自社の顧客マスタの理想であったとしても、実際に日々の運用で部門単位を顧客マスタとしてデータ管理・維持することはほぼ不可能だと言えます。なぜなら、顧客の粒度を会社単位としたとしても顧客マスタを管理・維持することが難しい中で、非常に高い頻度で部門名や体制が変わる部門の情報を、外部の人間が適宜把握し、管理・維持することは事実上不可能だからです。

Q.解決方法やアドバイスがあれば教えてください。

SFAはあくまでも小さく始めて少しずつ社員とともに成長させていくことが成功の秘訣なので、最初から不可能に近いことを現場の方々に要求してしまうと失敗の可能性を自ら高めてしまいます。そのため、SFAを導入する際は、営業組織全体で顧客の定義を明確化し、共通認識を持った上で、顧客マスタにて管理する顧客の粒度を会社単位もしくは事業所単位とするのがよいでしょう。


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