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営業力強化 パーソナルスキル

vol.10応酬話法について③ 事例紹介について考える

営業力強化 パーソナルスキルvol.10

応酬話法について③

第10回 応酬話法について③ 事例紹介について考える

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

今回も、前回に引き続き応酬話法について解説します。

応酬話法とは、商談で見込み客からのお断りや反対に対して切り返す技術のことを指し、その目的は見込み客の説得ではなく、自社の製品・サービスについて正しく認識していただくことであるとお伝えしました。

今回は、応酬話法における事例紹介について考えたいと思います。
応酬話法において、事例紹介トークはとても重要です。なぜなら、見込み客は他社事例を聞くことで具体的にイメージできたり、「同業他社が導入しているのであれば社内で説明がしやすい・・・」と具体的に検討開始をしてくれたりことがあるからです。

そのため、新規開拓を担う営業パーソンにとって事例トークを準備しておくことはとても重要です。

しかしながら、新規開拓営業をしていくなかで、全ての見込み客に100%適合する事例を準備することは現実的ではありません。それではこのような状況において、営業パーソンはどのように事例を準備すればよいのでしょうか?

事例紹介トークの際に考えるべきは“セグメンテーション”

今回ご紹介したいのは、“セグメンテーション”です。セグメンテーションとは、マーケティング用語で“市場の細分化”を意味します。また、一定の基準で区切った1つのまとまりを“セグメント”と言います。一般的なセグメントの分類方法としては、地理的変数、年齢などがあります。フィリップコトラーのマーケティング理論で提唱されたSTP分析ということでご存知の方も多いかと思われます。

では、このセグメンテーションをどう事例トークに活用すればよいのでしょうか?

次から事例紹介トークの準備の仕方を説明します。

まず、自社の具体的な導入事例を列挙します。導入事例を列挙する際には顧客企業名、導入背景、実際に提供したサービスとそのせいかを記載します。その後、導入先の顧客企業に対して、考えられる様々なセグメントをタグ付します。

例えば、中国にあるベーカリー、外食チェーン店に対して原料供給をしている、在中国日系食品原料メーカー現地法人の営業組織に対して、SFA導入支援を実施したとします。このような会社に対して、筆者であれば次のようなセグメントをタグ付けします。①投入財※(原料供給) ②B to B ③在中国 ④営業人材10名以下 ⑤メーカー系販売会社 ⑥直販&間版 ⑦食品業界 ⑧日系

※「戦略的産業財マーケティング 産業財営業の7つのステップ 笠原英一著」より次のフレームワークを引用 産業財市場を商材毎に3つに大別する ①投入財(原料など) ②基礎財(製造設備など) ③促進財(IT、サービスなど)

応酬話法事例

自身の武器がこの事例1つしかないとして、導入実績のある業界以外を開拓する場合にどのように事例トークを展開すればよいのでしょうか。次に例を挙げます。

例:化学品専門商社へのSFA導入支援を提案する場合
見込み客の言葉「弊社の同業界での導入実績はあるのでしょうか・・・?」

自社には食品業界での導入実績しかない中で、一番困る見込み客の質問です。筆者がこのような状況に遭遇した場合、次のような応酬話法を展開します。

化学品業界での導入実績はまだないのですが・・・。投入財(原料)を扱う販売会社様で導入実績がございます。その会社様では供給先の直接顧客だけでなく、エンドユーザーの情報を管理する必要がありました。弊社は、この会社様に対してSFAの導入と営業人材への教育支援を行いました。この点については、御社も近い状況かと思われますのでお役に立てる可能性がありますがいかがでしょうか。

このように、全く同じ業界の導入実績がなかったとしても、面談している見込み客が所属するセグメントを出すことで、切り返すことができます。また、導入背景を説明する際もタグ付けしたセグメントでの起こりうる事象を交え、その解決事例を加えて伝えることで、具体的な検討に繋がる可能性があります。タグ付けしたセグメントを出さずに正直に “食品業界”と言ってしまうと、見込み客からは「食品と化学では全然違うからね・・・」と逆に切り替えされてしまいます。

営業パーソンは、限られた資源をやりくりすることで業績を上げていく必要があります。限られた資源をやりくりするには知恵と工夫が必要です。今回ご紹介したように、導入事例は1つだけだったとしても、多種多様な見込み客に刺さる事例トークに昇華できるかどうかはあなた次第です。改めてこれまでの導入事例を見返す際に、どんな事例トークに昇華できそうかを考えていただきたいです。

今回ご紹介した内容が、事例紹介トークに苦手意識を持っていた方にとって参考になれば幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入団。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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