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営業力強化 パーソナルスキル

vol.11両面提示について

営業力強化 パーソナルスキルvol.11

両面提示について

第11回 両面提示について

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

今回は、営業トークスキルの1つである両面提示を紹介したいと思います。
両面提示とは、自社の製品・サービスについて見込み客に対して紹介する際に、メリットとデメリットを両方伝えることを指します。

B to Bの営業パーソンにとって、両面提示は必須のスキルです。
理由は2つあり、①B to Bにおいては、見込み客も導入を検討している製品・サービスの分野に関して専門性がある程度高いこと、②見込み客は、導入を決定するうえで自社の関係者に対して導入理由を説明する必要があることが挙げられます。

社内で導入説明する際には、間違いなく関係者からデメリットを検討したのかということを質問されているであろうと想像されることからも、メリットだけの片面だけを提示して導入まで押し切るということができません。
(B to Bでも商材によってはメリットだけの片面提示で押し切って受注できることはあるかもしれませんが、長い取引につながるかというと、筆者の経験上あまりないと認識しております。)

もし、見込み客から“〇〇のようなデメリットはないのか”という質問や指摘があった後に、営業パーソンからデメリットを伝えたとしたら、見込み客から「隠していたのでは?」と思われてしまい、心象を悪くしてしまう可能性があります。

両面提示をする際に注意するポイントは2つあり、①伝えるメリットに関連したデメリットを伝えること、②デメリットを伝えたうえで、そのデメリットを補う方法も伝えることが挙げられます。

①については、伝えたメリットに全く関係ないところのデメリットを言われても見込み客からすると、ごまかしにしか聞こえないからです。見込み客は、営業パーソンからメリットを伝えられた際に、そのメリットが、自社の問題解決にどうつながるのかを考えながら話をしています。そんな時に、営業パーソンから全く別の角度からデメリットを言われても、見込み客は紹介された製品/サービスの導入可否を考えることができません。このようなことが続くと、見込み客から、的がずれたことを話す営業パーソンだと評価を受けるかもしれません。

どんなにいい製品・サービスも100%のものは無く、メリットだと思っていたことが、捉え方によってデメリットになるということがあります。メリットに関連したデメリットを伝えることで、見込み客が正しく検討できるように情報を提供しましょう。

②については、デメリットを伝えたうえでそのデメリットを補う方法を伝えられると、見込み客に対して「この営業はいろんなことを検討し、先回りして提案してくれそうだ」という印象を与えることができます。

デメリットを見込み客に指摘されると、商談で後手に回ってしまう

営業パーソンは、商談で主導権を握ることが必要です。後手に回ってしまうと、主導権を握ることができません。次のようなケース分析を通じて、両面提示のポイントについて考えていきたいと思います。

営業パーソン:佐藤さん
佐藤さんの会社:グループウェア開発企業。代理商経由での販売が基本ではあるが、メーカー営業として、製品情報についてエンドユーザーに直接説明している。
販売している製品:プログラミングスキルがなくてもデータベースを構築できるグループウェア(製品名:A)。様々な業務に応用ができることが特徴。
見込み客の状況:SFAの乗り換えを検討中。乗り換えを検討した背景は、現在使用しているSFAのランニングコストが高いことと、機能過多で自社の現場では使いこなせていないこと。
商談のきっかけと状況:セミナーに参加してもらったため、佐藤さんより電話でアポイントをとり商談をした。最初の商談であり、一通り会社紹介を終えて製品PRをしている状況。

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佐藤さん:弊社の製品Aは、プログラミングスキルがなくてもデータベースを構築できる点が特徴です。
他社のSFAはシステムに業務を合わせていくのに対して、弊社のサービスであれば業務に合わせてアプリをつくることで、システムを構築していくことが可能です。業務に合わせて自社でアプリを作ったり、修正できたりするため、自社仕様のSFAを構築することができます。
見込み客:弊社は事業部によって事業内容が全く違うのですが。
佐藤さん:その点についてはご安心ください。事業部の状況に合わせたアプリを作成して運用することも可能です。実際に、〇〇社様では会社マスタは全社共通ですが案件管理は事業部毎で別のアプリを運用しています。
見込み客:それはいいですね。自由度が高いということは、使い方はユーザー次第ということですね。となると、自由度が高いゆえに自社でどう運用するかを考えることができなければ、結局以前使っていたSFAと同じような仕様に落ち着き、現場にフィットしないこともあり得るということですね。
佐藤さん:その点はお伝えできていなかったのですが、弊社の導入企業様の多くは自社の仕様について考える事務局を置いてもらっていたので、導入もその後の運用も成功しております。
見込み客:なるほどね。となると、その事務局をおけない企業は成功できない可能性があるってことですね。
佐藤さん:そうとも言えますが、事務局さえ用意できれば成功に近づくとも言えますよね。
システム導入は、お客様と提供会社が協働で進めるものですから、自社仕様について考えることができないのであれば、どんな企業が提供しても、システム導入が成功できるわけないですよね。
見込み客:まぁそれはそうですけど・・・。

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この事例は少し極端な部分もありますが、先に両面提示をしなかったがためにデメリットの部分を見込み客から指摘されたうえで切り返したトークが、
①デメリットを補う方法を顧客だけに求めたということ、
②正論を述べることで顧客を説得しようとしたこと
で、見込み客としては「言い負かされた」という印象が残り、それ以上話をしようとは思えなくなったと想像できます。

見込み客は、このような営業パーソンからの説明があると、「なんとか勢いで押し切ろうとしてるな」とか、「かなり自分のことを甘く見ている営業だな」などと考えると思います。

B to Bにおいては、売り手と買い手では専門性に大きな隔たりがなく、見込み客自身も様々な会社と話をしていることから知識が豊富であることが多いです。
そのため、営業パーソンに求めることは誠実さと正確さです。見込み客は、意思決定をする上で必要な情報を正しく伝えてくれることを営業パーソンに求めています。

そのことを考えると、やはり早い段階でデメリットの部分も伝えておいたほうが良いです。
先程と同じケースで同じことを伝えるのであれば、このようなやり方もあるかと思われます。

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佐藤さん:弊社の製品Aは、プログラミングスキルがなくてもデータベースを構築できる点が特徴です。
他社のSFAはシステムに業務を合わせていくのに対して、弊社のサービスであれば業務に合わせてアプリをつくることで、システムを構築していくことが可能です。業務に合わせて自社でアプリを作ったり、修正できたりするため、自社仕様のSFAを構築することができます。
見込み客:弊社は事業部によって事業内容が全く違うのですが。
佐藤さん:その点についてはご安心ください。事業部の状況に合わせたアプリを作成して運用することも可能です。実際に、〇〇社様では会社マスタは全社共通ですが案件管理は事業部毎で別のアプリを運用しています。
しかしながら、自由度が高いゆえに事業部毎にSFA運用事務局を置き、それぞれがSFAで何を実現するのかということを考え抜かない限り、以前導入したSFAと同じ仕様になってしまって、結局同じ結果になる恐れもあります。
その点を補うために、弊社製品Aの販売パートナーα社では、営業管理者研修を提供しており、SFAを通じて業績向上につなげる営業管理とは何かを管理者に考えさせたうえでSFAを構築しております。
また、別のパートナーβ社では、初期構築費は0で月額保守サービス費用を払えば、いつでも仕様変更可能なサービスを提供しております。
お客様のご要望に合わせて、製品Aを導入・運用成功するために最適なパートナーもご提案させていただきます。
見込み客:自由度が高いゆえに、自社で考え抜かないと運用成功には近づけないのですね。
先程パートナーα社さんがやっていることを、弊社が自社で内製することは佐藤さんからみても難しいと思いますか?
佐藤さん:そこはお答えしづらいところです。理由としては、各会社様によって営業管理や案件管理の複雑性が大きく違うからです。まずは御社の営業行動に関して現状をお伺いしてもよろしいでしょうか?
・・・・

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このやり方の良い点は、先に自社製品のデメリットを提示した上でその解決法を提示したことです。そして、顧客が前向きになってきたところでヒアリングに入れております。

今回の事例は極端なところもありますが、両面提示をしておくことは、見込み客からの信頼を勝ち取る上でとても重要です。

今回ご紹介した内容が、自社製品のデメリットを理解しておきながらも
商談で見込み客へ伝えることに苦手意識を持っていた方の参考になれば幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入団。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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