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営業力強化 パーソナルスキル

Vol.27 見込み判断の重要性について

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業パーソンを対象としています。時代とともに営業のやり方は変化しますが、営業の本質である「量×質」という成功法則は不変です。ここでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えします。

「受注見込み(以下「見込み」)」とは、商談をした顧客で自社製品・サービスが導入される可能性のことを指します。営業効率を高めるためにも、顧客の商談の度に見込みの判断をすることは非常に重要です。今回のコラムでは、顧客へ具体的な提案をした案件ではなく、案件獲得前の顧客に対する見込みの判断について考えます。ここで言う『案件』とは、顧客が自社製品やサービスの導入を本格的に検討している状態を指します。つまり、導入の具体化に向けた次の段階です。

今回は、案件獲得前の顧客との商談における見込みの判断について考えます。この判断は、前回のコラムで紹介した顧客創造(交渉)プロセス『JIN(仁)メソッド』の2つ目のプロセス『掴む』を活用して行います。『掴む』プロセスでは、顧客のニーズや意思決定のポイントを深く把握することで、案件化の可能性を見極めるために以下の6つを掴むことが重要です。(JIN(仁)メソッドの詳細は前回のコラムをご参照ください)

①顧客の現状を掴む
②顧客のあるべき姿を掴む
③顧客の問題・課題を掴む
④意思決定プロセス・キーパーソンを掴む(重要度、優先順位、コンペチターとの比較、予算感)
⑤キーパーソンの思いを掴む
⑥タイミングを掴む

顧客との商談を通じて、この6つを掴むことで見込みの有無を判断します。営業パーソンは目標達成のために多くの商談を行う必要がありますが、目標には年度や四半期などの期間が設けられています。限られた時間の中で成果を上げるためには、優先順位をつけることが重要です。見込みの判断を的確に行うことで、効率的な時間の活用できます。

それでは、案件獲得段階で商談を行った顧客について、見込みがないと判断し、優先順位を下げる必要があるケースを見ていきましょう。今回は、B to B企業に営業研修を販売する営業パーソンが、100社にTELアプローチを行い、30社と商談を実施した結果、3社が見積もり・提案段階に進んだとします。残る27社について、どのようにネクストアクションを取るべきかを考えます。なお、商談相手は全て人事部の研修企画責任者で、営業研修を提案したケースとします。

次の段階に進まなかった原因は、キーパーソン・ニーズ・タイミング・予算の4つに分類できます。それぞれ具体的なケースを想定し、考察していきます。

  1. キーパーソン
    1.1 キーパーソンに接触ができなかった
    — 営業研修は営業部にて企画・運営をしており、営業部長が決裁者であると判明。営業部長への取次を依頼したが、断られた。
    1.2 キーパーソンに問題意識が無い
    — 「営業力は経験で向上するため、研修会社の営業研修は必要ない」と判断された。
  1. ニーズ
    2.1 そもそものニーズが無い場合
    — 製造に特化した会社であり、営業部門が無いと判明。
    2.2 自社ソリューションと顧客ニーズのギャップ
    — 営業パーソンに対する研修は必要と考えているが、財務・法律・貿易などの知識の習得を優先している。
    2.3 顧客に自社ソリューションの内容が伝わっていない
    — 「営業研修は必要だが、研修で学んだことが現場で活かされないことが懸念」とのコメントあり。実際には研修と実践をつなぐ内容であるが、その点が十分に伝わっていなかった。
  1. タイミング
    3.1 他社研修を導入したばかり
    — 他の研修会社から商談力向上研修を導入した直後で、参加者の評価も良好のため、同じ研修会社からの受講を継続予定。
  1. 予算
    4.1 予算と価格のギャップ
    — 年間教育予算が5万円で、自社研修費(1日あたり30万円)には対応できない。
    4.2 会社方針で経費削減を徹底している
    — 教育に投資する企業だが、業績不振のため教育予算が削減され、既に実施が決定している研修以外は行わない方針。

まず、見込みが全く無いと判断した場合(例:2.1と4.1のケース)は、フォローを中止する必要があります。これは、当初はターゲット顧客と思われたものの、詳細な情報収集の結果、自社製品・サービスのターゲット外であることが判明したケースです。一方で、それ以外のケースは、現在は見込みが低くても、将来的にチャンスが生まれる可能性があると考えられるので、継続的なフォローにより関係構築が必要となります。

また、我々B to Bの営業パーソンが覚えておかなければならないことは、企業は時間が経つと状況が変わるということです。1.1のケースでは、営業部長が人事部に異動し、全社的な営業研修の企画を担当する可能性が考えられます。2.2のケースでも、時間の経過により商談力の向上に対する問題意識が高まるかもしれません。また、4.2のケースでは、顧客の業績が回復することで教育への投資が再開され、自社の提案機会が生まれる可能性もあります。

それでは、今すぐに受注する可能性があるわけではない顧客に対してどのようにフォローをしていけばよいのでしょうか。

頻繁に顧客に対して「以前ご紹介した営業研修について、そろそろ検討しませんか?」と電話をしていたら、顧客はどう考えるでしょうか。忙しい中、何度も電話がかかってきたら顧客はその営業パーソンに対して嫌悪感を抱き、その後チャンスをくれることも無くなってしまうでしょう。しかし一方で、連絡をしなければ自社のことなど忘れ去られてしまいます。

そのようなときに有効なフォロー方法が『ハッピーコール』です。顧客に対して有益な情報を提供することを指します。見込みが全く無いと判断した顧客を除き、他の顧客に対してはハッピーコールを活用して情報提供を行うことが必要です。これは、短期的には見込みが低いが将来的な可能性がある顧客に対して有効です。連絡手段はメールやニュースレターなど、顧客に負担をかけない方法で定期的に情報を提供することが望ましいです。

見込みの判断は、年数を重ねることで精度を高めることができます。ベテラン営業パーソンは見込み判断が的確で、目標達成に直結する顧客に多くの時間を割くことができます。しかし、全ての顧客をフォローするのは難しいため、優先順位を下げざるを得ない顧客も存在します。そこで、若手営業パーソンがこれらの顧客をフォローすることで、新たなチャンスを掴む可能性が生まれます。組織全体で効率的に顧客フォローを行うためには、このような役割分担が重要です。

限られた時間で目標達成するためには、顧客への対応に優先順位を付けることが不可欠です。具体的な優先順位の付け方については、緊急度と重要度のマトリックスを用いる方法などがあります。ポイントは、現在の自分の目標達成状況や顧客の受注可能性に応じて、効率的に時間を配分することです。

見込みの判断は、営業行動の質を高めるためには必須のスキルとなります。見込み判断の精度を高めるためには、商談でのプレゼンテーション力やヒアリング力などの対人スキルの向上が必要となります。これらのスキルについては、今後のコラムでお伝えしていきます。見込みの判断を高めることで、質が高く効率的な営業活動を目指していただければ幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入所。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。

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