論語営業の実践 ~ 顧客を創造する開拓力~ 論語営業マインド「仁」「誠」「礼」の醸成と実践 顧客が求めている営業の在り方 ~論語営業のすすめ⑮
営業人.com代表 安藤 雅旺
論語営業の実践 ~ 顧客を創造する開拓力~ 論語営業マインド「仁」「誠」「礼」の醸成と実践 顧客が求めている営業の在り方 ~論語営業のすすめ⑮
ここからは顧客を創造するための営業プロセスについて考えていきたいと思います。まず顧客は営業についてどう考えているのかについて触れます。筆者は2020年1月~6月にかけて社員数1000名以上の製造業を中心に367名の購買担当者に対して「評価できない営業パーソンの行動特性」についてアンケート調査を実施しました。(図表2)のアンケート
内容で、評価できない営業パーソンの行動特性について1位~3位までを挙げてもらい、その後筆者がウェイト(1位3点、2位2点、3位1点)をつけ合計得点を割り出しました。その結果が次の表になります。(図表3)


評価できない営業パーソンの行動特性の1位は297点のJ「自己中心、受注後フォローアップがない」でした。また2位は251点のF「自社製品、サービスへの理解不足、自信の欠如」、3位は233点のE「取引先の業務についての理解不足」という結果になりました。その他200点を超えているのが227点のB「ニーズに耳を傾けない」、226点のI「解決策を説明しない」223点のA「強引、しつこい」、220点のC「ビジネスマナーの悪さ(馴れ馴れしい、無礼)の順となっています。
一方で得点がもっとも低かったのが、23点のH「口べた」です。そして140点のD「提案が大げさ、オーバートーク」、147点のG「競合他社に関して無関心、研究不足」の順となっています。
この結果から私たち営業が読み取るべきことは何でしょうか。まず言えることは顧客へのお役立ちを直接的に損ねる可能性が高いものが軒並みに上位になっている点が挙げられます。「自己中心、受注後フォローアップがない」「自社製品、サービスへの理解不足自身の欠如」、「取引先の業務についての理解不足」の上位3つはすべて顧客へのお役立ちに直接影響を及ぼす項目です。論語営業にとって最も大切な徳目である「仁」の欠如に当てはまります。その次に高い「ニーズに耳を傾けない」、「解決策を説明しない」も「仁」に関する項目であり直接顧客のお役立ちに影響を与えるものといえます。
そしてその次に「強引、しつこい」、「ビジネスマナーの悪さ(馴れ馴れしい、無礼)」といった「礼」に関することに続きます。
己れの欲せざる所、人に施すこと勿かれ(『論語』衛霊公第十五)
「自分の望まないことを人にしむけないことだ」(『論語』金谷 治訳注 岩波書店)
論語営業解釈: 自分がされたくないことを顧客にしないことだ。
一方でもっとも低かったのが「口べた」で得点も他と比べて大幅に低い点数でした。口べたであることが望ましいとは言えませんが、顧客にとってはそれほどマイナス評価にはならないということがアンケート調査から覗えます。
剛毅朴訥仁に近し (『論語』子路第十三)
「まっ正直で勇敢で質実で寡黙なのは、仁徳に近い」(『論語』 金谷 治訳注 岩波書店)
論語営業解釈: 口べたで不器用でも強い意志を持ち顧客のお役立ちを意識して一生懸命努力する営業は仁に近いといえる。
今回のアンケート結果をもとにして、「顧客の求める営業とは何か」という問いに対して文章化して答えると下記のようになります。
「自社製品、サービスに誇りを持ち、その性能や効用を熟知し、顧客の業務について理解を深め、ニーズに耳を傾け理解し、顧客の問題解決につながる提案をする。そして受注後も顧客の成果につながるようしっかりフォローをする。自社の競合他社を研究したり、提案の仕方(デリバリー)を研究するのもよいが、最も重要なことは顧客への現実的なお役立ちである。口べたであることは大きな問題はない。むしろ仁が少ないほうが問題である」
正に仁が求められているのです。
巧言令色、鮮なし仁(『論語』陽貨第十七)
「ことば上手の顔よしでは、ほとんど無いものだよ、仁の徳は」(『論語』金谷 治訳注 岩波書店)
論語営業解釈: 目先のうまい話ばかりを並べる言葉巧みな営業は、信用できないものだ。
仁者は己れ立たんと欲して人を立て、己れ達せんと欲して人を達す(『論語』雍也第六)
「仁の人は、自分が立ちたいと思えば人を立たせてやり、自分が行きつきたいと思えば人を行きつかせてやって、(他人のことでも自分の)身近にひきくらべることができる、(そういうのが)仁のてだてだといえるだろう(論語 金谷 治 訳注 岩波書店)
論語営業解釈: 論語営業の実践者は、自分が成功したいと思う意識を顧客へのお役立ちに転換、集中し、自分が売上を上げたい、業績目標を達成したいと思う意識を、顧客の目標達成支援に転換、集中する。
安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 代表理事
二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)
株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。
2001年株式会社トランスエージェントを設立。
2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。
「仁の循環・合一の実現」を理念に、マネジメント・イノベーション支援事業、
交渉力・協働力向上支援事業、BtoB営業・マーケティング支援事業を展開している。
主な論文・著書
「中国進出日系企業の産業財市場における顧客インターフェイスの研究」
Strategy for Managing Customer Interface taken by Japanese B to B Marketers in China
~Effective Business Activities in Developing Customer-Supplier Relationship in China~
(立教大学大学院MBAプログラム2011年度優秀論文賞受賞)
『心理戦に負けない極意(共著)』(PHP研究所 2009)
『中国に入っては中国式交渉術に従え!(共著)』(日刊工業新聞社 2013)
『交渉学ノススメ(監修)』(生産性出版 2017)
『論語営業のすすめ』 (生産性出版 2021)
『论语和营业人』 (今日出版 2025)

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