交渉学ノススメvol.1

第1回 交渉とはなにか

交渉について持つイメージは人によってさまざま。交渉を腹の探り合いや、自分の要求を相手にのませるための画策、相手を出し抜いて自分が勝つための手法と考える人もいる。一方で、双方の利害調整や信頼関係の構築、互いの問題を協力して解決するための手法と考える人も。

 どのような交渉であっても、成果を上げるには、交渉の全体像を把握し、分析する力を養う必要がある。このコラムでは交渉を分析するために必要な知識や、より交渉の成功確率を高めるための考え方を紹介していきたい。

 交渉について日本交渉協会では「自らの目的達成、問題解決、何らかのニーズを満たすために他者と関わりを持つ一連のプロセスのこと」と定義。交渉は3つのタイプに分類することができる。ゼロサム領域として「奪い合い型の交渉(分配型)」、ノンゼロサム(プラスサム)領域として「価値交換型の交渉(統合型)」、「価値創造型の交渉(統合型)」――の3つだ。

 奪い合い型の交渉とは限られた一定のパイを奪い合う、勝つか負けるかという考え方にのっとった交渉。焦点は自分自身の利益拡大のみに当てられ、力によるコントロール、情報の操作、脅しやどう喝、権謀術数が威力を発揮する交渉になる。 価値交換型の交渉とは、焦点は自分と相手の双方の利益に当てられ、対立項目のみに固執せず双方の利益拡大のために、交渉項目を拡げて考え、互いのニーズの違い、重要度の違いなどの差をうまく活用し、双方にとって有益な交換を実現することで合意を形成する交渉。

 価値創造型の交渉は、焦点は共通の目的・目標の実現に当てられ、共通目的・目標を軸にして、双方の立場の違いを乗り越え、お互いの資源を持ち寄り協働し、新たな解決策を生み出す交渉だ。価値交換の領域にとどまらず、両者が一体となって共通目的・目標の実現、に向けた解決策を創出するのが特徴になる。

 交渉の成果を上げ続けるには交渉の次元をより高める、つまり次元の低い奪い合い型の交渉から抜け出し、価値交換型の交渉(統合型)価値創造型の交渉(統合型)といった次元の高い交渉へ向かう必要がる。そのためには相互の信頼関係と協働意欲を高めることが求められる。

 高い次元の交渉を目指す理由は、次元の低い交渉は短期的な利益を一方にもたらすことはあっても、中長期的な利益をもたらすことが難しいためだ。交渉者双方が満足できる結果を生み出せない限り、その関係はやがて破綻することになるであろう。

 顧客との関係においても現状をしっかりと分析し、いかに交渉の次元を高めていくかを考えていくことが今後の社業の発展の鍵を握っている。


安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 常務理事

二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)

株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。2001年株式会社トランスエージェントを設立。

2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。

「仁の循環・合一の実現」を理念に、BtoB営業・マーケティング支援事業、 交渉力・協働力向上支援事業、マネジメントイノベーション支援事業を展開している。


著書・翻訳

  心理戦に負けない極意    中国に入っては中国式交渉術に従え     交渉学のススメ

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