交渉学ノススメvol.4

ZOPAと交渉の準備について

前回はBATNAについて触れた。今回はBATNAとあわせて押さえておくべき基本概念であるZOPA(ゾーパ)について説明する。ZOPAとはZone Of Possible Agreementの略で交渉の合意可能範囲を指す。

価格交渉を例に挙げると、通常売り手、買い手双方には3つの価格が存在する。1つ目は出発点、これは最初に提示する価格である。2つ目は目標点、できればこれくらいで売りたい(買いたい)と考えている価格を指す。3つ目は留保点、自分が譲歩できる限界価格である。売り手、買い手それぞれの出発点と留保点を結ぶ線が、重なり合う部分がZOPAである。つまり両者の留保点の間の幅が交渉の合意可能な範囲といえる。重なり合う部分がある場合は交渉学ではZOPAが正、重なり合う部分がない場合はZOPAが負という。奪い合い型の交渉においてはZOPAが正の場合、いかにして合意点を相手の留保点に近づけるかに焦点が置かれる。たとえば極端に高い出発点を提示することで、相手に心理的アンカーを打ち込み、自らの目標点に合意を近づけさせるなど自身に有利な状況に相手を誘導するためのさまざまな手法が採られる。一方ZOPAが負の場合、交渉は合意できず決裂となる。ZOPAが負の状況で、交渉を合意に導くためには、奪い合い型の交渉から価値交換型の交渉へ交渉のステージを上げる必要がある。交渉項目を1つに限定せず、幅広く考え、お互いの優先順位や意味づけ、価値観や立場・状況の違いを利用して戦略的な価値交換トレードオフを実現させることである(この点については次回詳しく説明する)。

交渉のステージを奪い合い型から価値交換型へ上げるには事前準備が非常に重要となる。よい交渉をするために入念な準備をするのは交渉の鉄則である。R.フィッシャーは交渉の要因を①関心事項②提案③代替案④合法性⑤コミュニケーション⑥リレーションシップ⑦コミットメントの7つで示した。交渉前にこの7つの要因について考えておくことをおすすめしたい。①関心事項:自分自身また相手は交渉によって何を得たいと考えているのか②提案:主要な関心事項を満たすためにどのような提案が考えられるか③代替案:合意が得られない場合はどうするか④合法性:交渉がフェアであるための客観的基準は何か⑤コミュニケーション:交渉の結果をよりよいものにするためにはどのようなコミュニケーションをとるべきか⑥リレーションシップ:相手との関係性はどのような状況か。関係性の質を高めるには何が必要か。⑦コミットメント:合意した案を具体的に実行するための手順、手続きをどうするか。これら7つの要因について事前に考え、準備した上で交渉に臨むことが肝要である。


安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 常務理事

二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)

株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。 2001年株式会社トランスエージェントを設立。

2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。

「仁の循環・合一の実現」を理念に、BtoB営業・マーケティング支援事業、 交渉力・協働力向上支援事業、サステナビリティ経営支援事を展開している。


著書・翻訳

  心理戦に負けない極意    中国に入っては中国式交渉術に従え     交渉学のススメ

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