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交渉学ノススメ

vol.7 交渉を学ぶ目的【最終回】

vol.7交渉を学ぶ目的【最終回】

最終回として、交渉を学ぶ目的について改めて述べたい。
日本交渉協会では交渉の目的を「奪い合い型の交渉に勝つこと」とするのではなく、「奪い合い型から価値交換型、そして価値創造型へ交渉の次元を上げること」と設定している。

そのため交渉を自己利益の最大化(Focus:Self Ego)から自他利益の最大化(Focus:Mutual Value)。そして共通目的・目標の実現(Focus:The Greater Good)へと高めることができる交渉者の養成を使命としている。
 当協会の名誉理事長藤田忠氏の盟友で、模範的な交渉者として有名な米ハーバード大学教授のエドウィン・O・ライシャワー氏は、生涯をかけて日本と米国の関係構築に力を注いだ。当協会認定資格「交渉アナリスト」の理念となっている「イーコールパートナーシップ」ライシャワー氏の提唱した精神だ。この精神は米国と日本の関係を、支配と服従の関係から、対等で尊敬し合える関係に導こうと尽力した信念が基本になっている。

藤田名誉理事長は交渉について「ゼロサムの相互が不信の哲学に立つ時は、両者は共倒れになる。これは過当競争の結果で、破壊的競争をもたらすものだ。共倒れを避けるため、求められるのが〝燮(やわらぎ)の交渉〟だ。交渉は厳しい対立の人間関係だが、これは相手を否定する人間関係ではない。燮の交渉とは、人間的なぬくもりと柔らかさのある交渉のことを示す。タフな交渉者はこの燮の交渉ができる力を持っている」と述べている。

私たちが交渉を学ぶ目的は、現実の人間社会を直視し、厳しい対立の中でも、対話を通じて双方にとってより良い道(解決策)を見いだす力を身につけ実践することにある。 つまり交渉とは他者と信頼を築く能力のことで、厳しい対立を乗り越え他者と共に生き抜く知恵・力と言える。

ライシャワー氏は著書『地球社会の教育-世界市民意識の創造』の中で「人類は遠からず、地球規模でなければ解決できない多くの深刻な困難に直面するだろう」と予測した上で「相異なる国民や国家の間に高度の理解と大きな協調の能力がなければならない」と述べている。今後より複雑化する社会問題に対して問題解決につなげていくためにますます質の高い交渉力が求められている。是非これを機会に交渉学を学んでほしい。


安藤 雅旺 プロフィール

株式会社トランスエージェント 代表取締役
NPO法人日本交渉協会 代表理事

二松学舎大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)

株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。 2001年株式会社トランスエージェントを設立。

2006年上海に中国法人上海創志企業管理諮詢公司を設立。

「仁の循環・合一の実現」を理念に、BtoB営業・マーケティング支援事業、 交渉力・協働力向上支援事業、サステナビリティ経営支援事業を展開している。

著書・翻訳

本誌掲載の写真 ・ 記事 ・ 図版を無断で転写 ・ 複写することを禁じます。

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