営業人に求められるパーソナルスキルvol.12

既知情報から未知情報へ伝える

第12回  既知情報から未知情報へ伝える

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業行動の質を高めるためのパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

今回は、営業トークで気をつけるポイントの1つである、”既知情報から未知情報の順に伝える”ことについて紹介します。これは、相手にとっての未知情報について説明する際に、相手にとって既知情報に繋げて説明することを指します。言い換えると、例え話を使った説明方法です。

このスキルが重要な理由は2つあり、①営業パーソンは市場認知度の低い製品・サービスを販売することがあること、②市場認知度が高い製品としても、見込み客は売り手の製品・サービスについて、他社との差別化ポイントなどの詳細まで理解しているわけではないからです。

このスキルを意識せずに製品・サービスについて説明をしてしまうと、見込み客は理解ができないため、説明後に質問をしても話が噛み合わずに商談がうまく進まないということが起こります。最近、筆者もそのような失敗をしてしまいました。失敗談は後述します。

このスキルを身につけるための方法として、自社の製品・サービスを要素分解して、各要素が相手にとって未知情報だった場合の例え話を準備することが挙げられます。

次に、筆者の最近の失敗談を元に準備の仕方をご紹介します。

筆者の失敗談

売り込んだサービス:企業we chatチャットログ保存サービス、サービス名「QYCL2」

「最低限見込み客に説明すべきこと」

サービス概要:企業we chatでやり取りされた情報をクラウドサーバーに保存するサービス。

サービスのメリット:ログが保存できるため、ビジネスシーンで安全にチャットを利用できる。

サービス導入のための必須条件:このサービスを利用するためには、「企業we chat」の「顧客連絡機能」の開通が必要である。

~補足~

we chatは中国のTencent社が運営しているSNSであり、Lineと同等のサービスです。現在、中国のビジネスシーンでは、メールではなくwe chatのチャット機能を使って連絡をすることが主流となっております。チャットは利便性が高い一方で、中国進出日系企業においてはwe chatの利便性と内部統制のバランスをどう取るべきかについての問題意識があります。

筆者が失敗した原因は、多くの見込み客にとって、「企業we chat」が未知情報であった事が挙げられます。企業版のwe chatが存在していること自体を認知していなく、そのような状態で「顧客連絡機能」などの説明をされても、商談中チンプンカンプンなりアクションをされるのは当然のことでした。そのようなことから、最初に企業we chatとwe chatの違いから説明することが必要でした。

改善の方向性 各種未知情報の例え話

こういった反省から、「企業we chat」と「企業we chatチャットログサービス」の2つの未知情報に対して、次のような例え話を用意しました。

企業we chatの説明 ⇒ メールに例えると、we chatはYahoo!メールなどのフリーメールだとしたら、企業we chatは企業ドメインのメールとなります。企業we chatを導入することで、社外の関係者から、企業として公式にwe chat活用をしていると認知されることに繋がります。

企業we chatチャットログサービスについて

⇒企業のメールでは、メールサーバーにログが残せるため何かトラブルが発生した時に管理者によって調査をすることが可能です。しかしながら、これまでwe chatではそれを実現することはできませんでした。企業we chatとチャットログサービスを導入することでメールと同程度のセキュリティを担保することが可能です。

商談をしてみないと、相手がどの程度の知識量があるかはわかりません。商談の最中で、相手の製品・サービスの周辺情報量が想定外に少なかったとわかっても、急に適切な例え話を使った説明をすることはできません。そのため、商談前に上記のような準備をしておくことをお薦めいたします。

今回の内容が、製品・サービスの説明に苦手意識を持つ方にとってお役に立てたら幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入団。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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