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営業力強化 パーソナルスキル

Vol.19 聞く力について考える③ 顧客が話したいと思うような聞く姿勢を表現する

営業力強化 パーソナルスキルvol.19

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業パーソンを対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という成功法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

第17回より聞く力についてお伝えをしております。前回は、聞く力プロセスの「心から聞く」の中でも、「在り方を整える」ことについて解説をしました。

復習となりますが、筆者が考える聞く力プロセスは次の3つです。

①心から聞く

②受け止める

③質問で深める

心から聞く際に必要なことは2つあり、1つ目は「在り方を整える」こと、2つ目は「顧客が話したいと思うような聞く姿勢を表現する」ことです。

今回は、「顧客が話したいと思うような聞く姿勢を表現する」ことについて解説をします。

まず、聞く姿勢には言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションに分けられます。
顧客が話したいと思うような聞く姿勢における言語コミュニケーションは、相槌の打ち方を指します。顧客の話に合わせて的確に相槌を打つことで、顧客は話しやすくなります。相槌の方法で注意することについては様々ありますが、それについては後述します。また、非言語コミュニケーションについては、姿勢(主に座る姿勢)、頷き、アイコンタクトなどの非言語のすべての行動を指します。

それでは、具体的にどのようなことに気をつければ良いのかを考えていきます。まず、「自分がされたら嫌なことをしない」ことが大切です。筆者が考える、自分がされたら嫌なことは次の3つです。

  1. ながら聞き
    ながら聞きで最も多いのは、「PCで他の情報を見ながら話を聞く」ことかと思われます。現在のビジネス環境では、打ち合わせでPCを持ち込むということが当たり前になっています。PCを開くとメールやチャットが引っ切り無しに送られてくるので、話し手の話に集中しようとしても、通知が来るとつい目に入ってしまいます。話し手は、聞き手の微妙な目の動きにも気づくので、聞き手がメールやチャットの内容を見ていれば、話し手はそれに気づき、話す意欲が失われてしまいます。

  2. 話を最後まで聞かない
    聞き手が話し手の話を最後まで聞かずに「あ~その件ですね~」と言って、最後まで聞かずに話を遮ってしまうことがあります。聞き手からすると、話をスムーズに進めるために敢えて話を遮っていることもあるかもしれません。しかしながら、聞き手から話を最後まで聞いてもらえない体験を何度もすると、話し手はその相手に対して、今後話す意欲が無くなる可能性が高いです。

  3. 上から目線
    相槌の打ち方によって、話し手を不快に思わせることがあります。具体的には、「はい」ではなく、「うん、うん、うん」といった相槌や、「なるほど」と相槌をされると、聞き手にそのような意図はなかったとしても、話し手は「上から目線だ」という印象を持つ可能性があります。

営業人の皆様は、顧客との商談で上記のようなことをあからさまにすることは無いと思います。しかしながら、近いことをしてしまっていることは多からずあるかと思われます。筆者自身は、2.をしてしまうことが多く、いつも商談後に反省しております。

最低限自分がされたら嫌なことをしないということを守った上で、更に良くするために、「聞く姿勢を通して、顧客と関係構築(ラポール形成といいます)する」ことを目指します。ラポール形成につながる聞く姿勢として次の3つが挙げられます。

  1. 相手のペースに合わせる
    ペーシングと言われるスキルです。相手の話すスピードやテンポに合わせることで、相手とラポール形成をします。筆者は、もともと比較的話すテンポが速いので、比較的テンポが遅い人との商談では意識的に相槌のスピードを落としています。自分と同じようなペースで話す人との会話は簡単です。しかしながら、自分と違うペースで話す人との会話では、意識的に相手に合わせるということが必要です。そのため、まずは自分のペースを理解することから始めると良いでしょう。
  2. 相手の動きに合わせる
    ミラーリングと言われるスキルです。相手の動きに合わせることで、相手とラポール形成をします。具体的には、「相手が飲み物を飲んだタイミングで自分も飲む」ことや、「相手が椅子の背もたれにもたれかかったら、自分も背もたれにもたれかかる」ことが挙げられます。注意する点は2つあります。1つ目はあからさまに真似をすると、相手は警戒心を持ちますので、あくまで自然にやることが重要です。具体的には、相手の動きと同時にするのではなく、少し間を置く(感覚で10秒から20秒ほど)と良いでしょう。2つ目は全く同じ行動をすることで、失礼な対応になってしまう可能性があることです。顧客が椅子の背もたれにもたれかかった際に、営業パーソンも同じようにもたれかかるのは顧客に対して失礼になってしまいます。顧客が背もたれにもたれかかるのは、緊張状態から少しリラックスしたいという意思の現れです。そのような場合は、背筋を伸ばしていた状態から緩める(骨盤が立った状態から後ろに寝かす)といった行動を取れば、顧客に失礼がなく顧客の動きに合わせることができるでしょう。
  3. 相手の感情に合わせる
    シンパサイジングと言われるスキルです。相手の感情に合わせ、共感を示すことで相手とラポール形成をします。具体的には、相手が喜びの感情を表に出していれば、同じように嬉しそうに話を聞くということです。筆者は、感情を容易に表に出すことができるので、無意識にできます。しかし、感情を表に出すことに苦手意識をお持ちの方は、このスキルを無理に使う必要は無いと思います。なお、注意する点は、過剰な演出をしないことです。以前、筆者の研修受講生と受講後のフォローで同行営業をした際に、顧客が業務上の課題を話してくれた後に、研修受講生が「それは、相当なご苦労をされているのですね」と舞台役者がお芝居をしているかのような過剰な相槌を打っていました。何事もやりすぎてしまうと逆効果になってしまいます。シンパサイジングは非常に高度なスキルです。まずは、相手の感情を汲み取って、自分の表情を変えるということから始めると良いでしょう。

こちらで挙げた3つの聞く姿勢は、高度なスキルなため、社内の先輩や上司とのロールプレイングで練習した上で、実際の商談の場で実践されたほうがよろしいかと思われます。

今回の内容が、聞く姿勢に対して苦手意識を持っている方にお役に立てば幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入所。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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