営業力強化につながるパーソナルスキルvol.2

キーパーソン分類について

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業行動の質を高めるためのパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

今回のテーマは【キーパーソン分類について】

前回は受注見込みの付け方についてお伝えしました。今回は、受注見込みをつける上で重要な判断基準の1つである「顧客との人間関係」を構成する要素であるキーパーソン分類についてお伝えしていきます。多くの方は”キーパーソン“と聞くとおそらく顧客側の”最終決裁者”を思い浮かべるかと思われます。しかしながら、B to B営業においては、意思決定が単独で行われることは非常に少なく、多くの人が関わって意思決定をされることが多いです。その為、営業行動においては案件に関わる幅広い方々と接触し、各自の個別事情を聞き出しておく必要があります。今回は、その中でも営業活動の成否を大きく左右するキーパーソン分類に絞ってお伝えしていきます。

「ロジカル・セリング」に書かれているキーパーソン分類が整理されていてわかりやすい!

※参考図書情報:『ロジカル・セリング』 近藤 敬/斎藤 岳(著)(東洋経済新報社)
https://str.toyokeizai.net/books/9784492556788/

キーパーソン分類については東洋経済新報社から発売されている「ロジカル・セリング」内に書かれている分類方法が最もわかりやすく、実際に筆者の営業行動でも使用しております。よって今回のこのコラムではこの本に書かれていることに筆者の経験談を加える形でお伝えしていきたいと思います。
みなさんも機会があればぜひご一読いただきたいです。

意思決定に影響を与えるキーパーソンを4つに分類している。

この本では顧客の会社組織における権力の高低を横軸、発言力の高低を縦軸に取って意思決定に影響を与えるキーパーソンを4つ(意思決定キーパーソン、協力キーパーソン、情報提供キーパーソン、コメンテーター)に分類しています。ここで言う権力と発言力は下記のとおりに定義されています。

  • 権力=他人を自分の言うとおりにする力×責任(金額、法的)
  • 発言力=価値×認知

次に4つのキーパーソンについて、詳細を説明いたします。

  • 意思決定キーパーソン(権力高・発言力高)
    最終決裁ができる人を指します。一般的に経営層であることが多いですが、受注金額の大小によっては部長や課長で決裁できることもあります。意思決定キーパーソンは実務からは離れていて、現場の実態がわかっていないことから現場のキーパーソンからヒアリングをして意思決定をすることが多いです。特に協力キーパーソンからの情報を重視する傾向があります。

    ここで筆者の成功体験を紹介いたします。以前、顧客に企業内研修を提案した際に、面談していた意思決定キーパーソンから「人材育成が必要なのはわかるが、何をするのが最も効果的なのかがわからない」と言われました。そこで、筆者はその顧客の現場営業人材全員にインタビューを行い、インタビューした結果と現場の声から見える課題を基に提案したところ、受注につながったことがあります。

    意思決定キーパーソンはより良い意思決定を行うために、常に情報を必要としており、普段自身がアクセスできないような情報(現場の声や他社事例など)を提供されると喜ばれます。
  • 協力キーパーソン(権力低・発言力高)
    権力は無いが、現場で活躍しており意思決定キーパーソンから一目置かれている存在のことを指します。協力キーパーソンは現場のことをよく理解しているので、提案に必要な情報を協力キーパーソンから引き出すことが期待できます。またそれと同時に協力キーパーソンを味方につけておくことで意思決定キーパーソンに影響を与えることができます。筆者の経験上、協力キーパーソンが購買行動の初期段階で外部との面談に参加されることは少ないです。案件を進捗させ、受注確度を高めていくには、協力キーパーソンの紹介を得られるかどうかが非常に重要なポイントとなります。
  • 情報提供キーパーソン(権力低・発言力低)
    権力も発言力もなく、決まったことを現場で実行に移す役割の方を指し、対外窓口となることが多いです。
    筆者の経験上、情報提供キーパーソンと関係構築ができると、社内の状況を詳細に教えてくれるため、その情報から誰がどのキーパーソンかを判断することができます。
  • コメンテーター(権力高・発言力低)
    意思決定にあたって、Noと言えるが、Yesと言ってもその人の一言だけでは決まらないような方を指します。コメンテーター風に立ち振る舞う人が多いため、営業行動においてはその方の意見を聞きすぎないことが大切です。

    筆者の経験上、誰がこのコメンテーターに該当するかという判断とその対処は非常に難しいと感じております。特に経験が浅かったときはこのコメンテーターというキーパーソンの為に何度も提案書や資料作りに時間を費やされ、骨折り損のくたびれ儲けをしたことが多々あります。
    完璧な対処法はありませんが、筆者の経験と感覚からすると、商談で費用について質問しても明確な答えを返してくれなかったり、意味もなくはぐらかされたりする方は、コメンテーターである可能性が高いと判断し、その後の行動に注意をするようにしています。

キーパーソン分類は複数面談から始まる!たくさん会わなければ分類なんてできない!

キーパーソン分類をする為の最低条件は複数の方と面談ができているということです。まず自身が追いかけている案件で窓口の方以外の何人の方とお会いできているかを確認しましょう。もし、まだその会社の1人の方としかお会いできていないのであれば、他の方を紹介してもらいましょう。一方で、意思決定キーパーソンを押さえてさえいれば、他はどうでも良いと考えていらっしゃる方もいるでしょう。しかし、筆者の考えは、意思決定キーパーソンを押さえていたとしても安心できません。B to Bの購買活動において、買い手が意思決定した内容に対して投資対効果を出すためには、現場の納得と協力は絶対に不可欠となるため、経営トップだけでは意思決定できないことがよく散見されます。経営トップと蜜に関係構築ができていたとしても、他のキーパーソンの支持を得られない為に受注に至らないことはよく起こります。

受注確度を高めるためにも、まずは複数の方とお会いできるよう営業活動を工夫してみてください。たくさんのキーパーソンと接触することで受注確度を高めていただけたらと思います!


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入団。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


本誌掲載の写真 ・ 記事 ・ 図版を無断で転写 ・ 複写することを禁じます。

関連記事