営業人に求められるパーソナルスキルvol.3

意思決定キーパーソンを紹介してもらうためには?

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業行動の質を高めるためのパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

今回のテーマは【意思決定キーパーソンを紹介してもらう方法について】

筆者が担当した営業研修の場で参加者から、顧客側の決裁者に会うことの必要性はわかるものの、どうすれば会えるのかがわからないと質問されることがあります。 業界業種で事情が異なる為、すべての方々に当てはまる正解の方法があるわけではないですが、果たしてどんな有効な方法が考えられるのでしょうか?そこで、今回のテーマは、顧客側の担当者(以下「情報提供キーパーソン」)から決裁者(以下意思決定キーパーソン)を紹介してもらい商談機会を得る方法についてです。

情報提供キーパーソンとの商談を繰り返しても、なかなか案件化しなかったり、案件化しても進捗しなかったりすることがあると思います。それを解決する1つの方法として、情報提供キーパーソンとは別の方とお会いすることが挙げられます。
これまで商談していた方とは別の方との商談機会を得るには様々な方法がありますが、今回は情報提供キーパーソンから紹介を得るということに焦点を当てて考えていきます。

情報提供キーパーソンの個人的なニーズを知ろう!

紹介を得る際にポイントとなるのは、情報提供キーパーソンの“個人的なニーズ”を知ることが挙げられます。個人的なニーズとは、生活水準を向上させたい、周りから尊敬されたい、個人として成長したい、面倒なことは回避したいなどといった個々に持つ欲求を指します。
通常、B to Bの営業課程においては、顧客は自社の課題解決につながることを第一に考えて意思決定をされると思います。しかしながら、意思決定をするのは人間であるため、全てが理性的に決まるわけではありません。このことからB to Bの営業パーソンは顧客企業全体のニーズを知るだけでなく、情報提供キーパーソンの個人的なニーズを知り、それも考慮して行動をすることが必要となります。

それでは今回のテーマである、意思決定キーパーソンの紹介につながる情報提供キーパーソンの個人的なニーズにはどのようなものがあるかを考えていきましょう。
筆者の経験上、次に挙げる2つの個人的なニーズが考えられます。
1つ目は「面倒な仕事を増やしたくない」、2つ目は「自分や現場の声を代弁してほしい」です。

どんなビジネスパーソンも自分の仕事を増やしたくない!

皆さんは、商談でヒアリングした内容に合致した提案をしているはずなのに、顧客から「忙しくて検討できていません」と言われるばかりで、中々進捗しなかったことはありませんか?情報提供キーパーソンも様々な仕事を抱えているため仕方が無いわけですが、それで終わっていては、営業パーソンが業績を挙げることはとうていできません。

このようなことが起こる原因は種々考えられますが、情報提供キーパーソンが自分の仕事を増やしたくないという意識が働いていることがその1つとして考えられます。受けた提案内容は、自社のニーズに合致していて検討価値があるものの、検討を進めるためには自身の仕事が増えてしまいます。その仕事とは意思決定キーパーソンへの説明です。情報提供キーパーソンは意思決定キーパーソンに対して、自身が受けている提案内容を説明しなければなりませんが、受けた提案内容に対して深く理解しているわけではないので、説明することがとても面倒な仕事となってしまいます。

このような場合、つまりこのような情報提供キーパーソンの個人的なニーズに対してこそ、営業パーソンが働きかけることで、意思決定キーパーソンとの商談につなげることができるかもしれません。
筆者の経験上、このような状況においては次のような営業トークを使って意思決定キーパーソンとの商談を獲得してきました。
「大変お忙しい中、上司の方にご説明される時間を取って頂くのは難しいかと思われます。これまでの背景や弊社の提案内容について、私から〇〇さんの上司の方にご説明させていただけたらと思います。そうさせて頂くことは〇〇さんにとっても時間の節約になりお役に立てると思います。15分で結構ですので、3人でお会いするお時間を取っていただけませんか?必ずお役に立てるようにしますので!」
もし、このような営業トークで商談機会を得ることができれば、元々案件進捗しなかった理由が情報提供キーパーソンの個人的なニーズであるとわかります。また、もしこのような打診をしたとしても断られる場合は、提案内容が顧客のニーズに合致していないことなど他の理由が考えられるので、提案内容を見直すなどして別の方法を検討しましょう。

第三者の声が経営層を動かすこともある!

情報提供キーパーソンとの商談で、現場の不満などリアルな声を聞き出して、それらの不満を解決する商品またはサービスを提案したけれども、なかなか商談が進捗しなかったということはありませんか?このようなことが起こる原因の1つとして、情報提供キーパーソン自身がそれらの現場の不満を直接、意思決定パーソンに伝えづらいという意識が働いていることが考えられます。
現場の不満などを伝えるというのは、上司に対して苦言を呈するように感じるので、どんな人でも気が引けると思います。また、人というのはどんなに正論であったとしても、部下や関係が近い人から耳が痛いことを言われると相手に対して嫌悪感が生まれてしまうものです。そのようなことから、情報提供キーパーソンは代弁者となってくれる人を探していることがあります。

このような個人的なニーズに対して筆者は、次のような営業トークを使って意思決定キーパーソンとの商談を獲得してきました。
「〇〇さんが集められた現場の意見を上司の方に対して伝えづらいかと思われます。私が御社の社内事情を全く知らない体で、他社事例のように御社の状況をお伝えする事もできますがいかがでしょうか?」
筆者は前述のような営業トークで商談機会を得て、意思決定キーパーソンに対して情報提供をしたことがあります。一方でこのようなきっかけで得た商談は諸刃の剣ともいえます。商談での伝え方によっては出入り禁止になってしまうなど、逆効果になってしまうことがあるので、発言の1つ1つに対して細心の注意を払って商談に臨むことが肝要です。

他にも個人的ニーズはたくさんあると思いますし、他の全ての案件化しない、もしくは案件が進捗しないケースの原因が今回挙げたこの2つの個人的なニーズに該当するわけではないので、あくまで1つの参考として知っておいていただけたらと思います。

但し、今回ご紹介したことがうまくいく大前提は、情報提供キーパーソンと信頼関係が構築できているということです。情報提供キーパーソンから信頼されていない中で今回紹介した営業トークを駆使しても意思決定キーパーソンの紹介は絶対に得られません。信頼関係が構築されているという大前提があるからこそ今回紹介した営業トークが活きるということをご理解ください。また、営業パーソンが情報提供キーパーソンから意識決定キーパーソンの紹介を得ることで、情報提供キーパーソンには紹介責任が発生します。もし紹介頂いた商談で失敗してしまったら、それまで構築してきた情報提供キーパーソンとの信頼関係も崩れてしまいます。紹介頂いた商談は失敗しないよう入念に準備をして臨むようにしましょう。

意思決定キーパーソンとの商談機会を得ることは本当に難しいことだとは思いますが、今回の内容を参考にすることで、少しでも多くの意思決定キーパーソンとの商談機会獲得につなげていただけたら幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入団。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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