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営業力強化 パーソナルスキル

Vol.17 聞く力について考える

営業力強化 パーソナルスキルvol.17

本コラムは営業経験が2年から5年程度のB to B営業人材を対象にお送りするコラムです。時代の流れとともに営業のやり方は変わっていきますが、営業の本質である「量×質」という法則についてはいつの時代も変わりません。本コラムでは、営業力強化につながるパーソナルスキルについてお伝えしていきます。

昨今のビジネス環境では、インターネット上に情報が溢れており、購買担当者は、自社で採用予定の製品・サービスに関する情報を得ることは容易になっております。そのため、B to B営業パーソンは、自社製品・サービスの機能や功能について伝えることよりも、顧客の状況を聞き出し、それに対して最適なソリューションを提案することの方が重要視されております。

そこで必要なスキルとして“聞く力”が挙げられます。今回から、筆者の問題意識を元に数回に分けて聞く力についてお伝えしていきたいと思います。

聞く力の重要性は認識しながらも、自身の聞く力に対して課題を持っている方も多数いらっしゃいます。筆者が研修の場で、そういった方にお話を伺うと、特に質問することに対して苦手意識を持っており、その理由として、「質問することが、相手に対して失礼にならないか心配だから」とか、「質問したが期待した回答が返ってこない」「そもそも回答してもらえないことがあるから」といったことが挙げられます。

筆者は、聞く力が低い原因は大きく2つに分けられると考えています。

1つ目は自社の製品・サービスを提案するために必要な情報が整理されていないことです。聞く力の中には質問することが含まれるのですが、質問することは、疑問を持つことから始まります。疑問を持つためには、顧客を知ろうとすることが第一歩であり、商談前の事前調査が重要です。商談前に調べておくこととして、顧客の①業界動向②基本情報③経営方針が挙げられます。①の業界動向では、業績の伸長状況や、その業界に属する企業群を調べます。②の基本情報では、取扱製品・サービスや業績動向について調べます。③の経営方針については、上場企業であれば中期経営計画を見ることで、ある程度のことは知ることができます。これらの情報は、顧客のウェブサイトや業界動向について解説しているブログなどで調査することができます。

事前調査をした上で、商談で聞き出すことを整理します。具体的には自社製品・サービスに関連する顧客の状況です。筆者の場合は、B to Bの営業組織に対して、SFA導入とデジタルマーケティングの支援をしているため、初期商談では、顧客の直接顧客(製品・サービスの供給先)とエンドユーザーの状況(企業数、企業の属性)や、それに対する管理の仕方(システムを使っているのかなど)や顧客開拓方法について必ず聞くようにしています。

2つ目は聞き方がわからないことです。今回からのコラムでは、聞き方に絞って解説していきます。

筆者は、商談における聞く力については3つのプロセスがあると考えております。

それは、「心から聞く」→「受け止める」→「質問で深める」の3つです。

それぞれ重要なポイントがあります。それぞれのプロセスでの重要なポイントについては、次回以降詳しく解説します。

聞く力を身につける際に意識していただきたいことが2つあります。

1つ目は、商談で営業パーソンが顧客の状況を聞くことはアンケート調査とは全く違うということです。商談では、事前にリストアップした聞き出したいことを順番に質問すれば良いわけではないのです。アンケートは、比較的広範囲な調査対象の概況や傾向を把握することを目的とした調査方法です。それに対してB to Bの営業パーソンは、顧客の個別事情を聞き出し、最適なソリューションを提供することが求められているため、主体性を持って臨機応変に聞く内容や聞き方を変えることが必要です。

2つ目は、相手(顧客)にはそもそも答える義務がないことです。筆者の個人的見解ではありますが、質問することが苦手な人はこれが意識できていないと考えております。その理由は、研修の場で聞く力に課題を持っている方にお話を伺った際に、「自分が質問したのに相手が答えてくれないと、自分が否定されたような気持ちになる」とおっしゃる方が複数いたからです。それは、自分に意識が向いていることに起因すると考えられます。営業パーソンは、顧客へお役立ちを提供することが仕事であり、常に意識を向けるのは相手です。相手が質問に答えてくれなかったのは、自分の質問の仕方(相手が質問の意図を理解できなかった等)や、タイミングが悪かった(たまたまその日機嫌があまり良くなかった等)だけかもしれません。最初の商談のときには答えてくれなかったことも、複数回商談を重ねていくうちに教えてくれることもあります。もし、相手が質問に答えてくれなかった場合には、相手は答えない権利を持っているわけだから当たり前だと受け止めて、別の機会に聞いてみようと切り替えることも必要です。

次回以降、聞く力を向上するための具体的なテクニックについて解説させていただきます。

この内容が、聞く力に対して課題を持っている方にお役に立てば幸いです。


筧 裕介 プロフィール

トランスエージェント上海 総経理

愛知県出身 信州大学卒業

大学卒業後役者となるため劇団ひまわりに入所。
その後は舞台を中心にドラマ、レポーター、イベントMCなど多岐にわたって活動をする。

09年トランスエージェントに参画し、同年7月末に上海赴任。
10年には営業人材適性診断「王牌」や営業人材向け勉強会「王牌商道会」を立ち上げ、中国日系企業の営業人材の採用・育成のサポートを開始する。

2014年に総経理に就任し、現在は産業材市場に特化したウェブマーケティング支援及び営業組織管理支援(SFA導入)まで事業領域を拡大し、中国進出日系企業に対してB to B営業・マーケティング支援事業を展開している。


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