営業人のための表情・しぐさ分析入門―言外の想いや意図を察する技術vol.4

第4回 表情認識力を高める方法

こんにちは。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問の清水建二です。vol.1~3にわたって、科学的根拠に基づき、具体的な売買交渉における表情読みとりとそのアプローチの方向について解説してきました。頭で理解した後は、身体で覚えましょう。そこで、本日は、表情認識力を高める方法について紹介したいと思います。瞬間的な表情変化を瞬間的に見抜く方法です。

表情、殊、微表情を見抜けるようになるには、万国共通の7表情が瞬間的に次々と生じる動画を観、それがどんな表情かを当てるという専門の微表情検知トレーニングツールを活用するのが効率的な方法です。この種のトレーニングツールを用いることで、たった1時間のトレーニングで、40%の微表情検知率が80%まで向上することがわかっています。さらに、2~3週間トレーニングを何もしていなくても、この検知率の精度は維持されることがわかっています。

ただ、本連載は紙面ですので、紙面上で、あるいは/かつ、日常生活で実践できる表情認識力を高める3ステップを紹介したいと思います。

ステップ1:万国共通の7表情の特徴をきちんと理解する

最初のステップは、万国共通の7表情を、目で観て、口と顔を使って理解することです。「何となく怒っているように見える」とか、「何となく嫌がっているように見える」というレベルを超えて、「眉が中央に寄りながら引き下げられ、瞼が引き上げられ、唇に力が入れられる、だから、『怒り』」のように、人を正確に観て、表情を描写できるようになることが大切です。万国共通の7表情とその特徴を以下の表1にまとめました。表1を参考に、万国共通の7表情の特徴を、よく観て、何も見ずに口で言えるようにし、自分の顔で再現できるよう努めて下さい。

ステップ2:万国共通の7表情を部分的に観て、わかるようにする

次のステップでは、部分的な表情から7表情を推測します。全体から部分、部分から全体を行き来し、様々な条件でも7表情を読みとれるようにします。表1を使って、顔の上あるいは下を隠し、見えている部分から表情を推測する方法が簡便です。ここでは、クイズ形式を用いて楽しみながら学びたいと思います。以下の表情は、万国共通の7表情のどれでしょうか。

それでは正解発表です。①怒り、②恐怖、③幸福、④悲しみ、⑤怒り、⑥嫌悪、⑦驚き、⑧軽蔑です。表1と見比べながら、確認してみて下さい。マスク越しでも、サングラス越しでも、適切に観察すれば、思いのほか様々な表情を読みとることが出来ます。

ステップ3:TVをミュート(音無し)で観て、感情を推測する

ステップ3は、いよいよ動画を用いたトレーニングです。TV、特に、ニュース番組が適しています。TVの音を消して、キャスターの表情から次に流れてくるニュースが、良いニュースか良くないニュースか、もっと細かく分けるならば、楽しいニュースか、悲しいニュースか、怖い(懸念されるような)ニュースかなどを推測してみましょう。慣れてきたら、キャスターだけでなく、ニュースでインタビューを受けている方など様々な表情を音無しで観察してみましょう。音がない分、表情観察に集中できます。

なお、これを家でジーっとやっていると次第に飽きてきますので、1日5分10分と決めて、集中的に行う、あるいは、「ながら」トレーニングをオススメします。私は(TVモニターが備え付けの)ランニングマシンに乗りながら、「ながら」トレーニングをしています。

他にも表情識別力を高める方法は色々とありますが、まずは本日紹介した3ステップを実践してみて下さい。次第に日常・ビジネスの場で、今まで目の前を通り過ぎていた感情の多彩な彩に気づくことが出来るようになると思います。

さて、4回にわたり表情に注目してきました。表情に加え、ボディーランゲージにも視点を向けたいと思います。そこで、次回は、日常・ビジネス場面で観られる表情+ボディーランゲージを紹介したいと思います。

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

参考文献
清水建二『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社 2016年
Matsumoto, D. & Hwang, H. S. (2011). Evidence for training the ability to read microexpressions of emotion. Motivation and Emotion, 35(2), 181-191.


清水建二 プロフィール

特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
防衛省研修講師


1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「この差って何ですか?」「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社、共著に『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊がある。

【著作】
『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社
『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版
『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス
『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊(共著)


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