営業人のための表情・しぐさ分析入門―言外の想いや意図を察する技術vol.6

購入する可能性が高い状態をマニピュレーターから推測する方法

こんにちは。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問の清水建二です。vol.5では、ボディーランゲ―ジの概要を説明し、マニピュレーターの活用事例を紹介させて頂きました。マニピュレーターとは、身体の一部で他の身体の一部を触る動作のことで、感情が不安定になっているときに生じる現象でした。本日は、マニピュレーターが生じる状況に焦点を合わせます。具体的には、「あと一押しでお客さんが商品を買ってくれる可能性が高い」状態をマニピュレーターから推測する方法を紹介したいと思います。

お客さまが商品・サービスを目の前にするとき、衝動的な購入を除いて、商品・サービスを見ているだけの段階、興味を持った段階、欲しいと思っている段階、検討中の段階、購入する段階というプロセスを段階的に進みます。

ある店舗内の観察から、このプロセスとお客さまの表情・ボディーランゲージに関連があることがわかりました(弊社調査)。表1の通りです。

表1:購入プロセスと表情・ボディーランゲージの関係

表情ボディーランゲージ
購入する段階・口角が軽く引き上げられることが、ときにある・頷きの増加
・マニピュレーターは見られない
比較検討している段階・商品の凝視の増加
・熟考を表す表情の多発
・マニピュレーターの増加
・商品へ触れる
・パンフレットや説明書きを読む
欲しいと感じている段階・商品の凝視
(詳細説明などは読まない)
・商品に触れる
(説明書きやパンフレットではなく実物に触れる)
興味/関心/必要性を持った段階・スタッフへの視線
・商品への注目(凝視ではない)
・説明中の他商品への視線
存在に気づいた/見ている段階・商品を覗き込む
・商品と説明書きへの視線
・商品に近づいた後に1歩下がり他商品を見回す
※本表の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

注目したいのは、比較検討している段階です。商品同士を比べている、商品と予算を比べている、商品と必要性を比べている、こうした段階です。

商品への凝視が増え、熟考表情になります。マニピュレーターが増え、商品を触り、パンフレットや説明書きを読みます。特に、マニピュレーターは目につきやすいでしょう。顎や頬をさするマニピュレーターが典型的に生じるように思えます。

これらの表情・ボディーランゲージを観察したら、お客さまに声かけされることをオススメします。

商品・サービスの特殊性から他の段階での声かけや交渉が重要な場合はあるでしょう。しかし、往々にして比較検討している段階のお客さまの心理は、「買おうかな、どうしようかな」という状態にあります。あと一押しで、購入に傾く可能性が高い状態です。

プッシュしたい商品の特徴やお得情報をお客さまに伝えてみましょう。

お客さまの購入プロセスを表情・ボディーランゲージから適切に捉えることで、長々と商品説明をすることなく、セールスポイントを二言三言伝えるだけで、販売につながったり、お客さまの心に届く接客が出来たりするでしょう。

参考文献
清水建二『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版 2016年


清水建二 プロフィール

特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役
防衛省研修講師


1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動、犯罪捜査協力等を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組(「この差って何ですか?」「チコちゃんに叱られる」「偉人たちの健康診断」など)で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社、共著に『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊がある。

【著作】
『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社
『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版
『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス
『同頻溝通:把話說進對方的心坎裡』今周刊(共著)


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