営業人のための一問一答で学ぶ!財務知識vol.11

第11回 売上を計上するのはいつ? 契約をとったときじゃダメですか?

このコーナーでは、営業人の方にぜひ知っていただきたい会計・財務の基礎知識を、質問形式で解説します。皆さんが部下や後輩から同じような質問をされたとき、ちゃんと回答できるか、自問自答しながらお読みください。このコーナーを毎月コツコツと読み続けていただければ、気づいたときには会計・財務に強い営業人になっているはずです。

Q.「先日、取引先から100万円の販売契約をとったんです。会社に戻って、100万円の売上です、って言ったら笑われたんです。契約をとっても売上じゃないってどうしてですか?」

売上を計上するのはいつですか?と聞かれたら、「売ったとき」と答えてしまいます。では、「売ったとき」とはいつでしょうか? 次のA~Cのどのタイミングだと思いますか?

(A)契約をとったとき (B)商品を渡したとき (C)代金を回収したとき

たとえば、コンビニで買い物をするとき、客がレジに持ってきた商品を、店員さんが袋に入れ、客がそれを受け取りながら代金を支払いますから、「契約」と「商品の引き渡し」と「代金の回収」は同時です。コンビニではいつ売ったなんて考える必要はありません。
しかし、企業と企業の取引では、「契約」と「商品の引き渡し」と「代金の回収」が数か月にわたってしまうことが普通なので、どこで売上を計上するかが問題になります。
売上の計上基準は、「収益認識に関する会計基準」というものに定められていますが、要するに、「商品やサービスをお客さんに引き渡し、お客さんがOKしてくれたとき」なのです。つまり、売上のタイミングは、(B)商品を渡したとき、なのです。
ここでは、「商品を引き渡した」ときに売上を計上する理由を考えるのではなく、なぜ「契約」をとったときや「代金を回収」したときではいけないのか考えてみましょう。
もし、「契約」をとった時点で売上を計上して良いとなったら、営業社員の皆さんは、まだ企画段階の商品を取引先に売り込みに行き、数年後の完成・引き渡しの口約束をもらって、それで売上を計上して、予算を達成しようとするはずです。
また、「代金を回収」した時点で売上を計上できるとなったら、営業社員の皆さんは、来期に引き渡す予定の商品について、今月、その代金の一部を前払してくださいとお願いして、その入金を売上に計上しようとするかもしれません。
「契約」も「前払い」も、商品の引き渡しがないので、売上とは言えないのです。
ただ、「代金を回収」したときに売上を計上するとなったら、営業社員の皆さんは、商品を頑張って売るだけでなく、代金回収も頑張ってくれるでしょうから、会社の経営という意味では、その方が良いかもしれませんね。


望月 明彦 プロフィール

トランスエージェント講師
特定非営利活動法人 日本交渉協会 常務理事

■公認会計士 ・ 交渉アナリスト

≪役職等≫
・ 望月公認会計士事務所 代表 (現任)
・ 日本交渉協会 常務理事 (現任)
・ ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
・ アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
・ 日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
・ 経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)

≪略 歴≫
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。


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