Vol.15 原価と経費の違いって何ですか?どちらもお金を払うものですよね。
営業人のための一問一答で学ぶ!財務知識vol.15
第15回 原価と経費の違いって何ですか?どちらもお金を払うものですよね。
このコーナーでは、営業人の方にぜひ知っていただきたい会計・財務の基礎知識を、質問形式で解説します。皆さんが部下や後輩から同じような質問をされたとき、ちゃんと回答できるか、自問自答しながらお読みください。このコーナーを毎月コツコツと読み続けていただけば、気づいたときには会計・財務に強い営業人になっているはずです。
Q.「会社の先輩同士の会話を聞いていたら、原価と経費という言葉が出てきたんですが、どう違うんですか?どちらもお金を払うという点では同じですよね。」
確かに、原価も経費も「お金を払うもの」という点では同じであり、どちらも費用です。そこで、簡単な事例で考えてみましょう。会社の購買部が5万円で仕入れた商品を、営業社員が2万円の交通費をかけて取引先に営業に行き、10万円で販売できたとします。
このとき、この商品の「原価」はいくらですか?5万円ですね。
では、営業のためにかかった「経費」はいくらですか?交通費の2万円ですね。
このように、取引先に引き渡した商品の仕入値が原価であり、その商品を販売するためにかかった費用が経費です。
商品を仕入れて販売する卸売業や小売業であれば、商品の仕入値が原価ですが、製造業であれば、工場でその製品を製造するためにかかった費用が原価です。また、経費には、交通費のほかに、商品を販売するための広告宣伝費、営業社員や本社社員の人件費、交際接待費、会議費など様々にあります。
さてここで、原価は商品の仕入値または製造原価ですから、一般的に購買部や工場が削減努力をします。それに対して、経費はどの部署でも使いますからどの部署も削減努力をしますが、特に営業部では多額の経費を使うので、営業部が経費の削減努力をすることが多いでしょう。
よって、原価は購買部や工場の管轄、経費は営業部と本社の管轄、という見方ができます。
しかし、営業人は決して経費だけに注意していればよいわけではありません。皆さんが日々販売している商品について、お客様がもっと安くていいから機能が少ないシンプルなものが欲しいと思っていたとしたら、皆さんはそのお客様のニーズを購買部や工場に伝えて、商品のスペックや原価の見直しを提言するべきかもしれません。
営業部門の皆さんが最もお客様の近くにいて、そのニーズを知ることができるわけですから、「自分たちは経費の削減努力はするが原価は関係ない」ではなく、原価についても購買部や工場と語り合える、そんな営業人になっていただきたいものです。
望月 明彦 プロフィール
トランスエージェント講師
特定非営利活動法人 日本交渉協会 常務理事
■公認会計士 ・ 交渉アナリスト
≪役職等≫
・ 望月公認会計士事務所 代表 (現任)
・ 日本交渉協会 常務理事 (現任)
・ ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
・ アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
・ 日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
・ 経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)
≪略 歴≫
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。