営業人のための一問一答で学ぶ!財務知識vol.14

第14回 先輩が出張したことになってるけど、会社にいたはず…。カラ出張?

このコーナーでは、営業人の方にぜひ知っていただきたい会計・財務の基礎知識を、質問形式で解説します。皆さんが部下や後輩から同じような質問をされたとき、ちゃんと回答できるか、自問自答しながらお読みください。このコーナーを毎月コツコツと読み続けていただけば、気づいたときには会計・財務に強い営業人になっているはずです。

Q.「うちの課の先輩が先週、出張したことになってるんですが、確かその日は会社にいたんです。これってカラ出張ですか?何のためにカラ出張なんてするんですか?」

議員や大学教授のカラ出張のニュースを耳にしたことがある方は多いと思います。出張に行っていないのに、出張に行ったことにするのです。これは企業でもときどき起こる不正ですが、そもそもカラ出張は何のために行うのでしょうか。
通常、出張した従業員には、その出張のための交通費や宿泊代が支払われるほか、日当も支給されます。そこで、出張など行っていないのに、行ったことにして、交通費や宿泊代、日当などを不正にもらうのがカラ出張です。カラ出張で数万円のお小遣いを稼ぐわけです。
カラ出張は、ホテルなどの宿泊代を実費ではなく定額で支払う会社では起こりやすいと考えられます。ホテルの領収書がなくても宿泊代金を一定額もらうことができるためです。
カラ出張は、架空売上や循環取引のような粉飾とは異なり、会社の利益を増やすために行うものではありません。従業員個人の儲けが動機です。そのため、カラ出張によって費用が増え、むしろ会社の利益は減少します。カラ出張のやり方を組織内で教え合って、みんなでカラ出張をしているなどというケースも聞くことがあります。みんなで会社を食い物にしているということです。
しかし、このような不正は全く割に合いません。何しろ、上司や経理部が本気で調べれば比較的容易に発見されてしまいます。カラ出張が発見されれば、コンプライアンスが叫ばれる今日、数万円のカラ出張でもお咎めなしでは済まされません。会社をクビになるだけならまだしも、その後の転職も難しくなり、家族も友人もあなたから離れていきます。運よく不正がばれなかったとしても、一度、手を染めてしまった不正はなかったことにすることはできません。だから、いつ発見されるかとびくびくして過ごさなければならないのです。
新型コロナウィルス感染症の影響でオンライン営業が増えた今日、カラ出張をするような営業社員はいないと思いますが、つまらない不正で人生を棒に振るようなことだけはやめましょう。むしろ、一日も早く、従来のように日本全国を出張で飛び回り、お客様に直接会って営業できるようになることを願いましょう。


望月 明彦 プロフィール

トランスエージェント講師
特定非営利活動法人 日本交渉協会 常務理事

■公認会計士 ・ 交渉アナリスト

≪役職等≫
・ 望月公認会計士事務所 代表 (現任)
・ 日本交渉協会 常務理事 (現任)
・ ディップ株式会社監査役 (東証1部上場)(現任)
・ アイビーシー株式会社監査役(東証1部上場)(現任)
・ 日本公認会計士協会東京会 研修委員会 副委員長(2010~2014)
・ 経済産業省コンテンツファイナンス研究会 委員(2002~2003)

≪略 歴≫
早稲田大学政治経済学部卒。
監査法人トーマツを経て、慶応義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)修了。
その後、上場企業の経営企画部長として資本政策の立案・実施、合弁会社の設立、各種M&Aなどを手掛ける。
さらに、アーンストアンドヤングの日本法人にて上場企業同士の経営統合のアドバイザー等を務める。
2010年より望月公認会計士事務所代表。日本交渉協会常務理事。


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